不信時代の選挙
- 2019年 1月 11日
- 評論・紹介・意見
- 小原 紘選挙
韓国通信NO586
政治に対する信頼は地に墜ちた。それを伝えないマスコミへの不信感は増すばかり。2019年、憲法改悪のたくらみを粉砕するチャンス到来の年なのに一向に盛り上がらないのが気になる。突破口は自分たちで見つける他ない。
今月の20日、我孫子市長選挙が行われる。
立候補予定者の飯塚まことさんを激励する集会に出かけた(5日)。
告示日前にもかかわらず、会場に140人ほどの市民が集まった。
飯塚さんと「新しい市長をつくる会」は選挙公約に―
①全国でトップレベルの自然エネルギー推進都市にする②子育てしやすい都市にする③生涯、安心して自分らしく暮らせる都市にする④新しい発想で都市整備をすすめる⑤市の借金を増やさず子どもにツケをまわさない⑥公正で透明な入札と契約をすすめる⑦市職員の力量を高めるため、民間との交流をすすめる
を掲げた。
<地方が変われば 国も変わる>
我孫子住民でない人にとって人口13万人あまりの地方小都市の市長選挙に興味はわかないかも知れない。今まで選挙の集会に参加したことがない私が、のこのこと出かけたのには理由がある。
社会を覆う閉塞状況を変えるために、まず住んでいる町が変わる大切さを痛感するようになったからだ。今頃気づくようでは「遅い」と笑われそうだ。
公約づくりの議論に参加した者として注目して欲しいのは、何といっても「自然エネルギー推進都市」を真っ先に掲げたことだ。
福島原発事故から8年目を迎える今年、「脱原発」を真っ先に据えたのは、原発事故を風化させる風潮に果敢に挑戦するものだ。かつて東海村村長選挙、南相馬市長選挙では脱原発を掲げた現職が落選の苦渋を飲まされたことを考えると、この公約はかえって先進的で画期的でもある。勇気あるこの政策を何とかして実現させたい。私を含め集会に参加した人たちの共通の思いである。
安倍政権のもとでは弱者切り捨て、福祉を削って軍事を優先させる政策が急ピッチに進められている。②以降の公約からみて政府が進めている方向とは逆の「市民生活重視」の姿勢は明らかだろう。理想論ではない、実行可能なことばかりだ。
市民たちの期待を背負った市長選。候補者は立憲民主党から無所属として出馬。市民団体が擁立、自民・公明を除いた野党系市議会議員が挙(こぞ)って推薦する構図である。
無風で四選を決め込んでいたと思われる市長は危機感を募らせ、暮れの24日に駅頭に立ち、「我孫子駅構内のエレベーター設置の目途かついた。もう一期やらせて欲しい」と訴えた。12年間市長をやって、エレベーター設置の目途がついたと報告する市長は間違いなく「賞味期限切れ」である。
一地方都市の市長選挙だが、この選挙で新人候補が勝てばその影響は計り知れない。統一地方選挙や参院選挙でも、市民が中心となり、野党が結集するという「我孫子モデル」が先行例として全国的に広がっていくならこれほど素晴らしいことはない。
地方から始まり、国政を変えるイメージは60年代中盤から始まった革新自治体の相次ぐ誕生を思いださせるが、それは60年安保の余波と深刻化した公害問題に対する地方の「反乱」だった。今年の統一地方選挙と参院選は、国政が生んだ未曽有の生活全般に対する不安に、一人ひとりがどう立ち向かっていくかが問われる、かつてなく大事な選挙だ。
<選挙に行こう !>
選挙に期待が持てないという理由で棄権する人たちが多い。前回の我孫子市長選の投票率は32%。一昨年の衆院選は全国で53.7%(小選挙区)だった。理由がどうであれ、民主政治は崩壊寸前としか言いようがない。投票しなければ不満を語る資格はない。「死に票」の多い小選挙区制のせ選挙いにして選挙に行かない人もいるが、投票で制度を変えることだってできる。昨年のアメリカ中間選挙で若者たちがトランプに「ノー」を突きつけたことを思いだす。同じく昨年行われた韓国の地方選挙では元朴槿恵政権側の候補者が壊滅的な敗北を喫した。
市長選を前に、今話題の桜田義孝五輪担当大臣から市民は大きな教訓を得た。彼が地元選出議員と知らなかった人がいるくらい、有権者のたった4分1の得票で小選挙区を制した。巷では「恥ずかしい」「みっともない」の声がしきりだが、責められるべきは彼本人、投票した人でもない。投票に行かなかった人の責任だ。白けて選挙に行かない弊害が見事に実証された。口当たりのいい公約に騙されないのは、テレビ・新聞のウソを見抜くことと同じくらい難しいが、知恵を絞って、とにかく騙されないことだ。桜田議員の看板が市内に貼りめぐらされている。満面の笑顔とともに、皮肉にも「教育立国」が彼の一枚看板である。
暮れの24日、クリスマスイブの我孫子駅前にサンタ姿で「選挙に行こう」「社会を変えよう」のプラカードを掲げた。
何の選挙かとたずねる人に、前回32%だった市長選挙と桜田議員の話をするとまずまずの反応。しばらくすると私の横で市長が街頭演説を始めた。
選挙で我孫子市長を変えようとアピール活動をしていたサンタは当惑した。
<みなさんはどう考えますか 東京オリンピック>
最近のテレビはオリンピックの話題が多すぎると思いませんか。知りたいニュースは山ほどあるのに…。特に責任逃れをして平然としている首相の笑顔に屈辱感すら覚える毎日です。原発事故を無かったことにして日本中を「お祭り」騒ぎにするのがオリンピック誘致の目的でした。アスリートたちの頑張りには感動しますが、彼らが政治的に利用されそうで気の毒、とても残念です。
住宅補助を打ち切られ、途方に暮れる福島の被災者、貧困に苦しむ日本中の多くの人たち、沖縄県民を無視した辺野古基地建設、戦争や飢餓に苦しむ世界中の人たちを放置して、トランプ米大統領を真似た日本の「自国ファースト」の行く末も心配です。オリンピックが近づいたら田舎に疎開しようかなどとも考えますが、何も解決になりません。オリンピックは「やめたほうがいい」が持論ですが、ひょっとして想像を絶する事件が起きて「中止」になるのではないかと思ったりもします。ご意見をお聞かせください。
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