本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(241)
- 2019年 11月 10日
- 評論・紹介・意見
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失敗の本質
「明治維新以降の日本人」については、基本的に、「明治維新から第二次世界大戦の敗戦までの期間」と、「戦後から現在までの期間」に大別されるものと考えている。そして、どちらの場合にも、「前半」と「後半」に分かれる状況を想定しているが、興味深い点は、後半の部分が、前半と様変わりになる状況である。つまり、前半は、驚くほどに輝いていたものが、後半では、「失敗の本質」という本に書かれているように、別人のような状態に変化する状況のことである。
より具体的には、「明治維新(1868年)」から「日露戦争(1905年に終了)」の期間が「前半の前半」に相当するものと考えているが、この時には、ご存知のとおりに、「西洋の列強に追いつき、追い越せ」という「明確な目標」が存在したことも理解できるのである。つまり、既に存在する商品や技術を、海外から導入することが主な目的であり、この時に重要な役割を果たしのが、「速い頭脳の持ち主」という「すでに答えが存在する問題を、広く、かつ、正確に答えることができる人物」だったのである。
しかし、「1931年の満州事変」の頃には「国内の状況」が変化しており、すでに、「日本は神の国だから、決して、戦争に負けるはずがない」というような「根拠のない神話」が成立していたものと考えられるのである。別の言葉では、「軍事面において列強の仲間入りをした」というような認識のもとに「八紘一宇」というスローガンを掲げ、「帝国主義国家」としての行動を始めたものと考えられるのである。
つまり、前例のない「未知の局面」に入ったものと思われるが、このような状況下で必要な人材は、「強い頭脳の持ち主」という「答えのない問題を、粘り強く考え続ける人材」とも言えるのである。しかし、実際には、「後半部分においても、速い頭脳の持ち主たちが、前例主義に則り、何度も同じ間違いを繰り返した状況」だったようだが、注目すべき点は、「戦後の日本」においても、「経済戦争」において、同様の展開となっている可能性である。
具体的には、「1980年前後」までは、「世界的にも稀な高度経済成長」を達成したものの、その後は、再度、「官僚主義」がはびこり、結果として、「未知の局面」に対して有効な手段が取れなくなった状況のことである。そして、結局は、「異次元の金融緩和」という典型的な「通貨の堕落政策」を実施したわけだが、このことは、「神風特攻隊」や「大本営発表」のような「自殺的行為」に走った状況を想起させるとともに、現在では、「金融敗戦」が近付いている段階のようにも感じている次第である。(2019.10.9)
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怒りの国連演説
「グレタ・トゥーンベリさんの国連演説」については、大きな衝撃を受けるとともに、「裸の王様」の物語における「少年」を思い出した状況でもあった。つまり、今回の演説は、「大人たちが、どれほど愚かな行為を行っているのか?」を痛切に警告したものと思われるが、この点については、「9月と10月に日本を襲った、未曽有の規模での台風」などにより、「地球温暖化の問題」は見事に証明されたものと感じている。別の言葉では、「お金や地位、あるいは、名誉」などに縛られた結果として、「地球を破壊するような行為を取っている現代人」に対して、強烈な批判となった出来事のようにも感じられたのである。
また、この点に関しては、「10月1日付けのFT紙(ファイナンシャルタイムス)」で、「ジリアン・テッド氏」が、「金融市場に気候変動の影 」という記事を掲載し、「気候変動が、金融市場に与える影響」をコメントしている。具体的には、「大型ハリケーンによる被害が増えている米フロリダ州などの沿岸地域は、金融機関、保険会社、住宅所有者に資産価格のショックをもたらす恐れがある」というものであり、このことは、「スペインやフランス南部、ギリシャ、イタリアなど、干ばつの増加が信じがたいほどに予想されている場所も同様である」とコメントされているのである。
しかも、よりショックな点は、「金融システムに与える悪影響」を指摘している事実でもあるが、実際には、私と同様に、「市場に急激なショックが発生する可能性」を憂慮しているのである。具体的には、「金融業界と政策立案者が、10年以上前に住宅のサブプライムローン(信用力の低い層への融資)がもたらす危険を大半の投資家が理解できなかったのと同様の構造的パターンに陥っている可能性」と指摘されているが、実際には、以前から申し上げているように、「国債価格の世界的な大暴落」の可能性と、「その背後に存在するデリバティブのバブル」のことである。
つまり、「過去10年余り」の期間は、「中央銀行のバランスシート」を大膨張させることにより、「金利の急騰」や「金融システムの崩壊」を防ぐことが可能な状況だったものと考えている。しかし、その結果として発生した現象は、「債務の宴」と呼ばれるような「過剰消費」や、あるいは、今回のような「地球温暖化」であり、現在では、この点に対して、世界中の人々が、根本的な原因に気付き始めているのである。別の言葉では、「王様」という権力者が「裸でパレードする」というような無謀な政策を実施している可能性に対して、世界中の人々が、「子供のような素直な目」を持ち始めたものと考えているが、この点については、たいへん近い将来に、答えが出るものと感じている。(2019.10.14)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9164:191110〕
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