【俳文】札幌便り(14)

著者: 木村洋平 きむらようへい : 翻訳家、作家、アイデア・ライター
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12月を迎えた。東京はいままでになく暖かく感じるが、やっと身体が札幌に慣れてきたためだろう。季節が二ヶ月分はちがう。

東京のアスファルトにも霜降りて

札幌では雪が降っているだろう。

冬晴れや白髪吹き上げそよぐ風
霰降る晴れ間より訃報のように
寒風のなかでお菓子をかじる駅

おじいさんのなでつけた白髪がふわっと舞うのも、漢詩の趣を覚えるようで、自分の老年もこうだろうかと一瞬、我が事のように思われる。霰を訃報と喩えたのは、昨年の出来事がまだ心に残っていたからかもしれない。空っ風のホームでチョコ菓子をかじっていたのは、なぜだったか、よく覚えていない。

はるかなれコート羽織らぬふるさとも

季語の「コート」を羽織らぬでは、季語が台無しのようだが、これを詠むときにはすでに故郷を離れて羽織っている。北海道の空は、相変わらず色が薄く、東京の藍と、潤沢な絵の具で塗ったような色合いを持ち合わせていない。

柚子ひとついただきものの柚子湯かな

帰札したのが23日、冬至だった。

鳥が二羽雪野のうえの枝かすめ
山眠る裸の木々が抱く日差し

毎日のように暖かな日差しが降り注ぐ東京とちがって、ここでは山のうえに光のある時間が貴重だ。

聖樹見るハローワークの道すがら

そんなクリスマスの過ごし方。「紹介状」を一通もらって来た。

数え日や朝の珈琲落としけり

今年も数えることあとわずか。なにをするでもなく時が過ぎ、

夕月や仕事納めのカプチーノ

みなさま、おつかれさまです。我が家も小掃除に(大掃除というほど広くもないので)取りかかろうとしながら、まずは冷えた足先を温める。

とりあえず足湯にひたり春支度

なかなか進まない年越しの準備。

久方のワイン飲めるや小晦日

30日。

二杯目は友と交わせり大晦日

31日は、朝に一杯目の珈琲を落としたところ、友人から「二杯目を飲もう。」と声を掛けてもらった。夜には旭川へゆき、宿で年越しをする。チケットは手元にある。さて、旅支度をしよう。

どうぞ、よいお年をお迎えください。

初出:ブログ【珈琲ブレイク】http://idea-writer.blogspot.jp/2013/09/blog-post_27.html より許可を得て転載。

記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion4703:131231〕