「令和」の元号はいらない、米軍基地もオスプレイもいらない!

著者: 加藤哲郎 かとうてつろう : 一橋大学名誉教授
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2019.4.1かと  4月1日は、世界的にはエイプリルフールです。由来については各国に諸説がありますが、現代日本にふさわしいのは、最も有力な、16世紀フランス起源説でしょう。曰く、<昔々、ヨーロッパの新年は3月25日で、4月1日まで春の祭りをしていました。しかし、1564フランスの絶対君主シャルル9世1月1日を新年にします。それに怒った民衆は、4月1日に「嘘の新年」とし、ばか騒ぎを始めました。この反発に納得いかないシャルル9世は、町で嘘の新年を祝っていた人々を逮捕し処刑してしまいました。この事件にショックを受けたフランス国民は、この事を忘れない為と、フランス王への抗議として、その後も毎年4月1日に「嘘の新年」として祝うようになったのが、エイプリルフールの始まりだと言われています>ーーこれも世界に溢れる偽情報・フェイクニュースとされかねませんから、今回の更新は、明日2日零時過ぎに行います。新元号は「令和」でしたーー漢字ペディアで見ても、「」の意味は、①いいつける。命じる。いいつけ。「令状」「命令」、 ②のり。きまり。おきて。「訓令」「法令」、 ③おさ。長官。「県令」、です。 ④よい。りっぱな。「令色」「令名」、はその後です。君主や政府の「命令」「訓令」で時間が仕切られ、「」が演出されるのは、まっぴらです。強固な支持基盤の日本会議系右翼・ナショナリストへの弁明として、中国の漢籍からではなく、日本の古典「万葉集」が出典に選ばれました。もっともそれにも、漢籍の典拠・タネ本がありました。他の候補名、「令和」起案者も、1日でほぼ特定されました。時の権力者の「安」「晋」が入らなかったことだけが、マスコミ「元号フィーバー」のなかでの、ささやかな救いでした。

かと もともと4月は、4年に一度の統一地方選挙が決まっていました。7月には参院選があります。しかし国会での政府による基本統計や公文書の改竄疑惑は、なぜかあわだだしい予算審議で、うやむやにされました。沖縄では、県民投票の民意が全く無視され、軟弱地盤の米軍辺野古基地埋め立てが続けられています。絶滅寸前のジュゴンの死骸が見つかりました。4月は沖縄では1945年沖縄戦を想起する季節です。今朝の東京新聞スクープは、防衛省が宮古島住民を欺して弾薬庫を作った設計図偽造でした。「令和」騒動の最中に、あの悪名高い米軍機オスプレイが、伊丹空港に緊急着陸です。例(令!)によって「原因については申し上げられない」です。ましてや海外では、イギリスのBrexitが目前に迫り、アメリカでは気まぐれトランプが中東の火薬庫ゴラン高原のイスラエル主権を認めて国連決議違反の暴挙、米中・米朝関係も波乱含みですが、日本の出番はなし。日韓関係は更に深刻で、ヘイトスピーチの厚生省官僚が韓国の空港で泥酔トラブルで現行犯逮捕される始末。4月−7月の「選挙の季節」に向けて用意した外交の目玉、ロシアとの領土交渉は暗礁にのりあげ、北朝鮮との拉致問題交渉も遠のくばかり。そして、最も深刻なのは、内閣支持率維持の生命線である「アベノミクス」の化けの皮が次々に剥がれて、実質賃金低下ばかりでなく、景気後退も深刻で、消費税増税が政治的ギャンブルになりそうな様相。その四面楚歌のなかで、政権維持のためのイベントに使われているのが、この象徴天皇制代替わり・改元騒動であるように思われてなりません。5月の10連休から11月の神道儀式「大嘗祭」まで、広い意味での天皇制の政治利用が続きます。キリスト教団体が安倍首相に憲法違反の疑義を申し立て、抗議したのは当然です。

かと それにしても、この間のマスコミの新元号フィーバー、特に公共放送NHKのプロパガンダ・官邸迎合は異様です。夜9時のニュースを安倍首相がハイジャックし、オスプレイ不時着は、ついに報じられませんでした。一方で中高年「引きこもり」失業者61万人が放置されたまま、今日から外国人単純労働者35万人の受入が始まりました。準備も受入環境づくりも全く不十分です。簡単に報じられたが、すぐに忘れられたニュース。3月20日に発表された国連の「世界幸福度ランキング」。世界の156カ国中、日本は58位でした。無論、軒並み上位の北欧諸国ばかりでなく、先進資本主義国では最下位、コソボ、ルーマニアよりも下位で、ジャマイカ、ホンジュラス、カザフスタン並みです。2018年の54位から4つ順位を下げ、アジアでは25位台湾、34位シンガポール、52位タイ、54位韓国にも追いぬかれました。さらに深刻なのは、不透明な世界経済のなかでの「ジャパン・リスク」。これも「令和」の狂騒にかき消されましたが、4月1日の日銀短観は6年3か月ぶりの大幅な景況悪化。「アベノミクスの失敗」ばかりでなく、福島原発事故の81兆円コスト巨大地震被害見積もり100兆円が世界の投資家に知られて、100兆円予算の効果が国債暴落で帳消しになる悪夢。「ファシズムの初期症候」は、深刻化しています。これは、エイプリルフールではありません。「主権者たる国民」の選択が問われています。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html

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