2018年、「ゴーン、ゴーン」「ヘイカ、ヘイカ」で暮れるのか
- 2018年 12月 26日
- 時代をみる
- 内野光子
12月23日は、天皇誕生日ということで、皇居には、8万人以上の人たちが「参賀」に訪れたという。そして、あの「お出まし」に振られている「日の丸」の小旗は、なに?という光景が繰り広げられている。現天皇の即位以降に生れた若者たちも多かったとの報道もあった。これが、国民主権をカナメとする日本国憲法を持つ国の出来事なのか、「明治かよォ」という「化石」のようなツッコミもしたくなる。
新聞やテレビでは「平成三〇年回顧」にとどまらず、生誕以降の、天皇85年を振り返る企画も多い。当然、太平洋戦争をはさむ構成にはなるのだが、「8月15日」の皇居前広場で土下座する人たちの映像に「耐えがたきに耐え」の玉音放送をかぶせる手法は、相も変わらず、23日のNHK「天皇 運命の物語①」でも流された。あの8月15日の写真や映像は、「8月14日」のメデイアの「やらせ」ではないかとされているのにもかかわらずである。そして、「国民に寄り添い」「平和を願って」きた平成の天皇夫妻の戦争犠牲者慰霊と被災地慰問の映像ばかりが流される。1948年12月23日は、東京裁判におけるA級戦犯7人が処刑された日でもある。昭和天皇の戦争責任論、退位論がふつうにメディアで展開された敗戦直後の緊張感を忘れてはならないはずである。
誕生日に先立っての天皇の記者会見の「戦争のなかった時代に心から安堵」という言葉への違和感を拭いきれないでいる。多くの災害、公害、事故、虐待、過労による犠牲者、自死などによる遺族はどう受け止めただろうか。東日本大震災の原発事故について、「原発事故による死者は一人もいない」と言った閣僚がいたのを思い出すのだった。
日産の前会長ゴーンの保釈予想が一転して、再逮捕されたのを受けて「ゴーン、ゴーン」と関係ニュースが騒々しい。これって、内部告発に端を発したというが、最初の逮捕直後の西川社長の会見の時、これほどの桁違いの金銭の移動があったというのに、取締役会が関与してなかったのかという疑問が頭をかすめた。後からの報道によれば、西川社長もサインしている支出であったとか、取締役会ではゴーンの名を伏せての投資決議だったとかの情報も確認されたということだった。まさに、素人の感、庶民の感ながら、なのである。
そして思うのは、ゴーンをかばう意図はないが、日産の日本人経営者がやりたくてもできなかった、工場の撤退や2万人余の従業員馘首をゴーンの手で行わせ、再建ができたら追い出すという構図は、今年強行採決して成立した働き方改革関連法、出入国管理法改正にも共通するところがあるのではないかと思ったのである。「深刻な人手不足」の対応と言いながら、日本人労働者の働き方の多様化の名のもとに「都合のよく」変え、結局は、外国人に安い労働力できつい仕事を担ってもらおうという、経営者や政府の発想でしかないように思う。
消費税増税対策って、なんのための増税か、単なるバラマキではないのか。「防衛大綱」に基づく防衛費の拡大、イージス・アショア2基、F35の105機購入だけでも、それぞれ6000億、1兆5000億に迫るともいわれている、アメリカの「言い値」での購入とはあきれるばかりである。一方で、沖縄県の民意に反しての米軍基地辺野古新設の強行、外交においても、対米・対ロでは押される一方で、中国・韓国に対しては、こじらせる一方なのだ。社会福祉予算の削減―生活保護費の段階的引き下げ、年金の抑制、診療報酬の減額、70~74歳の医療費1割から2割負担などすでに高齢者の負担が拡散し、消費抑制、受診抑制で、命まで危険にさらされている。若年者にとっても、国の借金は増大し、将来へのツケも拡大するばかりなのだ。経済再生の目玉ともいわれた、東芝を初めとする原発輸出の破たん、一方で、かつてほど「世界一厳しい基準」というセリフも言い出せないまま推進する国内原発の再稼働・・・、いくつもの重要課題が国民に上にのしかかっている2018年、「ゴーン」と「ヘイカ」で終わらせてはならない。迎える2019年も、消費増税対策、天皇代替わり、2020オリンピックのフィーバーの目くらましに、だまされてはイケない。政府による、ヤルヤル詐欺、大掛かりな特殊詐欺に、だまされてはイケない!
初出:「内野光子のブログ」2018.12.25より許可を得て掲載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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