ポール・ギャリコの『雪のひとひら』を読んでみましょう。雪のかけらの生涯を扱った物語、それは長めの童話のようです。雪のひとひらは、はるか上空で生まれ、地上へと降りてゆきました。 おかしなこと、と雪のひとひらは思いました
本文を読む木村洋平の執筆一覧
【俳文】札幌便り(17)
著者: 木村洋平東京にて三月を迎えた。初春の気に満ちている。 野に生えて苦み走りぬ春菊も 春菊の野生の苦みと、世を渡り単純でいられなくなる人間の様とが重なる。暖かい日に家のそばをそぞろ歩いて。 白梅のひとつらなりに伸び上がり みて
本文を読む『巨人たちの俳句:源内から荷風まで』を読む
著者: 木村洋平ちょっと変わった俳句の本。6人の巨人たちの俳句を紹介する。 小説家の永井荷風(ながいかふう)、社会主義者の堺利彦(さかいとしひこ)、民俗学者の南方熊楠(みなかたくまぐす)、禅僧の物外和尚(もつがいおしょう)、博物学者の平
本文を読む「雪の女王」とアンデルセンの生涯
著者: 木村洋平アンデルセンの童話は短いものが多いのですが、そのなかで長さでも内容のボリュームでもひときわ目立つのが「雪の女王」です。これは、「七つのお話からできている物語」と副題がつき、悪魔の話から始まります。 「ある日のこと、悪魔
本文を読む【俳文】札幌便り(16)
著者: 木村洋平二月四日の立春を迎えるも、円山公園では積雪が腰まで達していた。今年は雪が少ないと言われていたから、「これでやっと真冬だ」とかえってほっとする心地。 初午や白樺枝を天に寄す 今年の初午(はつうま)は二月四日で立春と同じ。い
本文を読む「本のカフェ」第一回のご報告
著者: 木村洋平「本のカフェ」とは、10人程度で集まり、3〜5人がひとり一冊本の紹介をしたのち、フリータイムをとって交流するという企画です。全体で3時間。第一回は東京、恵比寿で開催しました。そのときの記録です。 【スタート】恵比寿のカフ
本文を読む『リルケ詩集』を読んで
著者: 木村洋平リルケ(1875ー1926)の作風は、一見掴みづらいな、と思っていた。今回、ゆっくり読むことができて、少し明かりが差したと思う。(『リルケ詩集』富士川英郎訳、新潮文庫、1963年) 私が親しくし、兄弟のようにしている
本文を読む【俳文】札幌便り(15)
著者: 木村洋平汽車に乗って旭川へ来た。大晦日の暮れた街にイルミネーションが灯っている。たしか去年まではクリスマスで消灯されていたことを思うと、なんとなく明るい気分になる。とはいえ、人影はなく商店街も閉めきった店ばかりだ。 除夜の鐘どこ
本文を読む【エッセイ】話す言葉 木村洋平
著者: 木村洋平話すというのはとくべつのことです。ふだん、わたしたちは「話す」というのを「AさんとBさんのあいだで内容のあるやりとりをする」「2本の矢印が行き交う」ことのように想像します。けれども…… ——もし、世界で初めて言葉を
本文を読む【俳文】札幌便り(14)
著者: 木村洋平12月を迎えた。東京はいままでになく暖かく感じるが、やっと身体が札幌に慣れてきたためだろう。季節が二ヶ月分はちがう。 東京のアスファルトにも霜降りて 札幌では雪が降っているだろう。 冬晴れや白髪吹き上げそよぐ風 霰降る晴
本文を読む学芸員の眺める景色——山梨県立美術館の取材
著者: 木村洋平学芸員の眺める景色——山梨県立美術館の取材 木村洋平 先日、山梨県立美術館で働く「しまりん」さんにお話を伺って来ました。彼女は学芸員です。学芸員とはどういう仕事なのか。現場としての美術館はどんなものか。近頃はやりの「キュ
本文を読む【俳文】札幌便り(13)
著者: 木村洋平立派な洋梨を見つけて色も形も申し分なく、見ようによっては少しいびつなのもおかしとて家に持ち帰り切るけれども、じゃりと言うばかりで味の淡泊なること甚だし。 洋梨の切るまで味のわからなさ 同じように、はと麦茶もいい加減
本文を読む【俳文】札幌便り(12)
著者: 木村洋平本の執筆が佳境を迎えて。 書き上げても書き上げても青蜜柑 「分け入っても分け入っても青い山」(種田山頭火)の真似をしてみるが、これはきちんと熟さないと困る。 旅に出でなんとす紅葉かつ散れば 丸いのもハートの型も紅葉か
本文を読むはてしない物語のふたつの読み方――ファンタージエンの友達
著者: 木村洋平はてしない物語には、ふたつの読み方があると思う。焦点は後半だ。ここは文学的で、思想的になっているが、奥底には平明なものがあると思う。それをどう読むか。 『はてしない物語』はミヒャエル・エンデの作品で、児童文学として日本で
本文を読む【映画を読む】クロワッサンで朝食を
著者: 木村洋平フランス映画「クロワッサンで朝食を」を観て来た。シンプルだけれど、深みのある映画だ。この映画を「読解」してみよう。※ 以下では、ストーリーの詳細から結末まで触れるので、こ れから観にゆかれる方は読まないことをおすすめしま
本文を読むFacebookの辞表
著者: 木村洋平最近、Facebookのアカウントを削除した。僕はもともと熱心なユーザーではなかったが、やめるに当たっては考えもしたので、そのわけを記してみたい。 最近、Facebookには馴染んだようにさえ思っていた。はじめの頃は、実
本文を読む【俳文】札幌便り(11)
著者: 木村洋平誰もいない秋夕焼の広場かな 雑木林の向こうは色に染まって。この秋は空から降りてくる、だんだんに。 数えればひふみよいくつ星月夜 なんの日か秋桜みんな咲いている 都会の夜空は星も見つからないようでいて、探せば増える。「今日
本文を読むBroken English
著者: 木村洋平表題のブロークン・イングリッシュとは、でたらめな英語、あやふやな、はっきりしない英語のこと。 いま、グローバリゼーションとともに世界中で英語が話され、学ばれている。英語の一極支配、英語への一極集中だ。だが、他方で、とりあ
本文を読むひびわれを埋める仕事
著者: 木村洋平世の中にはたくさんの仕事がある、それらは必要なことの領域を覆い尽くそうとしている。とりわけ、資本主義の力によって、お金になる=ビジネスとして成立する、という仕方で、持続可能なようになされる。 ところが、これは誰でもそう感
本文を読む札幌便り(10)
著者: 木村洋平北海道の七夕は8月7日にやってくる。もっとも、函館は例外で7月7日らしい。商業施設のなかでは笹が飾られて、誰でも短冊をかけられる。子供は思い思いのことを書く。 プリキュアになれますように星祭り 「プリキュア」は日曜日
本文を読む爪切りのあちら側、こちら側
著者: 木村洋平爪切り、というのは、100円でも売っているあの爪切りのことで、パチパチ爪を切る道具のことなのだが、今回は、旅と爪切りの話をしたい。 僕は、長い旅に出ることがたびたび、あった。いまは、2泊3日くらいが多いが、以前は、10日
本文を読む【俳文】札幌便り(8)
著者: 木村洋平松落葉ベンチのうえで寝るひとも 五月、長く雪に閉ざされていた円山公園が、茶色い大地を剥き出しにしているのには、力強い季節の移りゆきを感じる。 誰(たれ)よりも遅くて蝦夷の桜かな 日本でおそらく一番、遅い桜はエゾヤマザクラ
本文を読むネバーランドから帰ってくる ―おとなの芸術家
著者: 木村洋平芸術家には、浮き世離れしたひとも多い。彼らの仕事は、ネバーランドとこちらの世界を結ぶことなのだ……。 ネバーランドは、ディズニーの「ピーターパン」に出てくる子供たちの国だ。そこでは、みんなが永遠の少年、少女。 僕らは、1
本文を読む【俳文】札幌便り(6)
著者: 木村洋平茫漠とした気持ちで迎える三月。まだ雪は積もったまま、これより積もることはないものの、溶けゆく四月までは間があります。 二月尽はじまるものもないままに ブーツを履いて出掛け、ひとと行き交うときにはどちらか雪の壁に寄ります。
本文を読む【俳文】札幌便り(7)
著者: 木村洋平雪解けの松葉の先の雫かな 円山公園はいまだに腰まで雪があった。四月の初め。帰り道では、 凍て山の向こうにありぬ春夕焼 稜線のうえには春の夕焼けが穏やかに、その下は薄暗く、白雪と枯れ木の厳しい表情を湛えた山。 凍てゆるみキ
本文を読むハルキ風イケメンになる10の方法
著者: 木村洋平巷でひそかにブームになっている(?)ハルキ風イケメン。村上春樹の主人公は、いつもある特徴をもっています。彼らは、テレビのバラエティー番組に出てくるようなバブリーなイケメンではなく、そこからやや距離を置いた知性派のイケメン
本文を読む【書評】『狼と香辛料』~中世ヨーロッパ商人の時代小説
著者: 木村洋平『狼と香辛料』は、ファンタジー世界を舞台にしたライトノベルで、2006年の第1巻は著者のデビュー作でもある。全17巻で完結し、シリーズ累計400万部を売り上げている。 今回は、第1巻から第5巻までを面白く読んだ。テレビア
本文を読むエッセイとはなにか
著者: 木村洋平昔、天声人語だったと思うが、随筆についてこんな文章を引用していた。「欧米におけるエッセイと、日本の随筆は少し異なるようだ。日本の随筆は、話題の中心から離れたところで始まり、なかなか中心に触れずに、その回りを遠巻きに回るよ
本文を読む池内紀先生のフクロウ
著者: 木村洋平ある日、一枚の絵はがきが舞い込んだ。手書きのかわいいイラストが添えられている。フクロウだったように記憶しているが、さっさっとした流麗な線ではなく、ふにゃふにゃとした輪郭で描いてあったから、なんの動物だか、一見、わからなか
本文を読む「震災忌」という季語を使うこと
著者: 木村洋平3月11日の朝、ある俳人の方が、「東日本大震災の震災忌」というものが遠からず、季語になるだろう、と書いていた。阪神淡路大震災や新潟の大地震もあるから、どの「震災忌」なのか、書き分けるのは難しいが、なんらかの形で、日本の伝
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