本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(200)
- 2018年 8月 21日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
過去と未来
「過去は見えるが、未来は見えない」、また、「過去の出来事は、全てが理論的に説明可能である」という理解のもとに、今まで、40年以上も金融界に従事してきたが、現在では、この考えに対して、より一層、確信を抱きながら、同時に、新たな反省をしている状況でもある。つまり、「過去の出来事」を分析する場合に、どうしても、既存の理論や常識に捉われがちになる傾向があり、具体的には、「過去のリフレーション政策が、ほとんどの場合、2年程度で終了した」という理解などのことである。
より具体的には、「過去のハイパーインフレ」を研究した時に、ほとんど同じパターンが繰り返されていたために、私自身としては、今回も、同様の展開を想定していたが、実際には、想像を超えた力が働いていたことが理解できるのである。つまり、「過去のハイパーインフレ」については、「一国だけで発生した現象」であり、今回のように「世界全体が、金融危機に陥っている状況」は、人類史上、初めての出来事だったからである。
別の言葉では、「先進各国が協調して、世界の金融市場を操作した事態」というのは、過去の歴史で経験したことがなかったが、今回は、ご存知のとおりに、「金利」のみならず、「為替」や「株価」なども、「先進各国の中央銀行」により、価格が大きな影響を受けているのである。そして、このような行為が可能になった理由としては、「コンピューターマネー」の大膨張が指摘できるが、実際には、現代の通貨が、影も形も存在しない「単なる数字」に変化してしまった状況のことである。
つまり、「コンピューターネットワーク」の中で、「仮想現実」の世界が繰り広げられていたような状況だったが、この点については、「2008年前後のGFC(金融大危機)」に「デリバティブ」と「大量のコンピューターマネー」が残高のピークを付けたことが理解できる。そして、その後の「量的緩和(QE)」で実質上の影響力を失ってきており、今後は、「コンピューターマネー」が「紙幣」に交換される事態も想定されるのである。
また、この点については、「未来は、過去の蓄積により決定される」という展開を想定しているが、実際のところ、過去数十年間の「マネーの大膨張」については、私の常識を、はるかに超える規模だった。その結果として、「インフレの発生」に関して「時間的な遅れ」が生じたものと考えているが、今後は、反対に、私自身が、世の中の展開に追いつかない事態も想定しており、実際には、「国債価格の暴落」が発生した後に、誰もが想像できないほどの大混乱が発生する可能性があるものと考えている。(2018.7.23)
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オウム真理教事件の再考
「7月6日」と「7月26日」に、「オウム真理教事件」の被告13人全員に対して「死刑」が執行されたが、気が付くと、「1995年3月」に発生した「地下鉄サリン事件」から、すでに「23年」も時間が経過していた。当時、私は、この事件に、大きな衝撃を受け、さまざまな書物を読み漁ったが、現在では、すでに、ほぼ四半世紀もの時間が経過し、世界情勢も様変わりの状態となっている。
そのために、今回、改めて、「オウム真理教事件には、どのような意味が存在していたのか?」を考えてみたが、当時、悩まされたことは、「なぜ、優秀な若者たちが、あのような悲惨な事件を起こしたのか?」、あるいは、「なぜ、麻原彰晃という人物の命令に、盲目的に従わざるを得なかったのか?」ということでもあった。別の言葉では、この事件に衝撃を受けたことにより、「人々は、何を求め、どのように行動するのか?」について、根本から考え直し始めたのだが、実際には、やはり、「志」や「心指し」が、大きな要因だったものと感じている。
より具体的には、「人々の想いが、その時代の社会を決定する」ということが、歴史を研究するうえで、最も重要な要素だと考えているが、当初、「オウム真理教」に入信した若者たちは、「真剣に修行し、より高い精神的な境地に達すること」を望んでいたようにも思われたのである。つまり、「西洋的な価値観から、東洋的な価値観への移行」を象徴するような行動のようにも感じられたが、実際には、世界中を震撼させるような大事件を引き起こす結果となったのである。
また、この間の推移、すなわち、「過去23年間に、どのような変化が、世界的に発生したのか?」を考えると、実際には、「マネーの大膨張」と「通貨の堕落」が、世界的に進展していたことも理解できるのである。つまり、「マネーの大膨張」が「自然破壊」を引き起こした結果として、未曽有の規模での「異常気象」が起きているようにも感じているが、この点については、「天地自然の理」を無視し、「利益」や「人知」だけが重要視されたことが根本的な原因だったようにも感じている。
このように、「オウム真理教に入信した若者達」は、健全な「動機」を持ちながらも、きわめて危険な「方法論」や「指導者」に遭遇したようだ。つまり、現在の政治家と同様に、「国民のことを考えず、あらゆる手段を行使している状況」のようにも思われるが、今後、どのような結果が待っているのかが、気に掛かる段階に入ったようである。(2018.7.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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