唯一の隣国との友好関係を取り戻そう - 韓国がGSOMIA破棄を「停止」・WTO提訴も中断 最も積極的だった朝日の報道 -
- 2019年 11月 26日
- 評論・紹介・意見
- 坂井定雄韓国
文在寅大統領率いる韓国政府は23日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄通告を、発効前日に「停止」し、日本から韓国への半導体など3品目の輸出手続き煩雑化に対するWTO(世界貿易機関)への提訴を停止すると発表した。まずはよかった。米国政府の両政府への精力的な調停工作が功を奏した。こんご両国は、昨年来の両国関係悪化の直接的な原因となった、日本支配下の徴用工への補償問題を“棚上げ”などで解決し(日本政府は徴用工問題への報復とは言わず、韓国側の貿易管理に問題があるための制限措置と主張)、日本側は輸出手続きを元通り正常化しなければならない。
今回の問題でも、安倍政権と一部の民放番組、週刊誌は、反韓国宣伝・扇動に狂奔した、安倍政権が対韓政策を修正、転換できるかどうか。中国、ロシアの2大国、北朝鮮に対して、日本、韓国と同盟関係にある米国では、自国の利益のみを優先するトランプ政権がますます横暴になっている。今回は、米国の戦略上、日韓関係でのGSOMIAの維持が極めて重要だから、米政府は解決に尽力した。日本政府は自国の安全、経済的繁栄のために、韓国との友好関係を、早急に改善する努力をすべきだ。
今回の韓国政府によるGSOMIA破棄、破棄「停止」問題の新聞報道では、朝日新聞の報道が最も積極的で、多くの紙面を埋めたと思う。韓国がGOSMIA失効期限前日の22日に一転し、文在寅大統領府が「効力停止」を発表した翌日の23日、朝日新聞の報道は1面「GOSMIA一転継続―韓国が破棄を「停止」―WTO提訴も中断」、2面の「土壇場文政権が軟化」、12面の社説「日韓情報協定―関係改善の契機とせよ」だった。
ところが翌24日(日)の紙面は次のような構成で、いわば“朝日の全力投球”
1面 日韓主脳会談 来月で調整、外相会談 連携の重要性確認
3面 失効回避の裏 米が「圧力」
「GOSMIA維持 日韓に働きかけ」
4面 GOSMIA継続 韓国厳しい見方も
考/論 元徴用工含まぬ合意 両国は対話を(趙太庸・韓国外交省・元第1次官)
8面 社説余滴(箱田哲也)日韓、米国頼みのたそがれ
31面 ナショナリズムの迷宮 すれ違う日韓(下)
両立できぬ「歴史の物語」
日韓 譲れない自国への誇り
根深い近親憎悪
すでにお読みの方も多いとは思いますが、ここでは、23日の朝日社説を再録します。
(社説)日韓情報協定 関係改善の契機とせよ
日韓の安全に資する協定が、かろうじて救われた。ひとまず安堵(あんど)できても、問題の根本は手つかずだ。理不尽な事態を繰り返さないための健全な関係回復に本腰を入れるべきだ。
きょう失効を免れたのは、GSOMIA(ジーソミア)と呼ばれる政府間の取り決めである。両国が軍事情報を共有するための協定で、文在寅(ムンジェイン)政権は寸前のところで破棄を撤回すると発表した。
日米韓は、この協定を主要な回路の一つにして、安全保障の情報をやりとりしている。破棄となれば、共同歩調に悪影響が出ることが懸念されていた。
北朝鮮の不穏な動きが続くなかで、日韓関係がここまでこじれたのは不毛というほかない。今回の失効回避を機に、両政府は国民の実利を損ねる負の連鎖を止めなければならない。
韓国側が8月に協定の破棄通告をしたのは、日本による輸出規制強化への対抗策だった。きのうの発表でも、今後いつでも破棄できると強調し、日本側に相応の対応を求めた。
だが、いくら韓国内の対日世論が硬化したからといって、安全にかかわる問題を取引材料にすること自体に無理がある。
北朝鮮に加え、中国やロシアも日韓関係の悪化に乗じて軍事的な挑発行動に出ている。内外の現実を慎重に考慮すれば破棄の選択肢はなかっただろう。
一方、日本政府にも関係改善への重い責任がある。7月に唐突に打ち出した韓国向け輸出の規制強化は、昨年来の徴用工問題をめぐる事実上の報復にほかならない。
韓国では、製造業で不安が広がっただけでなく、日本による「強圧」に対する世論の反感を増幅させた。韓国からの訪日客の激減は日本の観光地を悩ましているほか、さまざまな市民交流も滞っている。
文政権が誤った対抗措置のエスカレートを踏みとどまった以上、日本政府も理性的な思考に立ち返るべきである。輸出規制をめぐる協議を真摯(しんし)に進めて、強化措置を撤回すべきだ。
いまの両国間に横たわる問題の本質は、日本企業に賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決への対応である。今回図らずも芽生えた両政府間の危機管理の対話を発展させて、徴用工問題を打開する枠組みづくりを急がねばならない。
文氏も安倍首相も、相手との妥協を政治的な損失ととらえる考え方から脱すべきだ。たとえ不人気であっても、国民の未来を見すえた外交の価値を説くのが政治家の務めである。
両国関係の土台である1965年の日韓請求権協定を守り、両国関係全般を本来の軌道に戻す一歩を踏み出してほしい。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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