ニューヨークタイムズが国際版から政治風刺漫画を禁止という報道が
- 2019年 6月 17日
- 評論・紹介・意見
- 村上良太
ニューヨークタイムズが国際版から政治風刺漫画を禁止する措置を来月から取る、との報道。本当か?!と思い、ネットで探ってみると、ワシントンポストやフランスのメディアなどでも同じことが報じられていました。社説やコラムの掲載されているエディトリアルというページがありますが、そこに毎日掲載されている漫画の事のようです。直接の引き金となったのは、イスラエルのネタニヤフ首相を盲導犬に描いて、盲人をトランプ大統領に仕立てたニューヨークタイムズの風刺漫画にイスラエルが抗議をしたかららしい。
この件についてニューヨークタイムズの常連漫画家のChapatteがブログで次のようにコメントしていました。
“In April 2019, a Netanyahu caricature from syndication reprinted in the international editions triggered widespread outrage, a Times apology and the termination of syndicated cartoons. Last week, my employers told me they’ll be ending in-house political cartoons as well by July. I’m putting down my pen, with a sigh: that’s a lot of years of work undone by a single cartoon – not even mine – that should never have run in the best newspaper of the world..”
(2019年4月、提携している外部の漫画家が描いたネタニヤフの漫画をニューヨークタイムズの国際版に転載したところ、広範な憤激を呼び起こしてしまった。ニューヨークタイムズは謝罪し、外部の漫画の転載をやめることにした。先週、ニューヨークタイムズの僕の雇用主たちがニューヨークタイムズで独自に載せている政治風刺漫画についても7月以後、やめることにすると言ってきた。僕はため息とともに、ペンを置く。<たった1つの漫画でこれから先の長い年月の漫画が全部失われてしまう。問題になったのは僕の漫画ですらない。あの漫画は世界の最良の新聞には絶対に掲載されるべきじゃなかったものだ>)
ニューヨークタイムズの政治風刺漫画は、ある意味で記事よりも輝いていたと言えます。ジョージ・W・ブッシュ大統領の時代に、ニューヨークタイムズは圧力に屈してか、ロクでもない記事どころか、大きく誤った記事を掲載していた時期がありました。その結果として(もちろん、それだけではないにせよ)イラク戦争が起きたのです。しかし、そんな時代にあってもエディトリアルのページの風刺漫画家だけは軟化せず、ジャーナリズム精神を発揮していたのを覚えているのです。だから、極めて残念です。
しかし、Chapatteは漫画の力が今の時代ほど大きくなった時はなかったし、これからについても楽観視しているとこの件に関するブログを結んでいました。
※イスラエルのHAARETZ紙の報道 ”New York Times to Cease Political Cartoons After ‘anti-Semitic’ Depiction of Netanyahu”
※The New York Times cuts all political cartoons, and cartoonists are not happy(ワシントンポスト)
※ニューヨークタイムズの常連漫画家Chapatteのブログ ”The end of political cartoons at The New York Times”
https://www.chappatte.com/en/the-end-of-political-cartoons-at-the-new-york-times/
※フランスのルモンド紙の政治風刺漫画Plantuの声明 (francetv info)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8729:190617〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。