地球温暖化を憂う - 東京の平均気温は確実に上昇中 -
- 2019年 10月 21日
- 評論・紹介・意見
- 地球温暖化杜 海樹
環境問題、地球温暖化問題の議論が白熱しつつあるが、9月23日、国連の気候行動サミットにおいて16歳のグレタ・トゥーンベリさんが演説し「お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか」と大人達の行動を批判、世界中で話題となった。
地球温暖化問題については、近年、多くの国際会議で取り上げられてきており、京都議定書やパリ協定において温室効果ガスである二酸化炭素等の削減が謳われては来たが、笛吹けども踊らずといった感が拭えない状況が続いていた。国連気候変動に関する政府間パネルが、地球温暖化が進めば2030年には世界の平均気温が産業革命前より1.5度上昇すると発表しても、日本の受け止め方は極めて冷ややかといった感が続いて来た。
それどころか1.5度上昇という数字に対して「大したことはない」といった議論も根強くあり、更なる競争力強化で経済発展をとの掛け声も消えることがない状況が続いている。こうした事態に、市民の間からは何が本当なのか分からない…と戸惑いの声もあがり、混沌とした状態に陥ってしまってもいる。
だが、この地球温暖化問題、気象庁のこれまでの観測データを見れば、結果がどうなるかは十二分に察しがつくと思われるので少し紹介してみたい。
東京都のこれまでの気温の変化を見てみたい。気象庁のデータによれば、東京の1900年当時の年間平均気温は13.6度であり、1月の平均気温は1.6度、8月の平均気温は26.1度であった。それが、1950年になると年間平均気温が15.1度となり、1月の平均気温は5.0度、8月の平均気温は26.2度となる。そして2000年になると年間平均気温が16.9度となり、1月の平均気温は7.6度、8月の平均気温は28.3度となっている。100年の間に東京の年間平均気温は3.3度も上昇していたのだ。もちろん、年々によって平均気温に若干の幅は見られるのだが、1900年前後年の平均気温は概ね13度程度であり、1950年前後年は15度程度であり、2000年前後年は17度程度であるので、平均気温は確実に50年間に2度程のペースで上昇してきたことが見てとれる。産業革命以降、まだ世界の平均気温としては1.5度上昇していない現段階で、東京では3度以上も上昇していたことが見て取れるのだ。
また、近年、異常気象といった言葉が度々使われるようになり、例年にない猛暑、例年にない寒波などと言われ、さぞかし他の年とは気温が大きく異なり飛び抜けた数値が記録されているとお思いの方が多いのでは?と想像するのだが、平均値で見ると実は大きな差違にはなっていないのだ。
例えば、記録的な猛暑だと言われた2018年夏の東京の気温を平均で見てみても、8月は28.1度であり、前年の2017年8月の26.4度と比べても1.7度しか違っていないのだ。年間で見れば2018年は平均気温が16.8度であり、2017年は15.8度であったので1度しか上がっていない。年間平均で1度変わっただけで大騒ぎをしていたという訳なのだ。
1993年には平成の米騒動と言われた冷害騒ぎがあり、日本は米の収量が確保できないとして、緊急に東南アジアの国々から「タイ米」を大量に輸入した訳だが、この年の気温を夏だけではなく年間平均気温として見てみると15.5度であり前年の平均気温16.0度から0.5度しか下がっていないのだ。年平均で0.5度下がっただけで空前の大騒動となっていた訳なのだ。
こうして見ると分かると思うが、気温の変化というものは平均値には中々現れ難いものであり、反対に平均値が少しでも変わるときは、その部分部分には大きな気温の振れ幅が潜んでいて、人間はその振れ幅の大きさには対応できていない、あるいはできないということが見て取れるのだ。そして、平均気温が少しずつ上がるにつれ、部分部分の振れ幅が大きさを増してきている。気温は一定の振れ幅を持って上下しながら、しかし、全体としては着実に上昇の方向に向かって来ていると言えよう。平均で1度変わるということは、振れ幅を含めて考えると相当恐ろしいことと受け止められる。
現在の日本の最高気温は41度となっているが、このまま温暖化が続けば50度を記録する日もそう遠くはないであろう。現にインドでもアメリカでも既に50度超えが観測されている。
ちなみに気温が50度を超えてくると、空気密度が薄くなることから現状の飛行機は離発着できなくなり、鉄道のレールも伸びて走れなくなってくる。海面が上昇すれば港も使用できなくなり、海外からの輸入に頼っている日本は完全に食糧調達ルートを失ってしまうと思われる。平均気温が上昇すれば雪も減るであろうし、やがては雪解け水もなくなり、田畑は荒れ、米も野菜も栽培できなくなると危惧する。稲は比較的高温には強い植物だが40度を超える環境では育ち難い植物であることは言うまでもない。食糧自給率の低い日本において地球温暖化は致命傷なのではないだろうか。
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