参院選で安倍政権に「民誅(みんちゅう)」を
- 2019年 6月 12日
- 評論・紹介・意見
- アベ参院選小原 紘
韓国通信NO603
天誅(てんちゅう)とは天罰、または天に代わって罰を与えること<『大辞典』>。今回は選挙の話題なので、天や神頼みでなく、民の力で罰を与える「民誅」というマイ新造語をあえて使った。
憲法を守る義務のある議員たちが、なりふりかまわず現憲法を「嫌い」と言いだしている。今に始まったことではないが。首相として言うのはさすがに「マズイ」と思ったのか、最近は自民党総裁の肩書で改憲を主張している。何と姑息な憲法99条(公務員の憲法尊重の義務)逃れだろうか。
<安倍政権は憲法違反の限りを尽くしてきた>
集団的自衛権について従来の違憲解釈を変え(2014/07)、翌年9月に強行採決した安保法制(戦争法)で自衛隊が海外で戦争をする道を開いた。明らかな憲法9条違反である。「共謀罪」(2017年強行採決)も、森友・加計事件、政府統計のウソも、すべて「政権のための政治」から生まれた。国民主権は侵害された。
憲法を守る気のない人たちが憲法を変えると言いだしたのを、子どもたちには、「交通違反をして交通規則がおかしいと言うようなもの」と説明してあげる。大人には、法治国家ではなく、人治国家、フランスのルイ14世の「朕は国家なり」を譬(たと)えて説明する。こんな無法国家はどこにあるのか。韓国の朴槿恵前大統領は「国政の私物化」が憲法違反に問われ、獄中にいる。
今回の参院選挙では、驕り、腐敗した政権に天誅、いや私たちの力で「民誅」を下して、まともな政治を取り戻したい。改憲勢力が3分の2の議席を確保すれば、必然的に改憲発議が行われ、国民投票が実施されるはずだが、緊迫感が感じられないのが不思議だ。
<争点隠しは許さない>
憲法を変えたいにもかかわらず、争点にしたくない与党の思惑が見える。
各種世論調査では改憲反対が6割から7割にのぼり、賛成は3割未満だ。改憲だけを争点にすれば改憲勢力の敗北は必至だ。それでいて選挙に勝てば、改憲が支持されたというのでは詐欺みたいなものではないか。
1人区で野党候補の一本化が進んでいる。野党協力を自民党は「談合」と揶揄するが、公明と連立を組む党にそれを言う資格はない。政治の現状に不満を抱く人たちは野党の結束に希望を託す。これからの運動次第だが、独裁政権の暴走に対する勝機が生まれつつある。野党は臆することなく憲法改悪反対を掲げ、堂々と憲法違反の自公政権と戦ってほしい。
自民党の「9条への自衛隊明記」と、「緊急事態条項」の挿入は、憲法の全面改定につながる一里塚だ。明治憲法を彷彿とさせる時代錯誤の改憲がこの後に控えている。
今回の選挙で憲法をめぐる国民的議論の盛り上がりに期待したい。
憲法論議が低調なのは、議論をすれば改憲に近づくという改憲反対派、理解が進むと改憲反対意見が増えるのを恐れる与党の思惑があるからだ。正面切って議論をしよう。本質的な議論を避けて雰囲気で結論を出すのは最悪だ。
改憲反対の運動や声がマスコミに取り上げられないせいか、聞こえてくるのは改憲をめぐる政府の動向ばかり。それも聞きようでは、改憲を前提とした話ばかりだ。
自称愛国者の安倍首相と右翼グループ「国民会議」周辺から流される情緒的で感情的な改憲論が世間を覆っているように見えるが、彼らは議論を拒み一方的に主張するだけ。まるで右翼の街宣車のスピーカーみたいなもの。相手の主張に耳を貸す冷静な議論、話し合いがますます大切になってきた。
<流布される「常識」は、意外と手ごわい>
首相の「9条を残して新たに9条の2に自衛隊を書きこむ」という主張。「平和憲法は何ら変わらない」という。「自衛隊員が憲法違反では気の毒」という主張は、平和憲法を意識して人情論をからませたウケ狙いの側面がある。しかし、狙いは自衛隊を米軍とともに世界中で戦争に参加させること。やはり徹底した議論が必要だ。
巷(ちまた)でよく耳にするこんな話はどうだろうか。
「憲法は占領軍によって強制された」という押し付け憲法論。「憲法は時代によって変えるべきだ」「日本国憲法は一度も変えたことがない」。「中国や北朝鮮から国を守るためには軍隊が必要」。最近の元号、天皇ブームに便乗して、「天皇の元首化」の主張もある。
「常識」は常識であり続ける限り、力を持つ。テレビや新聞、その他の紙媒体で大量に宣伝されればインフルエンザのように猛威を発揮するかも知れない。それを克服するために私たちは「知の力」を発揮するしかない。
さらにテロや戦争、大災害に備えるという「緊急事態条項」の導入が企てられている。緊急時に国会の機能を停止させ、政府が一切の権力を掌握する。「非常事態」を想定して「憲法の停止」を狙う意図だ。「私は国家」(2019/02/28衆院予算委員会)発言からもわかるように、安倍首相の国家観は「全権委任法」で全権力を手中に収めたヒットラーを連想させる。「全権委任法」で民主主義は破壊された。労働組合は解散させられ、ドイツ共産党は非合法化され、ヨーロッパ中が戦火に巻き込まれた。
<心配の種だが~ガンバレ NHK>
NHKと政治の関係といえば、当時副官房長官だった安倍晋三氏の介入による番組改変事件(2001年)が思いだされる。NHKは安倍首相に頭が上がらなくなった。事件後もNHK会長に就任した籾井会長の発言「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」に象徴されるように自民党政権と安倍首相寄りの報道が続く。その忖度ぶりは「微に入り、細をうがつ」もので、NHKは政府の広報機関になったという指摘も多い。放送受信料で成り立つ公共放送として考えられないことだ。韓国では李明博・朴槿恵政権の侍女だったKBS、MBC放送が「公正」「中立」を取り戻した。戦後最大の曲がり角にさしかかっているこの時期、NHKに対する期待は大きい。視聴者は報道の公正、中立に期待している。
韓国では大統領選挙時に全候補者による公開討論が定着している。数回にわたるテレビの長時間番組だが、白熱した討論に対する国民の関心は高い。討論会が終わると即日、世論調査の結果が発表される。過去には恥をかくのを恐れて出演したくない人もいたという話も面白い。
「食べたり」「旅したり」「大笑いバカ騒ぎ」の番組を自粛して大政治討論会の開催は無理だろうか。各政党の主張をめぐる討論会は、国民に政治を考え、参加を促す場になる。
日韓関係は「戦後最悪」と心配するより、韓国のテレビ局と国民を見習ったらどうか。
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