いまこそ What is past is prologue をかみしめて!
◆2017.5.1 戦争が近づいています。より正確には、戦争になる危険性が、強まっています。4月後半の2週間は、いつ東アジアで武力衝突が始まってもおかしくない、緊迫した国際情勢でした。北朝鮮の核実験・ミサイルをめぐって、アメリカ、中国、ロシアの情報戦・サイバー戦を交えた大国間駆け引き、米韓・米日の軍事的合同演習・訓練、但しもっとも被害が出そうな韓国は大統領選挙の真っ最中、同じく射程内の日本は、まるで臨戦態勢。政府が「国民保護ポータルサイト」でミサイル対処法伝授、秋田で住民避難訓練、東京の地下鉄が止まり、海上自衛隊は、安保法=戦争法の「米艦防護」を初めて実行、陸自の「かけつけ警護」と共に、脱「専守防衛」の第一歩です。もっとも、その最中にロシア・イギリスを訪れた安倍首相が、国内での森友問題再燃、昭恵夫人問題、閣僚問題発言追及の勢いをそらせる「チャンス」としているのは見え見え。訪問先の公営放送BBC曰く、「北朝鮮の脅威増大、安倍首相には有益」と。こういう時こそ、日本政府は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という精神で行動すべきなのに、安倍内閣は、真逆の方向に動こうとしています。不慮の事態を警戒しつつ、国内での戦争反対・平和憲法堅持の声を高めていかなければ。
◆フランス大統領選では、第一回投票で、伝統的二大政党が敗れました。イギリスBrexit、アメリカ・トランプ大統領当選に見られた、脱グローバリズムと移民・難民排斥が入り交じった、ナショナリズムとポピュリズムの波は続いています。そんな世界情勢のなかで、まだ方向性の定まらぬトランプ政権にべったりの安倍内閣の存在は、行動パターンが予測しやすく、日本国民にとっては、現実的危険です。米軍基地や原発に加えて、船や港も、北朝鮮にとっての格好の標的になりえます。アメリカへの直撃でも、韓国との地上戦でもない、しかし対米直接交渉を引き出すためのアメリカへの圧力となる一撃目標、それは、動く米空母カールビンソンよりも、金正恩にとっての動かない巨大米軍基地、ニッポンかもしれません。挑発的な北朝鮮と同様に、武力行使の可能性を否定していない気まぐれトランプが、そこでどのような判断を下すかは、誰も予測できません。「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない 」とすれば、日本政府は、積極的に戦争回避の外交努力において、「国際社会において、名誉ある地位」を追求すべきなのですが。
◆そんな東アジアの緊張を口実に、 国内では、監視国家への道が強まっています。東京都立高校の6割が、生徒の髪の毛の「地毛証明書」を要求しているという、きな臭いニュース。いやスノーデンの証言に従えば、アメリカの世界支配に提供し資するための、日本の監視社会化・情報統制が強まっています。具体的犯罪行為ではなく、メールからラインまで、内面の自由をも透視・監視して罰する、テロ対策法という名の共謀罪法案は、現代の治安維持法です。「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」という民主主義の基本原理が、危うくなります。ナチス・ドイツのもとでの監視国家と思想弾圧を体験し、強制収容所から生還したマルティン・ニーメラー神父の言葉が、いま、日本で想起される必要があります。
ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は共産主義者ではなかったから
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった
私は社会民主主義ではなかったから
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は労働組合員ではなかったから
そして、彼らが私を攻撃したとき
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった
◆「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」歴史が、いまこそ学ばれなければなりません。アメリカ国立公文書館本館の玄関には、「The heritage of the past is the seed that brings forth the harvest of the future.(過去の遺産は将来の収穫をもたらす種子である) 」とあります。 そして、入り口そばの石像に刻まれた、シェイクスピアの言葉、「What is past is prologue ( 過去は前触れである)」。私たちにとっては、さしあたり、治安維持法が普通選挙法と共に成立した1925年から、満州「事変」に始まるアジア太平洋戦争、敗戦と占領、日本国憲法、朝鮮戦争、サンフランシスコ講和条約と日米安保条約による米軍基地存続が一緒になった独立の事情。戦争は、時に景気回復のテコになります。朝鮮戦争特需と日本の高度経済成長の関係も、いま再び学ぶ意味のある問題です。私の情報戦の視角からの旧満州731細菌戦部隊の隠蔽・免責・復権過程についての研究も、ABC兵器(核生物化学兵器)の実戦使用や、「科学者・技術者の社会的責任」の問題再浮上で、にわかにアクチュアルになってきました。予告した大部の書物『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊・二木秀雄と「政界ジープ」』は、すでにアマゾンで予約できますが、5月25日に花伝社から刊行されます。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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