昨日(3月2日)の「首相の改憲意欲発言」が各紙に大きく報道されている。参院予算委員会での答弁に際してのもの。安倍が何を口にしたかもさることながら、「安倍首相『改憲、在任中に』」と各紙が揃って報じたことが、実は大きなニュースとしてインパクトのあることなのだ。
たとえば朝日。「18年9月までを念頭」として、「安倍晋三首相は2日の参院予算委員会で、憲法改正について『私の在任中に成し遂げたいと考えている』と述べ、強い意欲を示した。夏の参院選で改憲勢力が3分の2を確保し、2018年9月までの自民党総裁任期を念頭に国会発議と国民投票による実現をめざす考えを示したものだ。」
たとえば毎日新聞。「『在任中改憲』首相表明」「参院選争点化確実」「衆院と同日選も視野」と見出しを打った。これだけで、政局へのインパクトは大きい。
もちろん、各紙とも「首相は同時に『我が党だけで(発議に必要な)3分の2を(衆参で)それぞれ獲得することは不可能に近い。与党、さらに他の党の協力もいただかなければ難しい』とも語り、改憲に向けたハードルが高いとの認識も示した。」との報道もしている。が、こちらは飽くまで付け足しでしかない。刺身のつまほどの存在感もない。改憲のスケジュールについて、「在任中」すなわち、「2018年9月まで」と期限を切ったことが、重要なのだ。
毎日は、年頭以来の安倍改憲発言を次のようにまとめている。
1月4日 「憲法改正はこれまで同様、参院選でしっかり訴えていく。訴えを通じて国民的な議論を深めていきたい」(年頭記者会見)
1月10日 「与党だけで(致憲発議に必要な衆参各院の)3分の2は難しい。おおさか維新もそうだが改憲に前向きな党もある。改憲を考えている責任感の強い人たちと3分の2を構成していきたい」(NHK番組、収録は9日)
1月21日 「いよいよ、どの条項を改正すべきかという現実的な段階に移ってきた。新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民的な議論、理解が深まるよう努めたい」(参院決算委員会)
3月1日「(自民党の憲法改正)草案には自衛隊を国防軍と位置付ける記述がある。私は自民党総裁だ。草案と私が違うことはあり得ない」(衆院予算委員会)
3月2日「自民党だけではなく、他党の協力もなければ(衆参での3分の2の獲得は)難しい。私も在任中に成し遂げたいと考えているが、そういう状況がなければ不可能だろう」(参院予算委員会)
アベ発言をこう並べてみると、なるほど、彼の改憲への執念の緊迫度を感じざるをえない。やる気満々なのである。
とはいえ、必ずしも成算あってのものとは考えにくい。今、あらゆる世論調査が、「改憲ノー」の回答を示しているではないか。「任期中改憲」の発言は、安倍晋三の焦りの表れと言わざるを得ない。
しかし、焦りであろうと、成算なかろうと、無鉄砲アベは、猪突猛進する可能性が高い。7月参院選は重い闘いとなる。これからは、衆参両院の憲法審査会が議論の舞台となる。ここから目が離せなくない。
衆議院憲法審査会
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/index.htm
参議院憲法審査会
http://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/
明文改憲阻止の闘いがもう始まっている。その緒戦の参院選では、自民と公明、そしておおさか維新を加えた改憲勢力に議席を与えてはならない。選挙の結果が憲法の命運を決める。憲法の命運は国民の生存と平和に関わる。
なお、アベ政権が狙う最初の改憲項目は、緊急事態条項からと言われている。緊急事態条項を憲法に新設しようという改憲勢力のたくらみを、深く学ぼう。この分野であれば水島朝穂さん。本日(3月3日)の赤旗に水島さんのレクチャーが出ている。読み応え十分だ。そして下記の本格的なブログの記事も。
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2016/0125.html
これを学んで自分のものとし、周囲に訴えようではないか。
(2016年3月3日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2016.03.01より許可を得て転載 http://article9.jp/wordpress/?p=6495
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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