本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(199)
- 2018年 8月 11日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
お金と信用
「お金」は「信用」を形にしたものであり、また、「信用」は、人々の「絆」から発生するが、この時に、「信用の量」が大きければ大きいほど、「お金の総量」が増えるものの、「お金の質」が劣化することも理解できる。つまり、かつては、「金貨」や「銀貨」などが「通貨」として利用されたのだが、現在では、「紙幣」のみならず、影も形も存在しない「単なる数字」までもが、立派に「通貨」として利用されているのである。
しかも、ほとんどの人は、現在、「キャッシュレス社会の到来」を信じ込んでいるようだが、この点については、昨年の「ビットコイン」を思い出す必要性があるものと考えている。つまり、「現代の通貨」は、すでに、ほとんどが「コンピューターマネー」に変化し、「過去10年間、徐々に、金融メルトダウンが進行してきた状況」だったが、昨年は「預金」の部分にまで「金融メルトダウン」が進展し、その結果として、「ビットコイン」のバブルが発生したのだった。
より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(大金融危機)」までの「約10年間」、「デリバティブの大膨張」が発生し、その結果として、世界全体に、膨大な量の「コンピューターマネー」が創造されたのである。しかし、その後の「約10年間」は、いわゆる「量的緩和(QE)」や「ビットコインのバブル」などにより、大量に創られた「コンピューターマネー」が、実質上、価値を失い始めてきたものと想定されるのである。
そして、理論上は、「コンピューターマネー」が価値を失った時に、何らかの「大事件」が発生し、「デリバティブ」も完全消滅する事態が想定されるが、実際には、「このタイミングが、今年の9月ではないか?」とも思われるのである。つまり、「時間とエネルギーの左右対称理論」により、間もなく、本格的な金融大混乱が発生する事態を想定しているが、今回の「トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争」は、典型的な「2か月ほど前に発生する予兆」だったものと感じている。
具体的には、世界的な「信用崩壊」により、「実体経済」よりも「マネー経済」が崩壊する可能性のことだが、今回形成された、「約8京円」もの「デリバティブ」については、実際のところ、きわめて巨大な「信用」が、その裏側に存在したものと想定されるのである。しかし、現在では、「信用の形成には時間がかかるが、崩壊は一瞬である」という「教訓」と、「過去の歴史」においても、「トランプ大統領」のような人物が現れ、「時代の流れ」が速まった展開を思い出さざるを得ない状況のようにも感じている。(2018.7.13)
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ミクロとマクロのプルーデンス
現在、海外では、「マクロ・プルーデンス」という言葉が頻繁に使われ始め、今回の「BISの年次総会」でも詳しく説明されていたが、残念ながら、曖昧な内容に終始したようにも感じられた次第である。また、「日銀の解説」では、「ミクロ・プルーデンス」が「個々の金融機関の健全性を確保すること」であり、また、「マクロ・プルーデンス」が「金融システム全体の安定を確保すること」となっている。
そして、「2008年前後のGFC(Great Financial Crisis)」以降、「各国の中央銀行が、積極的に、この問題を取り上げ始めた」とも説明されているが、この理由としては、やはり、「大恐慌のシナリオ」から「大インフレのシナリオ」への変化が指摘できるものと考えている。つまり、「大恐慌シナリオ」とは、「1929年の大恐慌」のように、「国家財政に問題がないものの、民間銀行が連鎖倒産した状況」を意味し、このことが、「ミクロ・プルーデンス」に関する議論を指しているのである。
また、「大インフレのシナリオ」とは、「過去100年間に、30ヶ国以上の国々が経験した国家財政の行き詰まり」、そして、この結果として発生した「ハイパーインフレ」を意味している。つまり、このことが、「マクロ・プルーデンス」という「金融システム」や「通貨制度」の健全性に関する議論のことだが、前述のとおりに、最近では、この点に関する議論や政策が増えているのである。
そのために、「なぜ、GFC以降、このような変化が発生したのか?」を考えざるを得ないが、結局は、「マネーの大膨張」と「金融のメルトダウン」の違いが指摘できるようである。つまり、「GFC」までは、「世界の金融資産が、デリバティブを中心にして急増していた状況」でありながら、その後は、「量的緩和(QE)」などにより、「コンピューターマネー」の部分で、急激な「資産価値の劣化」が始まったものと思われるのである。
別の言葉では、今後、単なる「数字」にすぎない「コンピューターマネー」が、急激に「紙幣」に転換を始める状況が想定されるが、このことは、「金融システム」や「通貨制度」が完全崩壊する可能性を意味しているのである。具体的には、「一国だけでハイパーインフレが発生した」という「過去のパターン」とは違い、今回は、「先進各国の全てで、ハイパーインフレの危機に見舞われる可能性」が存在するために、「マクロ・プルーデンス」などと言っている状況ではないようにも感じているが、実際のところは、「BIS」が、事態の重大さを認識し、責任逃れを始めた可能性が存在するようにも感じている。(2018.7.13)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion7900:180811〕
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