はっきりさせよう(被曝線量)第一弾・他
- 2011年 5月 7日
- 時代をみる
- たんぽぽ舎
はっきりさせよう(被曝線量)第一弾。 山崎久隆
・週刊新潮のデタラメ記事
週刊新潮4月14日号に「あなたが子供だったとき東京の放射能は一万倍」という記事が載った。大量被曝時代は今に始まったことではなく、大気圏核実験をさかんに行っていた1950年代から1970年代のほうがひどかったと言いたいらしい。
国連科学委員会の「放射線の線源と影響」によれば、世界の核実験による世界被曝線量は累積で2230万人シーベルトであるとされている。
1万人シーベルトあたり4000人のガン死(年齢30歳におけるジョン・ゴフマンの評価)とした場合、約900万人が死亡すると考えられる。一方、低線量被曝の評価については研究者により大きな差があるため、最も楽観的である国際放射線防護委員会ICRPの評価ではこの約10分の1になる。それでも約90万人がガンで死亡する。
低レベル放射線被爆問題の第一人者、アーネスト・スターングラス博士は、ピッツバーグ医科大学放射線科の放射線物理学名誉教授だ。彼によれば、1958年から1999年にかけて全米で核実験及び原発の影響で100万人の乳児が死んだという。日本でも大気圏核実験が盛んに行われるようになった時期以降、がんによる死者が急激に増え、現在は死亡原因のトップ、死亡原因の30%はガンである。
現在の年齢60~40歳はまさに大気圏核実験が行われていた時期に生まれた年代にあたり、ガンによる死亡が多い年代でもある。
チェルノブイリ原発事故の場合は、国連科学委員会の同じ資料によると60万人シーベルトの長期集団線量になるのでゴフマンの評価を当てはめれば24万人のガン死に相当する。
いずれも全世界での確率だ。
核実験により全世界は被曝し、その影響で膨大な犠牲が出たが、個々の犠牲者と核実験の関係が証明できないため、「今から30年前は今日の福島第一原発の放射能どころではないほど放射能に満ちていたのにたいしたことなかった」などとデタラメが言える。当時ではなく、今が問題なのに。
・被曝線量は実行可能な限り低く、低く…
さて、福島の集団線量のリスク評価としては少なくても次のように言える。「100mSvの被ばく量の蓄積で、最大0.5%程度の「発がん」のリスクが上昇します。100mSv未満の蓄積による「発がん」のリスクについて、科学者の間でも、一致した見解が得られていません。」(東大医学部グループteam nakagawa Tnakagawa.exblog.jpより)というのが最も楽観的な評価と言うことになる。
しかしそれでも「ICRPでは、参考レベルを1mSv-20mSvの低い部分から(可能ならできるだけ低く)設定されるべきであり、設定にあたっては、「外部被ばく」「内部被ばく」双方による推定値がそれを下回るようにすべきです。長期には1mSv/年が参考レベルとなります。(現在の法的な“公衆の被ばく限度”が1mSv/年です)また、参考レベル以下であっても、さらに放射線量を低減できる余地があれば防護措置を講じるべきだとしています。」とブログに記載している。
ここで「可能ならできるだけ低く」という言葉が重要だ。「実行可能な限り低く」と訳される「ALARP領域:as low as reasonably practicable」の定義を述べているところだ。
・ICRPは原子力産業擁護の団体で甘い基準。ECRRがよりまし
これが「一般人は年間1ミリシーベルト以下」という現行基準の原理だ。ICRPの基準自体が、実際には原子力産業が継続できるように「手心を加えた」基準であるとの批判が強く、この基準を批判しているのが、ECRR(欧州放射線リスク委員会)だ。
少なくても現行法基準は「最悪でもこのレベルは維持すべき」防護水準であることを再度強調しておく。
先のゴフマンによる1万人シーベルト/年あたり4000人/年を当てはめれば、20ミリシーベルトの環境に5万人いたら、1000人シーベルト/年となり、400人が毎年ガンになって死亡する水準だ。
東大医学部グループもまた、20ミリシーベルトを許容したら、0.1%のリスク上昇は避けられないとしている。それを受容しろと強要されるいわれはない。0.1%とは、1000人に一人という水準であり、決して低くない。
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「連合(労働組合の全国組織)が原子力政策を凍結
福島原発事故をうけ原発推進を中止」
連合は4月30日までに、東日本大震災の復興にむけた政策を取りまとめた。従来の原子力政策を当面凍結することを盛り込んだ。復興財源確保では、まず政策の優先順位や不要不急な事業の見直しを行うよう政府に要望。
税制では、どの税にどの程度の期間上乗せするかなどは今後の検討課題とした。消費税については「社会保障の財源」(幹部)として復興財源のための税率引き上げには慎重姿勢で、今回の取りまとめでは明示しなかった。
連合はこれまで、エネルギー政策の中で「原子力発電所の高経年化(老朽化)対策と設備利用率向上、一定の新設増設」をうたってきたが、福島第一原発事故を受け、地域住民の理解や合意を確保しにくいとして、事態が収拾するまで凍結。見直しを行うとしている。(5/1茨城新聞の要約)
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「サクラ調査の報告書が続々到着」
宮崎、愛媛、名古屋、富山、岐阜、長野、横浜、埼玉、東京各地
サクラの花びらを調べて、環境汚染―放射能汚染-を調べる市民調査が8年目をむかえ、各地で取り組まれました。東北・北海道の報告書は遅いようです。
6月に第8回報告書を発行する予定です。サクラ調査ネットワークより
(たんぽぽ舎「地震と原発事故情報 その61』より転載)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1385:110507〕
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