2016.9.15 かつて東京都庁が「伏魔殿」とよばれたことが、幾度かありました。戦前もそうでしたが、戦後でも1955年、安井誠一郎知事のもとでの「七不思議」とよばれた、戦後復興過程での東京駅八重洲口開発、三原橋・数寄屋橋界隈の埋め立てに都庁の役人と業者が絡んだ汚職、『都政新報』に暴露され、東京地検が捜査に入りました。つづく東龍太郎都政では、高度経済成長から東京オリンピックの開発ラッシュ、都庁官僚の天下りと大企業との癒着・腐敗が、佐藤内閣期国政の「黒い霧事件」と重なり、1967年の美濃部亮吉革新都政の誕生を産みました。美濃部都政の福祉重視による財政難が攻撃され、旧内務官僚の鈴木俊一知事を就任させたといいますが、そのあたりから、もっと構造的で大規模な、都庁移転、臨海副都心や国家的・国際的イベントがらみの再開発という、巨大利権ビジネスの舞台が造成されました。そこに国政・都政政治家や大手ゼネコン・銀行・不動産業、電通・大メディアが群がり、石原慎太郎都政からは築地市場豊洲移転、東京オリンピック関連施設が「伏魔殿」の温床となりました。福島原発事故後も再稼働に固執する「原子力ムラ」と同じように、首都直下地震や液状化問題さえビジネス・チャンスにするのが、新自由主義時代の「伏魔殿」です。 それが、リオ・オリンピック、舛添公私混同都政後の小池都知事当選直後に
、発火しました。もともと
東京ガス工場跡地という生鮮食品を扱うには最悪の地盤に、いまや東京観光の目玉となった
築地市場を豊洲に移転するための
土壌汚染対策の手抜き工事が発覚し、連日テレビのワイドショーを賑わす
スキャンダルになっています。
盛り土の代わりに
コンクリート・ボックスでコスト削減・工期短縮は、
東京新聞スクープによると、どうやら「
だまされた」などと言ってた
石原知事側近のアイディアらしく、「
食の安全・安心」にとって、重大な問題です。舛添都政が続けば11月に移転する予定だった「
豊洲市場」は、完全に宙に浮きました。関連する
東京オリンピック用道路工事や
交通網計画も含め、
真相解明と
責任追及を進め、見直すべきでしょう。より重要なのは、
盛り土の上に建つはずだった
主要3施設の建設工事の入札落札率が、どれも1社のみの入札で99.9%だった問題。
落札・受注したのは
清水・大成・鹿島を中心にした大手ゼネコン共同企業体。オリンピック工事の多くにも絡む、「伏魔殿」利権の常連です。
オリンピック・カヌー会場「海の森水上競技場」も、落札率99.9%で大成建設に受注され、「
官製談合」が疑われています。そこを追究していけば、
元首相や「都議会のドン」の疑惑 に、肉薄できます。情報公開と、調査ジャーナリズムの出番です。
ウェブ上で、こんな記事を見つけました。「かつて東京新聞は、安井、東都政の伏魔殿を報道せず、大量の読者を失いました。そして中日新聞に買収されました。その反省が[最近の]東京新聞に蘇ったのだと私は感じていました。この東京新聞の決意を無視するならば、日本の報道の自由は衰弱するでしょう。」これは、すべてのメディアが肝に銘じ、心がけるべきでしょう。でも日本の「パナマ文書」報道は尻切れで、東京オリンピック誘致裏金疑惑は、「違法性なし」というJOCの手抜き調査結果をそのまま報道し、幕引きにされかねない調査報道の不足。そして、台風災害や北朝鮮核実験を背景にした安倍内閣支持率6割、それに乗じた防衛予算の増額、「陸上自衛隊情報学校」新設。 かの「陸軍中野学校」の復活ですが、無論IT時代に即して、「ネット情報をチェックして、自衛隊が自分たちの意に沿わない市民の情報をチェック、監視する」システムの構築です。これと「共謀罪」が結びつくと……、北朝鮮や中国の言論状況を嗤うことはできません。対岸の火事ではないのです。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://members.jcom.home.ne.jp/tekato/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3653:160917〕