放射線障害の年齢による感度
- 2011年 5月 19日
- 時代をみる
- 近藤邦明
現在、福島県の小学校において、屋外活動の可否の基準として20mSv/年が採用されていますが、批判が続出しています。それは当然のことです。20mSv/年は核物質を扱う労働現場の受忍限度であって、一般の人、しかも子供に適用するなどとんでもない値です。
成長期の子供の体は活発に新陳代謝が行われ、細胞分裂も盛んに行われます。その結果、放射線による遺伝子の破壊の影響が成人以上に大きくなります。
京都大学原子炉実験所の小井出裕章氏の講演(4.29「終焉に向かう原子力」第11回 浜岡現地報告)で紹介されたJ.W.Gofmanのレポートの研究結果を示します。
Gofmanの研究では低線量被曝の晩発性障害に対して、平均的に1万人・Sv当たり3731人がガンで死亡するとしています。この値は低線量被曝に閾値は無いという線形モデルに基づいていますが、研究機関によって数値は異なっています。このHPのNo.569『個人的許容被曝線量』で紹介した国際放射線防護委員会(ICRP)は570件程度としていました。
問題は、同じ放射線量を浴びたとしてもその身体に与える影響の程度は年齢によってまったく感度が違うことです。Gofmanの研究によれば、0歳児では平均の 15152人/3731人=4.06倍、図から小学生程度の5~15歳でも平均の2倍程度の割合でガン死が発生していることがわかります。
Gofmanの研究にしたがって、1万人・mSvで4(≒3.731)人がガンによって死亡するとした場合の晩発性障害によるガン死者の推計結果を上図に示します。例えば、放射線業務従事者の基準値では、
(4人×20・mSv/y)/(10000人・mSv)=1/125(1/y)
なので、正確には1年間で125人に1人がガンで死亡することになります。2年間浴び続ければ125人に2人がガンで死亡することになります。同様に、福島の緊急時の基準である250mSv/yでは、1年間で10人に1人がガンで死亡することになります。これは途方も無い数値です。
現在、福島県の小学校に適用されている20mSv/yという数値は、小学生の平均的な被曝に対する感度を2倍と仮定すると次の通りです。
2×(4人×25・mSv/y)/(10000人・mSv)=1/50(1/y)
つまり、1年間に小学生50人に1人が将来晩発性の放射線障害によるガンで死亡することになります。この条件で小学校時代の6年間放射線を浴び続ければ、6/50つまり、50人に6人が将来的にガン死することになります。
このような基準値を将来ある子供たちに強制することが許されるとは、到底思えません。
http://www.env01.net/index02.htm より転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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