消費税は、日本国憲法下の税制に相応しいのか。
- 2019年 7月 12日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
金融庁の報告書を契機に火がついた年金問題は、少子高齢化の社会にあって老後の不安が現実になった、と受け取られ社会問題になりつつあります。 来る参議院選挙では、国民の不安を鎮静化出来る選良の方々を選びたいものです。
国民の生活実態は、新自由主義が跳梁跋扈する現状を反映し、前世紀から悪化する一途なのです。 現政権の統計には疑惑が付き物であり、此処で引用するのも気が引けますので、ある保険会社の調査を引用しますと、「還暦を迎える人の4人に1人は、貯金が100万円も無い」現状が明らかになります。
還暦を迎える人の4人に1人は、貯金が100万円も無い シニアガイド 2019/6/14 00:00 https://seniorguide.jp/article/1190354.html
しかも男女差別を反映して「働く女性の9割は定年後の生活が不安、でも4割は貯金が無い」のが実態です。
働く女性の9割は定年後の生活が不安、でも4割は貯金が無い シニアガイド 2019/6/30 00:00 https://seniorguide.jp/article/1193337.html
このような過酷な生活実態を無視して消費増税が実施されます。
消費税は、極めて逆進性が強く所得が過小な貧困層からも徴収されます。 所得課税が無くても、生活保護の対象者であっても、小児であっても課税と徴収の対象からは逃れることが出来ないのです。
日本国憲法の原理に則る税法学を喧伝されておられた故北野弘久先生は、「応能負担原則・国民(納税者)主権主義などに鑑み、租税理論的及び憲法理論的にいえば、直接税中心の体系が合理的である。 中略
大型間接税を導入しなくても、日本国憲法が意図する応能負担原則等に従って税制を整備することによって、二十一世紀の高齢化社会、福祉社会、平和な社会の日本を財政的に展望することが可能である。」(税法学原論第六版)と述べられています。
処が、憲法原理に則る税制から違背した税目である消費税を導入し、法人税、所得税等の税率を操作することに依り、大企業と富裕層にとっては「日本版タックスヘイブン」(浦野広明著「税が拡げる格差と貧困」)と化したのが実態なのです。
世界の課税実態と比べて「日本は非常に富裕層に優しい税制になっているといえる。仮に、株式などの金融所得に対する税率を25%に5%引き上げるだけで、約1兆円の税収増が見込めるという。」と報道されるのが一部であるのがこの国の悲しい実態でもあります。
老後2000万円報告書で発覚した“富裕層の税率が高い”のウソ 女性自身 記事投稿日:2019/06/21 11:00 最終更新日:2019/06/21 11:00 https://jisin.jp/domestic/1749646/
大企業にとっては、この国がタックスヘイブンそのものであるのです。 その一例は、あのトヨタ自動車は法人税を5年間も払っていなかった、との事実があるのです(不公平な税制をただす会「社会保障財源38兆円を生む税制」)。
これらの事実を勘案すれば、現税制の反憲法性が顕著です。
ここで思い出すのがあの麻生氏の「ナチスの手口に学べ」です。 あの発言。 現憲法を改正する手法について、では無く、正しくナチスのように政治を司る、と言う意味であったのではないのでしょうか。 即ち、ナチスは、憲法改正等の正統的な手続は一切せず、ただ、なし崩しに法体系を無視してしまっただけなのです。 アベ自民党は、既にナチス化し、日本国憲法下の実定法秩序をなし崩しにしつつあるのではないでしょうか。 そう思えば、消費増税の影で税制そのものを大企業と富裕層へ有利にしつつある動きが理解出来ますし、各種統計の恣意的改編も理解出来ます。 加えて未だ明らかになっていない処で恣意的改編等があるのではないか、とも思えます。
蛇足ですが、株式市況が景気の前兆との金融界の常識が今では通用しない、と金融業の人々が言いますが、それも官製相場でアベの何とかの実態暴露を隠蔽しているのかも知れません。 とすると、上に引用した保険会社へも何らかの行政指導が為されるのかも。
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〔opinion8807:190712〕
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