共産党は、「即位礼正殿の儀」に参列しない。その姿勢や良し
- 2019年 10月 11日
- 評論・紹介・意見
- 天皇制安倍政権澤藤統一郎立憲主義
本日(10月10日)の赤旗からの引用である。
「『即位の礼』 一連の儀式参列せず」「小池氏 憲法原則と両立しない」という見出し。この見出しだけでも、分かることは分かる。
日本共産党の小池晃書記局長は9日、国会内で記者会見し、天皇の代替わりにかかわり行われる「即位の礼」の一連の儀式への態度について問われ、「『即位礼正殿の儀』および『饗宴の儀』には参列しない」と述べました。
小池氏は、日本共産党が天皇の代替わりに伴う儀式等については、憲法の国民主権、政教分離の原則にかなったものとすることを求めてきたが、政府が昨年4月に閣議決定した「即位の礼」の一連の儀式は、戦前の明治憲法下の天皇主権・国家神道のもとで代替わりの儀式を定めた「登極令」のやり方を踏襲するものだと指摘。「とりわけ『即位礼正殿の儀』は、神によって天皇の地位が与えられたことを示す『高御座』から天皇が即位を宣明し、その即位を内外の代表が祝う儀式であり、神道行事である『大嘗祭』と一体不可分に行われるものだ。『饗宴の儀』は、こうした『即位礼正殿の儀』と一体の行事に他ならない」として、「わが党は、これらの儀式が現行憲法の国民主権、政教分離の原則とは両立しないことを指摘し、国事行為である国の儀式とすることに反対を表明してきた。こうした見地から『即位礼正殿の儀』および『饗宴の儀』には参列しない」と述べました。
簡明な理由と簡明な結論。これでよかった。共産党ともあろう者が、高御座の新天皇を仰ぎ見て、安倍晋三の音頭に唱和して、「テンノーヘイカ・バンザイ」などという愚かな真似をやれるはずもなかろう。共産党を支持し、これに票を投じた少なからぬ国民を代表する立場で、きっぱりと「一連の儀式参列せず」としたことを評価したい。
これを産経が「共産党が天皇陛下ご即位の儀式に欠席表明」と報じている。「天皇陛下ご即位の儀式」には、国民こぞって参列し、「テンノーヘイカ・バンザイ」と祝意を表明すべきだと言わんばかりの記事のつくり。
芥川はこう言った。「わたしには実際不思議である。なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩かれるのであろう?」
芥川に倣って,今はこう言わねばならない。「わたしには実際不思議である。なぜ主権者たる国民が、酒にも酔わずに、『テンノーヘイカ・バンザイ』などと叫ぶことができるのであろうか?」
私は、代替わり(天皇の交代)を祝うという感性が、自律した個人にふさわしからぬものと思う。これは、日本国憲法以前の、言わば近代のもつ自然法的な大原則だと思う。
共産党は、そこまでは言わない。キーワードは、「国民主権」と「政教分離」。代替わり(天皇交代)儀式のあり方がこの憲法上の両原則に反するという。象徴天皇制を尊重しつつ、天皇交代の儀式のありかたを、天皇の存在に優越する他の憲法諸原則に照らして問題とする姿勢。もちろん、日本国憲法遵守至上主義に文句の付けようはないが、私には、やや物足りない。
ところが、世の中には、いろんな人がいて、いろんな見方がある。この共産党の「憲法遵守至上主義」を、「共産党は改憲派」という自民党議員の発言が飛び出した。何だいったいそれは。私の頭が混乱しているのか、当該議員の発言が混乱しているのか。
自民党の井野俊郎という議員が、本日(10月10日)の衆院予算委員会で「共産党の皆さんは改憲派」と発言し、一騒動あったという。
発言した当の自民党議員にしてみれば、「改憲派」とは、自分のことだ。共産党を「改憲派」というのは、自分と同じということ。これでは、罵り言葉にならない。
朝日が伝えるところでは、井野の発言は「憲法第1章、天皇制について言えば、我々自民党は護憲。他方、共産党の皆さんは改憲派になると思う」というもの。井野という人物、最近の共産党の姿勢を知ってのことか、知らないのか。
野党の席から「違うよ!」「でたらめなこと言うな!」と激しいヤジが飛び、委員会室は一時騒然となった。井野氏は「(共産党は)即位の礼に参加しないじゃないですか」と反論したが、ヤジは収まらなかった。
こうした状況を受け、午後に再開された同委の冒頭、棚橋委員長は井野氏の発言について、「公党に対して誤解を与えるような発言がありました。発言には十分に注意してほしい」と述べ、注意を促した。
井野議員の発言は「憲法第1章、天皇制について言えば、我々自民党は護憲。他方、共産党の皆さんは改憲派になると思う」は、本来の共産党のあるべき姿の指摘といえよう。国民の多くが漠然とそう考えているものと思われる。その改憲とは、歴史の進歩に沿う方向でのもの。
もちろん、天皇制について、「自民党が護憲派」はウソだ。歴史に逆行する形での改憲志向政党である。2012年4月28日発表の「自民党改憲草案」は、その前文の冒頭を、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって…、」としている。日本国憲法とは大違い。
そして、残念ながら、「共産党の皆さんは改憲派になると思う」も間違いなのだ。野党の席から「違うよ!」「でたらめなこと言うな!」と激しいヤジが飛んだとおり、共産党は「護憲一辺倒」なのだ。確かに、共産党は即位の礼に参加しない。しかし、それは現行憲法の大原則に反するからであって、象徴天皇制そのものに反対し、天皇制をなくしていこうという積極的改憲路線とは無縁なのだから。
(2019年10月10日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.10.10より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=13518
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9075:191011〕
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