途上国の独裁者か、ファシストか
- 2019年 12月 22日
- 評論・紹介・意見
- 村上良太
ネットでは異形の安倍政権が途上国の独裁者型という説と、ファシストであるという説が飛び交っています。筆者は途上国の独裁者型の要素はあるとしても、ファシズムの特徴を備えていることからファシストであると考えています。その理由を過去のファシズムの定説に沿ってあげたいと思います。
1)大衆運動の神輿に乗っている
ファシズムには「運動」の面が基本構造としてあります。ナチスの場合は第一次大戦後にドイツを縛り付けたベルサイユ体制の破棄でした。安倍首相の場合は第二次大戦後に日本を「縛り付けた」ポツダム宣言と憲法9条を特徴とする新憲法の否定があります。日本会議と言う改憲団体の神輿に乗った大衆運動の頂点に安倍首相は立っています。
2)戦争体制を基盤としている
安倍首相が2015年に強行採決で通した安保法制は憲法9条に穴をあけ、集団的自衛権のもとで海外で参戦できるようになりました。そして存立危機自体となると、国民を総動員できる制度を築きました。ファシズムとは戦争のために国内のリソースを総動員できるシステムです。
3)憲法を解体している
憲法は改正こそしていませんが、一夜にして集団的自衛権を認めると言う戦後の解釈を覆し、また特定秘密保護法のような憲法違反の法律を作るなど、憲法を解体しているのが安倍首相です。ファシズムは「運動体」であり、硬性憲法を嫌い、時局に沿って好き放題に法律を行政府で制定するのが好きな体制です。そして改憲でも行政府の独裁を可能にする全権委任法を制定できるようにしようとしています。これは災害や戦争、内乱などの緊急時に国会を閉鎖し、すべての権限を行政府の長が握ることができるシステムです。連発している「閣議決定」は将来、改憲した後、好き勝手に法律を連発するための予行演習と見るべきでしょう。
4)国民を敵と味方に二分し、敵は殲滅する
安倍首相は自分を批判する日本人を敵として見ています。秋葉原での演説で明らかになったことです。見方には手厚い支援を行い、敵は徹底的に干し上げています。籠池夫妻への仕打ちはその象徴です。ファシズムは秘密警察を組織し、敵に関する情報を密告させることで恐怖を駆り立て、それを求心力にしています。「いつ密告されるかわからない」恐怖のシステムがファシズムです。ナチスは自らの党内でも粛清を繰り返すことで総統への忠誠を駆り立てました。粛清の基準がわからないことや時局に応じてコロコロ変わることも恐怖を高めたのです。
これらの特徴を考えてみると、途上国の独裁者のクローニズムとも似ているものの、ファシズムの枢軸国が仕掛けた第二次大戦を正当化し、海外で戦争できる国造りのための改憲と言う大衆運動を基盤にしていることは間違いなく、思想的にも運動的にも政治スタイルとしてもファシズムの特徴を色濃く持っていると思います。とはいえ、選挙があるとか、司法制度が一応あるとか、国会が一応開かれているとか、形だけは民主国家の体をなしています。これはG7に留まるための見せかけです。ファシズム国家の背後には巨大企業が控えているため、グローバリゼーションの時代に「国連よさらば」とは言いづらくなっているのです。左翼や労働組合を無力化するためナチスの台頭を許したのが当時のドイツの産業界でした。ユダヤ人虐殺とか、強制収容所がなかったとしても、21世紀のファシズムは20世紀と違っていてファシストを利用しているグローバルな企業の「領土」(市場)拡張運動がその政治のモードを決めているのだと思います。大切なことはその本質を見定めることだと思っています。
村上良太
初出:「日刊べリタ」2019.12.17から許可を得て転載
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〔opinion9288:191222〕
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