解散しようかな。それとも解散よそうかな。
- 2019年 6月 8日
- 評論・紹介・意見
- 安倍政権澤藤統一郎
こんなはずではなかったんだ。あ~あ、アタマが痛い。
どうせこの先、国民の信頼に応えて人気の出るようなことが出来るはずはない。私にそんな知恵はない。アベノミクスもメッキがはがれてきた。どうせジリ貧なんだから、選挙は早い方がいいに決まっている。でも、このまま選挙に突っ込んでも、ホントに勝てるか自信はない。
有利なタイミングを選んで解散権を行使できるのが私の強み。「国民に大きな負担をかけるだけの、大義のない解散はありえない」なんて意見もあるようだが、そんなバカげた妄言に耳を傾けるほど、私も甘くはない。
大義にこだわってタイミングを失すれば選挙は惨敗だ。大義があろうとなかろうと、選挙は勝つことだけが重要だ。解散の大義なんて取り巻き連中にひねり出させればよいだけのこと。私だって、そのくらいのことは分かっている。
太平洋戦争が絶望的な局面になっても、昭和天皇は「もう一度戦果を挙げてからでないと」とおっしゃった。国民がどんどん死んでいくあの時に、国体護持という大目標のために、きちんとこう言えるのだから、さすがにご立派な態度。私も真似をしなくてはと思う。「もう一度の戦果」を挙げてから解散して、総選挙に打って出なければならない。
「もう一度の戦果」は、内政ではボロばっかりだから、外交で点を稼ぐしかない。「さすが、外交のアベ」と国民を唸らせる成果が欲しい。それなくしては、解散もできない。憲法改正だってできないことになる。
「外交のアベ」のもくろみは、二つあった。一つは、北朝鮮との交渉による拉致事件の解決。もう一つは、ロシアとの平和条約を締結して、北方領土問題に道筋を付けること。どちらも、できたら素晴らしいのだが、できそうでできない。だんだんと、その難しさが国民の目に分かるようになってきた。だから、アタマが痛い。
前回の解散は一昨年(2017年)の9月、10月22日に総選挙だった。「国難突破解散」なんちゃって。北朝鮮の危機を煽りに煽って、そこそこ勝たせてもらった。今思い返すと、あんなに大袈裟に危機を煽って噴飯物だが、あのときは本当に北朝鮮様々だった。金正恩には足を向けて寝られないと思った。拉致問題なんて、アタマの片隅にもなかったが、今度はそうは行かないから難しい。
しょうがないから、今度は拉致問題で成果を出さなきゃならない。これまでは、戦略も戦術もなく、やみくもに制裁強化だ、圧力だと言って済ませてきた。しかし、現実に成果を出さなきゃならないとなると、これまでの無為無策が足枷になる。まあ、考えてみればあたりまえのことだがね。
で、しょうがない。みっともないけど、方針を変えた。「前提条件なしに、私自身が金正恩との会談を目指す」とね。自分でも、すこし態度が大きいかなとは思ったが、北朝鮮側の反応は予想以上に、嵩にかかったものとなった。「厚かましい」と言うんだ。「厚かましい」だよ。こう言われて、どうすりゃいいんだ。こりゃ、お手上げだ。あわよくば参院選との「同日選」とも思っていたが、とても間に合いそうもない。
6月28、29日に大阪で開かれるG20サミットではプーチンとの首脳会談が予定されている。これで、北方領土問題での起死回生のホームランが出なければ、「もう一度の戦果」はゼロだ。ずるずると、無条件降伏まで行ってしまった、1945年悪夢の再来ではないか。
ところが、これがまた難しくなった。プーチンが、「日露平和条約の締結問題について、『ロシアは条約締結を望んでいるが、日本と米国の軍事協力が締結を難しくしている』との認識を改めて示した」「沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題を念頭に『地元住民や知事が反対しているのに建設が進んでいる』と指摘。日本の他の地域でも米軍施設が建設され、ロシアの安全保障に影響する恐れがあるとの懸念を示した」「難しいプロセスだ。すぐには解決できない」と言うんだ。何を今さら、とは思うけど、本当のことだから、反論できない。いや、困った。
結局、こういうことなんだろうな。
北方の4島でも、あるいは2島でも、日本に返還したとする。すると、直ちにアメリカの軍事基地が置かれることににもなりかねない。そういう懸念を払拭できない、と言うんだな。沖縄を見ろ、地元があんなに反対していても、辺野古の基地建設は、有無を言わせず強行されているではないか。日米安保条約は、全土基地方式と言うじゃない。「日米の軍事協力」が、北方領土問題解決のネックなんだ。沖縄で基地建設を強行したことが裏目に出てるんだ。
どうすればいいのだろう。「いっちょう、戦争でもやってみるか」なんてことは、維新の議員じゃあるまいし、口にできっこない。韓国とも、中国とも、北朝鮮とも、ロシアとも、外交みんなダメじゃん。化けの皮が剥がれつつあるのが、一番こたえる。
破れかぶれで、実はもう一つの試みがある。トランプの使いっ走りになって、イランへ行くっていうあれ。あんまり、大きなイベントではないけど、「外交みんなダメじゃん」の中で、一つくらいは成功させたい。トランプもイランも困り切っているようだから、もしかしたら、瓢箪から駒が出て来るかも知れない。そうすれば、大義があうがなかろうが、解散できるかも。いや、無理かな。
解散風、一度は吹かせてみたけれど、やっぱりダメかな。でも、この先、どうせジリ貧なんだから、やった方がいいのかな。グルグルと空回りするばかり。
あ~あ、アタマが痛い。
(2019年6月7日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.6.7より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=12754
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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