中国擁護のわけ その17
- 2019年 9月 3日
- 交流の広場
- 箒川兵庫助
香港デモは中国政情不安定化工作の一環
先月第3週のBloomberg映像で「オスロでの香港デモ講習会」を報じていた。相も変わらずCIAや全米民主化基金等が予算を出して裏で糸を引いているなと思った次第。小生は香港デモも法輪功騒動も天安門事件も中印国境紛争もチベット独立問題もそして新疆ウィグル自治区問題もCIAや英国のMI6が裏で糸を引いていると指摘した。そうでない事例があれば議論するが,残念ながら事実を少し踏まえただけの感情による中国批判が多く,閉口している。いいところがないようである。
Bloombergの報道は為になる。世界が広がる。ただ新疆ウィグルに関するフェイク報道には驚いたが他のマスメディアと違って直ぐわかるフェイクニュ-ズを流す。資本を握られている以上,命令されれば中国批判(すぐ嘘だと分かる)の映像を流す。例えば烏魯木斉(ウルムチ)市とトルファン市の間に100万人収容所が存在するという。夏は摂氏60度以上,冬は零下20度にもなる地域に100万人も収容できるはずがない。しかも兵站が大変である。
100万から200万人の政治犯,ウィグル人が収容されていると言われている。水谷尚子氏はNHK国際放送でそこに100万人が収容されていると発表して今年4月から晴れて明治大学の准教になられた(司会をしたアナウンサ-は信じられないという顔をされていた)。水谷氏は2010年に中国入国を北京政府に断れた経験がある方であるが,よくぞ「引き渡し」条例で拘束されなかったと思っている。しかしグ-グル地図(2017・18年)で調べたところ,そこには収容所がないことを小生は発見して本サイトちきゅう座で指摘させていただいた。今や現地に行かなくてもゴミが落ちているか,いないか分かる衛星写真が登場した。そこで小生は,収容所なんてないから森永大学同様,明治大学要らねえと書かせていただいた。もう一つ例をあげればホータン(和田)地区にも100万~300万人の収容所があると主張されたのが,幸福の科学のA氏(朝堂院大覚総裁主催JRPテレビ)。あくまで現場を見ないで逃亡者,あるいは亡命者の話をまとめただけの主張。信用できない。
八ヶ岳ご在住の阿部先生は天山天池の方まで観光旅行されて中国批判の文章を寄せられた。しかし肝心の収容所については指摘されていない。しかし収容所探しをするなら天池と反対方向のホ-タン地区に行くべきであった。なぜなら,北京政府と新疆政府は見つかったら大変だから北方の天山天池に観光名所を設定したのである。左右対称,南船北馬という言葉とは関係ないと思うが相手が北と言えば南が問題である。ノモハンまで行かれた澤藤先生も「抑圧」の問題を取り上げられたが,シンガポールSGへ行って政府批判を公然とすれば拘束されるであろう。昔ハンガリ-でSGの商売相手と李首相と政治の話をしようとしたら,話を逸らされたことがある。抑圧されているなと感じた次第。野党がやっと議席をとることになったSG。それでも絶対多数の与党が支配するSGに3,4日の旅行に出かける日本人は結構多い。そこで何を見て何を感じて帰国するのであろうか。
話を1960年代のシカゴに移そう。68年4月初め,マ-ティン・ルーサ-・キングJr.がテネシ-州メンフィスで狙撃され、死亡した。ケネディ大統領の弟ロバ-ト・ケネディが、民主党大統領候補指名を目指して運動していたが,彼も6月に暗殺された。中国と米国とどちらが「恐怖」と「抑圧」のない社会であるのか分からないしかしそれだけではない。
イリノイ州シカゴの民主党大会に集まった党員の一部は,警官隊と衝突して多くの負傷者を出した。無抵抗の人たちを機動隊(警官隊)が襲ったのである。最近の21世紀でも白人警官が無抵抗の黒人妊婦を殺した。他方わが国はどうか。上級国民が家族を自動車でひき殺しても逮捕されない無法国家である。
小生は思い出す。成田空港を利用したことではない。江藤隆美運輸大臣が土下座して成田の農民たちに謝った件である。何故土下座までして謝らなければならなかったのか。小生たちは出発するために3か所の検問所を抜けて出発ロビ-に入ったが,機動隊の物々しい警備。ここは日本なのか。中国の監視カメラどころではない。阿部先生は中国で教鞭をとられたからか,公安や地元警察などに詳しい。5つか6つの警備者を区別・特定されていた。
一方で成田闘争の話まで持ちださなくてもある学校を受験するために校門をくぐったところ機動隊員に写真をたくさん撮られたことがある。フィルムが入っていたかどうか確認できないが,小生の心理には警備の物々しさと「脅し」と「抑圧」という言葉が残った。もう少し穏やかに過ごせないものか。政府が住民の意見を聞かず無理なことをやるから住民が反発するのではないのか。そこから辺野古基地建設で大阪府機動隊員が反対派に「土人」発言をしたことまで遠くないだろう。二等空佐の「非国民」発言も差別主義の表れだが,1923年9月1日の朝鮮人大虐殺も差別主義の現れである。
ならばどこに差別や抑圧を感じない国や土地があるのだろうか。西方に浄土がなければ東方にも浄土はないだろう。桃源郷は何処?
北京政府の主権の及ばない香港国を造ろうとしているのか
Bloombergでオスロの香港デモ講習会の話を知った。機動隊の隊列を崩す方法を伝授している映像もあった。さすがはCIAだと思った。軽視していた。香港空港を壊しているデモ隊。しかし小生が憂慮したのは,黄色のヘルメットを被った若者が英国国旗や米国国旗を広げている映像であった。何故英米旗なのか。
中国の国連大使も言ったように,香港は中国の一部である。英米領ではない。1984年や1997年の返還(return)合意がある。香港政府は84年以前の,「英国統治時代の緊急法」をもってデモ隊を駆除しようと考えているらしい(Bloomberg 9月第一週ニュ-ズ)。香港は完全に2047年には中国の一部となる。香港の歴史に詳しくない小生などは香港が再び英領になるとか米国領になるのかと浅はかな知恵を巡らしてしまった。
そんな事をぼや-っと考えているとき,ふとオスロの映像をもう一度見たいと思って探したが見つからない。そこで,ITで検索してみた。すると“Hongkongers by Denise Ho 2019”という映像があり拝聴した。40代前半であろうかHo氏は流暢な英語を話す。アメリカ英語はよく聞き取れないが,おそらく英国英語なのであろう。外国語苦手な小生にも少しは理解できた。その少ない理解で思うことは第一にHo氏が英米が人権擁護の国ではないことを無視または理解していないことである。リビアやユ-ゴをみよ。ISIS支援のために無辜の住民を攻撃・爆撃する英米軍の残虐行為を知らない発言である。第二に彼女が「香港は中国でもないし,米国でもない」と発言したが,黄色のヘルメット学生が米国旗を広げていたことと矛盾するのでは,と思った。とすれば香港は英領なのか。しかしそれは北京政府が認めない限りあり得ない。ならばHo氏は香港の将来に何を期待しているのであろうか。第三に彼女は中国政府の香港における人権抑圧を批判して「チベットや新疆ウィグル人の人権を無視している」と発言したが,語るに落ちたとはこのことだろぁw)、。オバマやトランプ政権の,英米諜報機関の攪乱政策,政情不安定化工作を思い出させた。ならば英米国の人権無視を思い出して付け加えなければならない。オランダの国際司法裁判所は英国がディエゴ・ガルシア島の住民を追い出したことは違法だとして元住民に返せと判決を下したが英国は無視している。ガルシア島に基地を建設した米軍も住民の権利を無視している。そういう事に目を瞑って,北京政府だけを批判するのはおかしい。しかしガルシア島と香港島とは異なる。前者は島民が全員追放されたが島は島民のものであり,後者は追放されなかったが,清朝領土の民衆であったのである。しかしまた共通点もある。どちらもイギリスの思いのままの島となった点である。
もちろん,彼女は香港出身であるから北京政府や香港政庁を批判する自由がある。しかし彼女は緊急法(緊急状況規則条例)を造った英国領に戻すことを考えているのではないのか。しかし1925年の5.30を思い出さないのはなぜか。50人以上が銃殺され,170人以上が負傷したという。民主化を求めて英総督府にデモを仕掛けた香港の住人。すなわち香港に民主主義は1997年以前にはなかった。同様に以後もないのである。ある中国報道官がいったように中国の基本的人権とは人々が豊かに暮らせる(貧乏でない)ことである。
1992年に実務的返還交渉が始まりその頃赴任された日本の記者も居るようだが,1984年以降の英中の交渉や5年前から始められた本格的交渉を知っておられるはず。しかし小生のような門外漢は香港の「自治」なるものの中味がよく分からない。ご教示願いたいとしても,Ho氏は香港の自治を強調されている。ならば香港政庁が「本国送還条例Extradition Bill」を新たに設けようとしてどこが悪いのか。北京本国の投票制度を熟知しているはずである。西洋型投票制度とは異なる。ミャンマ-,インドネシアの政治制度に近いのではなかろうか。
北京政府には約2700万人を犠牲にして共産党政権を樹立した歴史と日・西欧列強に租界を貸さざるを得なかった歴史を考慮したとき,香港を取り戻すことには大いに意義があろう。しかしあまりにも金融資本の移動が自由過ぎて本土とどう調和するのであろうか。少しずつ「中国化」する必要があることは明らかである。その見取り図はあるのだろうか。しかしHo氏の演題にもあるように「香港国人(Hongkongers)」が誕生する事態は避けるべきであろう。すなわち,イギリスが作りその統治時代から存続する緊急法をデモ隊に適用してはならないと思う。それよりも香港政庁は,米英の手先となるNGOを認めず,金融資本にいくらか重税を課し,貧富の差をなくし,住宅を供給し,中国本土へ移住する人々を徐々に募集してはいかがか。日本政府が少子化問題を放置し外国人人材を入れるのとは異なるだろう。同じ中国人である。中国本土が少子化に向かっているとすれば,香港の人々は歓迎されるはずである。
追記:桜井春彦氏が主宰される『桜井ジャ-ナル』の「2019.09.01 米英の後押しを受けたグループが香港で火炎瓶を投げ始めた」(マスコミに載らない海外記事)が大いに参考になる。但し,オスロや国連で演説したDenise Ho 氏関する情報がない。もし「Ho」がホ-チミンの「胡」であればウィグル人を祖先に持つだろう。胡弓,胡坐,胡麻などがあり,日本人とつながりがあることが連想される。
追記2:香港の「一国二制度」は台湾を中国本土の一部とする場合の先例として導入されたとする意見がある。素人の小生にはその真偽が分からない。米国が台湾に戦闘機を売却することにしたが,北京政府はこれに反対している。しかし2047年までは先が長い。それからが台湾統一問題であろう。これも一筋縄ではいかないだろう。しかし中国人は99年間待った。待って香港が返還された。英国はこれを“Hand off” と呼んでいるらしいが,主権も実際上も中国の一部となることが約束されているのだから返還(Return)であろう。沖縄こそ“Return”ではなくてHand off“なのではなかろうか。日本政府や新聞発表に騙されてはいけない。
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