暑くて~死にそうだ
- 2018年 8月 21日
- 評論・紹介・意見
- 原爆小原 紘死刑沖縄
韓国通信NO567
二週間ほど原因不明の高熱に苦しんだ。何もしたくない、何も考えたくない。まるで生きる屍みたいにブラブラと暑い日を過ごした。血液検査で白血球の異常な数値が確認されたが、病院が夏休みに入り、そのまま体温計と「ニラメッコ」する毎日を過ごした。幸い二日前から平熱に戻ったが、これも原因不明のままだ。
熱が上がりそうなニュースばかりでイライラが続いた。オウム事件の死刑囚13人全員の死刑執行を聞いて全身から力が抜けていくような虚脱感にとらわれた。犯罪は許しがたいが、国による報復、死刑執行に対する息苦しさと恐怖。死刑執行前夜の首相や法務大臣たちの酒宴は悪魔たちの「祝杯」だった。大逆事件(1911年 幸徳秋水ら12名が処刑された冤罪事件)が思いだされる。わが国は再び「恐怖政治」に突入したのか。死刑執行の政治性、非情な国家の残虐性に身震いした。
<世界の大勢は死刑廃止>
世界の趨勢は死刑制度廃止に向かっている。死刑について私たちは他人事(ひとごと)、情緒的に考えてきたようだ。わが国は国連から再三にわたって「死刑執行の停止と廃止」を求められてきたが、政府は「世論」を理由に死刑制度を存続させてきた。国民の「せい」にする政府も情けないが、政府の死刑制度存続を支えてきたのは私たちだという一面は否めない。
世界198ヵ国のうち全面廃止国106ヵ国。事実上廃止をしている国 (韓国は死刑制度があるが執行をしていない) を含めると142ヵ国が事実上死刑を廃止している。さらに先進国OECD加盟国36ヵ国では日本とアメリカを除く34か国が死刑を廃止している(但しアメリカの19州が廃止、4州が執行停止)。わが国の「独自性」は、人権問題で非難の対象としてきた中国・北朝鮮「並み」ということになる。今回の死刑によって事件を闇に封じ込めたという指摘も多いが、死刑制度そのものについてもはや本質的な議論が避けられなくなっている。
<首相にふさわしい人>
安倍の総裁三選が、既定の事実のように連日報じられた。熱がいっこうに下がらないはずだ。自民党内の「安倍人気」と国民の意識のズレは、低い内閣支持率を見ても明らかだ。自民党の「おごり」と人材不足もここまできたのか。私たちと無関係に進められる総裁選びを見ていると、心底「民主主義って何だ!」「これが日本の民主主義なのか!」と叫びたくもなる。
指をくわえて見ている「あほらしさ」。この際、自民党内の総裁選びとは別に、一国のリーダーにどのような人物がふさわしいのか、国民的な議論を巻き起こす必要がある。「安倍か石破か」という議論よりよっぽど日本の将来のためになる議論のはずだ。それをマスコミに期待したいところだが、まず市民たちで議論を始めるしかない。
こんな人が首相になればいいなと夢想したひとたちがいる。残念ながら立憲民主党の枝野代表も日本共産党の志位委員長も浮かばなかった。
その中のひとりは沖縄県の翁長知事だった。本当に残念なことに急逝してしまった。沖縄県自民党幹事長だった翁長氏の知事就任後の活躍と発言は私に感動を与え続けた。これまで政治家に感じたことがない発言の重さと行動力に心から敬意を抱き続けてきた。
県民の願いを実現しようと奮闘し、沖縄に対する差別に異議を唱え、中央政府と鋭く対峙した。注目すべきは、辺野古新基地反対という地域問題から始まり、国民(県民)を無視した上から目線の民主主義と、平和を脅かす政府の安全保障政策に警鐘を鳴らし続けてきたことだ。終生、親米姿勢に変りはなかったが、対米従属姿勢を続ける売国的な安倍政権とは違う「愛国者」であり続けた。アメリカ政府の「良心」に期待をつなぎながらも県民の辺野古基地反対運動の先頭に立ち続けた。物流、観光、文化を中心とする脱基地沖縄の未来図(青写真)を提示し、反基地運動を越えてアジアの中で注目された平和主義者でもあった。米朝首脳会談後も「制裁」を主張し迷走を続ける安倍首相と比較しながら、世界のマスコミは早すぎた突然の死を惜しんだ。
非核・平和を訴えた田上長崎市長も光った。診察を終えて待合室のテレビが目に入った。浮かない顔の安倍首相に続き平和宣言をする田上市長に釘付けになった。
アメリカの核抑止力に依存して、世界の核廃絶に躊躇する日本政府に対する厳しい抗議。静かな口調のうちに心を込めて非核化の努力を政府に求め、不戦を誓った平和憲法の精神を引き継ぐことを訴えた。核兵器禁止条約に参加しない釈明に終始した安倍首相とは対照的に、市長は長崎市民の核廃絶への思いと活動を紹介して、次の世代に「平和の文化を残そう」と結んだ。
ここでも明らかだろう。欺瞞に満ち溢れた安倍首相にもはや日本の未来を託せない。翁長氏と田上氏に共通する平和への強い意志と人間に対する信頼と愛はみじんも感じられない。
元日本遺族会会長、自民党の幹事長を務めた古賀誠氏が自分の戦争体験から憲法9条は宝だ、それを投げ捨てようとする自民党議員たちの「劣化」を語ったのも印象に深い。自民党の「ドン」といわれ、私には得体の知れない人物だった古賀氏の発言にも感動した。
「真夏の夜の夢」のような取りとめのない話になってしまった。悪夢を見ているような安倍政権がこれからも続くと聞かされては本当にたまったものではない。
<これは必見。NHKガンバル>
千葉県館山にある「かにた婦人の村」を作家の小林エリカさんが訪れ、天羽道子さん(91)にインタビューした。婦人施設の入居者に従軍慰安婦だった日本人女性がいたことがきっかけで「従軍慰安婦鎮魂碑」があることで知られる。女性であるが故に蹂躙された被害に日本人も韓国人も変りはないが、加害国である日本が事実を認めなければ悲劇は繰り返されると天羽さんが積年の胸の内を語った。10億円を出してすべて「解決済み」と思いがちな私たちに真の反省とは何かをあらためて感じさせる。
8月22日(水)NHK Eテレ「ハートネットテレビ」13時5分から再放送される。安倍首相周辺や右翼による妨害が予想される。NHKの良心と抵抗を感じさせるドキュメンタリーだ。
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