由里ママと愛猫・とらのお正月(288字)
- 2019年 1月 2日
- 交流の広場
- 熊王信之
我が家の愛猫・とらは、和猫、と呼ばれる日本の猫でした。 動物保護活動家から忌避されるペットショップで売られている「純血種」ではありませんでした。 保護活動をしている者であるならばペットショップで猫を買ったりはしませんので、どうしても愛猫は、和猫になります。
従って、とらは、牛肉等は好まず、魚が大好きでした。 本当に大好きで、猫缶の中でも特定の銘柄のものが好きでしたし、自然食の猫缶を好んで食べました。 加えて、生魚をスーパーで買って、煮てから骨を慎重に抜き、与えると、とても喜んでくれたのでした。
普段は、定評のあるメーカーの猫用ドライのフードが中心ですが、夕食用には猫缶を中心に出して、不定期ですが、生魚を煮たものを出していたのです。 クリスマスや、お正月等には、忘れずに、でした。
たまには、飼い主が食べる刺身も出しましたが、これには驚くように飛びついて食べましたので、飼い主は家の中ではあまり食べませんでした。 魚が大好きな猫のとらを差し置いて、飼い主が食べると何か後ろめたく思えたのでした。
二年前の亡くなる前の日に一口で良いので新鮮な魚を食べさせてやりたかった、と今頃になって後悔しています。
ともあれ、由里の愛猫・とらへの思いやりは、本物のようです。 由里ママと愛猫・とらのお正月(288字)です。
「さ~、とら、出来たよ~。」と何やらレンジで鍋に入れて煮ていた由里が、愛猫・とらを振り返り呼びかけると、とらは待ち切れない様子でウロウロ。
由里は、調理台で煮たばかりの白身魚の切り身の骨を抜き、小皿に盛ってテーブルへ。
「未だ熱いよ~。 もう少し待とうね。 もう一度骨が残ってないか見るね~。 」と椅子に座り、足許に来たとらを抱き上げる。
「もう良いかな~。 とら用のお魚。 ママの手作りだよ~。」と猫の耳元で囁く。 とらは待ち切れない様子で脚をバタつかせる。
「とら、明けましておめでとう。 ママになって初めてのお正月だよ~。」
「にゃ~。」
由里と愛猫・とらの温かいお正月。 窓の外は、新年早々の雪。
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