トランプ政権下、増え続ける中東の米軍 - なぜ「イスラム国」壊滅に協力したクルド人勢力を見捨てたのか NYタイムズ紙が、世界の米軍の現状を調査 -
- 2019年 10月 28日
- 評論・紹介・意見
- アメリカイスラム国クルド中東坂井定雄
トランプ米大統領は13日、主にシリア北部に派遣されている1千人を超える米軍に出国命令を下した(その後200人はシリア南部、残りはイラクへの移動に変更)。
それを予期したようにトルコ軍がシリア北部のクルド人自治地域に侵攻、同地域を警護していたクルド人武装組織YPGは戦闘を避けて南方に撤退した。米軍撤退後の23日、ロシア軍部隊がトルコ軍に加わり、クルド人の町や村を占領。シリアのアサド政権も、国境から10キロ圏内のシリア領までロシア・トルコ両軍の共同パトロールを認めた。
米国内には、「イスラム国」壊滅に、米軍は空爆、地上作戦はYPGと協力しあったクルド人を見捨てるな、という声が、ペロシ下院議長をはじめ上下両院で高まったが、トランプ大統領は無視した。
NYタイムズは21日、中東、アフガニスタンをはじめ世界各地に派遣されている米軍の規模を調査し、報道した。紙面の見出しは、“トランプ大統領の「際限のない戦争を終らせる」という誓いにもかかわらず約20万人の兵士たちが残っている”。記事は「トランプ大統領の下で、彼の就任時よりも多い軍隊が中東にいる」で始まっている。以下に同紙の報道の要点をまとめたー
トランプ大統領は大統領選挙運動の際、彼が“アメリカの終わりなき戦争”と呼ぶものを終らせると、約束した。
しかし、戦争は終わらず、中東の部隊には最近の数か月、帰国する兵士たちより多くの兵士たちが派遣されている。彼が部隊を一つの紛争から他の紛争へと動かしているからだ。
何万人もの米兵がソマリア、アフガニスタン、イラク、そしてシリアなど世界中に配置されている。そして、9.11同時多発テロ事件後の大規模な戦争時より多数の軍隊を現在、ドイツ、韓国、日本などの同盟国に維持している。
この海外での配置は、司令官の要求、任務の変更、航空機や艦船の輸送能力によって毎日変動しているが、おおよそ20万人。その内訳はー
▼アフガニスタン:12,000-13,000人
戦争が激しかった2010、2011年、アフガニスタンには10万人を超す米兵がいた。トランプ氏が大統領に就任したとき、この 数は10、000人前後だった。2017年に新戦略が発表され、数千人が増加した。
トランプ氏は18年に及ぶ戦争を嘆いていた。
現在の司令官、ミラー将軍は昨年、米軍の人数を12,000~13,000人にした。米国とアフガニスタンの当局者が匿名を条 件に語った詳細によると、先月、トランプ氏がタリバンとの和平会談を中止する前にまとまった合意案では、アフガン駐留米軍の 規模を最初の段階で8,600人まで縮小、その後双方は、段階的に縮小する計画だった。
▼シリア:約200人
米軍駐留は2015年、特殊作戦軍の50人から始まり、2017年には2,000人まで増えていた。米軍と、クルド人と現地アラブ 人からなるシリア民主軍(SDF)はラッカを事実上の首都としていたイスラム過激派「イスラム国」と戦った。
「イスラム国」が壊滅する前の2018年12月、トランプ氏は数回にわたる米軍の撤退命令の最初を発令した。一方、国防総省は 約1千人の米軍撤退と、残りの米軍をシリア北東部の国境地域に展開する計画を実行しようとしていた。
最近、トランプ氏は残った200人の特殊作戦軍部隊をシリア南部のヨルダン国境近くの拠点に残留させ、残りの米軍のシリア 撤退 を発令した。一部残留の理由を「イスラム国」の残党と戦うためと、シリア東部の秘密油田数か所にシリア政府軍とロシア の専門 家が入るのを防ぐためだと説明した。
一方、先週、命令によってシリア北部を離れた大部分の米軍は、米国への帰国はせず、イラク西部に移駐した。現在各国に駐 留している米軍は以下の通りー
▼イラク:約6,000人 (以下略)
▼サウジアラビア及び他のペルシャ湾岸諸国:米国は常時、ヨルダンからオマーンに至るペルシャ湾岸地域に、45、000~65, 000人の米軍を配置していた。
さらに今年5月以来、イランの攻撃・挑発に対応し、米国防総省は、サウジアラビアへの3,500人をはじめ、14,000人の米 軍部隊を増強した。これらの米軍部隊には、空挺部隊、早期警戒機部隊、海上パトロール機部隊、パトリオット・ミサイル防衛隊、 B52爆撃機部隊、空母攻撃群、武装リーパー無人機部隊、技術支援部隊が含まれている。
▼アフリカ:6,000~7,000人 (以下略)
▼日本と韓国:約78,000人
第2次大戦と朝鮮戦争以来、米国はアジアに大きな軍事力を維持してきた。韓国には28,000人以上の米軍が駐留している。 その多くが家族と共に住んでいる。昨年以来、米国と韓国は、北朝鮮への譲歩として大きな合同軍事演習を行っていないが、よ り小さな演習は行っている。
日本では、全国でおよそ2ダースの基地に、約50,000人の部隊を維持している。そのうち約25,000人が沖縄に駐留してい る。米兵や基地関係者が犯した暴力行為が長年、ワシントンと東京のあいだの摩擦の原因になってきた。
▼NATO諸国:35,000人以上(以下略)
▼それ以外:2,000人以上 (了)
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