イラン攻撃をしたいトランプ - 空母、B52、地上兵力5千人の臨戦態勢 -
- 2019年 5月 13日
- 評論・紹介・意見
- イラントランプ坂井定雄
トランプ大統領の密命によって5月上旬、初期的な米軍のイラン攻撃態勢ができあがった。B52戦略爆撃機部隊(機数不明)がペルシャ湾のカタールにも移駐、地中海から空母エイブラハム・リンカーン以下の空母打撃軍がスエズ運河を通ってペルシャ湾近海に移動、トランプの懐刀のポンぺオ国務長官が他国訪問の予定を急遽変更してイラクの首都バグダッドを電撃訪問した。イラクには、米軍5千人が駐留している。ポンぺオ長官はバグダッドで「イランによる差し迫った(米軍)攻撃の情報がある」と急なイラン訪問の意図を説明したと報道されたが、イランが在イラク米軍を攻撃する意図などあるはずがない。在イラク米軍を対イラン攻撃の一翼を担わせる計画を協議したに違いない。
米軍のイラン攻撃態勢を脅しだけだと軽視することはできない。
今すぐにでも、イランを挑発するために、停止中あるいは厳しく制限された核燃料施設や研究施設を爆撃するかもしれない。一方イラン側もロウハニ大統領が8日、昨年5月に米国が核合意から離脱したことへの報復措置として、核合意の履行の一部を即時停止すると宣言した。他の加盟国はイランに合意履行を継続するよう強く働きかけており、実際にイランが報復措置を実行するかどうかは予測できないが、トランプ政権のイラン攻撃実施に口実をあたえる。
トランプ大統領の対イラン政策は、現在最もホットな問題である対中国の関税大幅引き上げ(10%→25%)はじめ同政権の様々な国際協定脱退の中でも、異常に一方的だ。
トランプ政権は2018年5月、オバマ前政権下の2015年7月に米、英、仏、独、ロ、中6か国とイランが結び、その後も国際原子力機関(IAEA)が定期的な監査でイランが忠実に実施していることを確認してきた核合意から、一方的に脱退した。他の5か国は加盟を維持し、イランからの原油取引を継続しようとしたが、米国が取引の大部分を占めるドル代金支払いルートを全面的に遮断したため、取引量が大幅に減少。2018年1月には産出日量380万バレル、輸出230万バレルに達していたイランの原油輸出量が、今年3月には産出日量270万バレルに縮小。トランプ政権はイラン原油への依存度が高かった中国、インド、日本など8か国に制裁適用除外期間を与えて、従来の代金支払いルートの使用を妨げなかったが、今月、制裁適用除外を解除。その間にイラン以外に輸入源を広げた日本でもガソリンの値上げが起こった。
米国の制裁による原油輸出の減少は、イランに大きな打撃を与えた。国際通貨基金(IMF)の資料によると、イランの経済成長率(GDP)は、2016年4月にはプラス13%程度に上がったが、2018年4月3.9%,19年4月にはマイナス6%程度に低下した。その国民生活に及ぼす影響は大きい。
これだけでも、トランプ政権の“イランいじめ”は1千万イラン国民を苦しめてきた。なぜトランプと一部の米国民が、これほどイラン嫌いなのか。その理由を列挙してみよう。
(1) 1978年1月の、ホメイニ師に率いられるイスラム革命によって、米国の中東最大・
最強の親米拠点だったイラン王政が打倒された。翌79年11月、反米派の学生団が
首都テヘランの米大使館を占拠、大使館員らを人質にして、米国に亡命したパーレ
ビ国王の引き渡しを求めた。米政府は拒否。80年4月、米軍による人質救出作戦が
失敗。81年1月、アルジェリアの仲介で、人質は解放されたが、米政府と米軍にとっ
て大きな屈辱となった。
(2)イスラム革命後のイラン政権は、パレスチナ紛争で、一貫してパレスチナ解放勢力を
支援し、イスラエルの拡張政策を非難してきた。歴代米政府は、米国主導で47年に
成立した国連パレスチナ分割決議に基づき、イスラエルが67年戦争で占領したエル
サレムとヨルダン川西岸地区、シリア領ゴラン高原の領土化を公式には認めなかっ
た。 しかしトランプ政権はエルサレムはじめ67年戦争でのイスラエル占領地の領
土化を事実上認め、米大使館を第2の都市テルアビブからエルサレムに移転。
4月のイスラエル選挙では、苦戦していたネタニヤフ首相の選挙運動支援するため、
ゴラン高原領土化への祝辞まで送った。
(3)サウジアラビアとイランは、ペルシャ湾一帯の覇権を競う巨大産油国だが、トランプ
政権は発足直後からサウジアラビアを全面的に支持し、イランを敵視してきた。トラ
ンプ政権発足 直後、トランプはサウジアラビアを訪問、反イランの立場を鮮明にし、
サウジ側は巨額の兵器購入の約束で応えた。
―ほかにも、シリア内戦、イエメン内戦など米国とイランが対立する勢力に分かれて支援しており、トランプ政権の対イラン敵意は深まるばかりで、危険だ。 (了)
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