米国、すべてのパレスチナ支援を停止 - トランプ政権、中東和平への責任を放棄 -
- 2019年 2月 8日
- 評論・紹介・意見
- トランプパレスチナ中東坂井定雄
トランプ米政権は2月1日までに、パレスチナ自治政府の治安部隊への資金支援(年額4,600万ドル強)を全額停止した。米国政府は、国際社会のパレスチナ支援の主柱である国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA、1950年発足)に対し、年間予算の半額に近い3億6千万ドルを拠出してきたが、昨年から拠出を全額停止しており、これで、米国のパレスチナ支援金拠出は、ゼロとなった。
米国がUNRWAに巨額の資金拠出を続けてきたのは、第2次大戦の終戦処理、戦後の国際社会の建設のために、英国が委任統治を放棄したパレスチナをアラブ国家とユダヤ国家に分割する国連総会「パレスチナ分割決議」を1947年11月29日、米国主導で国連総会が決定したことによる。
この決議に基づき、48年5月14日、イスラエルが建国宣言したが、翌5月15日、ユダヤ国家に大きく有利だった分割決議に反対したアラブ諸国軍がイスラエル側に攻撃開始、第1次中東戦争となった。戦争は49年7月までに個別の休戦協定が結ばれ、イスラエルは、分割決議では国際管理都市とされたエルサレムの西半分も占領。
イスラエル占領地域から、約60万人のパレスチナ人住民が難民となってヨルダン領などに流出。イスラエル支配地にこれら難民を返さないために避難国に難民キャンプを作るなどの対策として,50年にUNRWAを米国主導で設立した。その後、1967年の第3次中東戦争でイスラエルがパレスチナ全土を占領。国際社会は占領を認めず、あくまで47年の国連総会「パレスチナ分割決議」を堅持したが、イスラエル占領地の住民とヨルダンはじめ周辺アラブ諸国に逃れたパレスチナ人たちが難民化。最低生活支援、子供たちの教育、医療などUNRWAの支援を受けているパレスチナ人は現在、534万人に増えている。
一方、1日までに、米国が支援全面停止を決定した治安部隊への資金援助は、1993年、
故アラファト・パレスチナ解放機構(PLO)議長と、のちに右翼青年に暗殺されたラビン・イスラエル首相が、ノルウエーの仲介による秘密交渉で合意、同年9月13日にワシントンで調印した「パレスチナ暫定自治宣言」に基づいて、パレスチナ暫定自治区での治安を維持するためのパレスチナ治安部隊への活動資金援助。パレスチナ暫定自治区内では、ガザではイスラム過激派ハマスの影響力が依然強く、ヨルダン川西岸地区では、イスラエルの入植地拡大と分離壁の建設が進んで住民の反感がさらに強まっている。両方を支配するイスラエル軍と住民の衝突を防ぎ最低の安寧な生活を維持するために、パレスチナ治安部隊の重要性は増している。
そのパレスチナ治安部隊への支援までトランプが全面停止したことに対しては、イスラエル政府内部でも疑問視する声が上がっていると、英BBCは伝えている。(了)
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