本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(204)
- 2018年 10月 1日
- 評論・紹介・意見
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パウエル議長の講演
8月24日、米国のジャクソンホールで、「パウエルFRB議長」の演説が行われたが、内容的には、「竜頭蛇尾」の状況だったものと感じている。つまり、弁護士出身のためか、文章構成には驚かされたものの、内容的には、ほとんど見るものがなかったようにも思われるのである。別の言葉では、「金融政策の行き詰まり状態」を隠すために、あえて、「自然利子率」などの「古典的な経済用語」を多用したようにも感じられたが、「物言えば唇寒し秋の風」という言葉のとおりに、「厳しく辛い状況を、言葉で隠すことは難しかったのではないか?」とも思われた次第である。
また、今回、気付かされたことは「過去30年間の変化」だったが、実際には、私自身が、「1987年のブラックマンデー以降、真剣に、FRB議長のコメントを読み続けてきた」という状況でありながら、「今まで、重大な事実を見逃してきた可能性」である。具体的には、「10年毎に発生してきたバブル」に関する「規模と内容の違い」のことだが、実際には、「1999年」の「ITバブル」、そして、その後も大膨張した「デリバティブのバブル」が「それまでのバブルとは、大きな違いが存在した可能性」である。
具体的には、「1979年の金バブル」、そして、「1989年の株式と土地のバブル」については、基本的に、「実体経済」に関する商品のバブルであり、また、「ピーク時の時価総額」が、数百兆円、あるいは、数千兆円という金額でもあった。しかし、一方で、「1999年のバブル」については、「マネー経済」に関するバブルであり、実際には、「デリバティブ」を中心にした金融商品が、「IT技術の恩恵」を受けて、「数京円」という規模にまで大膨張したのである。
しかも、それまでのバブルとは違い、「2008年前後まで、デリバティブが大膨張を続けた」という状況であり、結局は、このことが、さまざまな「時間的、かつ、価格的な歪み」を引き起こしたようにも感じられるのである。具体的には、「2009年に、なぜ、金のバブルが発生しなかったのか?」、また、「なぜ、史上初めて、2016年前後にマイナス金利が実現したのか?」ということも説明可能な状況とも思われるのである。
具体的には、「政府や中央銀行による価格統制」であり、この点については、「第二次世界大戦」の末期に実施された「価格統制」と似たような状況でもあったようだ。しかし、今回は、「規模が大きかった分だけ、問題の発覚が遅れ、その結果として、その後の反動が、同様に大きくなる状況」も想定されるのである。(2018.9.3)
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金融界におけるホーキング放射
現在、「新興国における通貨安の伝染」が問題となっているが、私自身は、この点について、「金融界におけるホーキング放射」が始まった可能性を憂慮している。つまり、過去数十年間に大膨張した「デリバティブ」や「コンピューターマネー」に関して、「ブラックホールのような状況が発生している可能性」のことだが、この点については、詳しい説明が必要だと感じている。
具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、「世界のマネーが、価値と形態で激変した状況」のことだが、実際には、ほとんどの部分が、それまでの、「金(ゴールド)」や「紙幣」などの実物商品から、「コンピューターマネー」や「デジタルマネー」などと呼ばれる「影も形も存在しない、単なる数字」へと変化してしまったのである。別の言葉では、「コンピューターネットワーク」という「仮想現実」の世界で、「人々の欲望が、大量のマネーを生み出した状況」でもあるが、問題は、「コンピューターマネーが、金利を低下させただけではなく、人々の意識までをも変化させた状況」でもあった。
つまり、「お金が神様となった時代」のことだが、「金融界のブラックホール」とも言える「デリバティブ」については、「2008年前後のGFC(大金融危機)」で、残高がピークを付け、その後は、「金融のメルトダウン」により、「国債」や「ビットコイン」のバブルを発生させながら、徐々に、「縮小」、あるいは,「消滅」という運命をたどっているものと考えている。
しかし、問題は、「金融メルトダウン」が「紙幣」の部分にまで達した時に、前述の「ホーキング放射」を始める可能性だが、このことは、「デリバティブのバブル」が崩壊した時に予想される「約8000兆円の不良債権」に関して、「大量の紙幣増刷で埋め合わせをする可能性」である。別の言葉では、「世界の金融界において、弱い国々から、信用崩壊が発生する可能性」のことだが、現在では、すでに、「ベネズエラ」や「アルゼンチン」などで、私が危惧する事態が発生しているのである。
そのために、今後は、この動きが、より一層、加速する状況を予想しているが、問題は、「日米欧の先進国」にまで、通貨安、あるいは、通貨不安が伝染した時であり、実際には、「預金や国債が信用できなくなり、株式や貴金属などへ資金が移動する状況」も想定されるのである。つまり、古典的な「インフレ」が発生する事態のことだが、「お金が神様となった人々」には、本当の怖さが理解できない可能性が存在するようにも感じている。(2018.9.3)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion8041:181001〕
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