まず停戦、ガザ住民を虐殺から救え! -続いて封鎖解除とロケット攻撃中止の交渉を-

ガザにイスラエル軍が大規模侵攻を開始した7月8日から3週間。国連機関によると、パレスチナ人の死者は25日までに大部分が一般市民の870人で、うち子供が200人以上、女性が100人以上になった。5千人以上が負傷した。イスラエル側の死者は、ガザから発射されたロケット弾による一般市民の死者が2人、ガザでの戦闘で死んだ兵士が32人。イスラエル軍は航空機の爆撃、戦車砲の砲撃と踏み潰しを主力に、ガザの市街地を攻撃。赤十字の旗を掲げた病院や国連の旗を掲げ、住民の避難所となっている学校まで破壊した(病院18、学校120)。地上での掃討作戦を拡げるイスラエル軍に対して、イスラム組織ハマスが激しく抵抗、イ軍側にも犠牲者が続出している。一般市民の虐殺は、イスラエルへの抵抗を主張し続けるハマスを支持するガザ住民への懲罰だ。
176万ガザ住民の恐怖と苦しみは、砲爆撃だけではない。イスラエルはこの3週間、高い壁と鉄条網で囲まれたガザの唯一の出入り口であるエレツ検問所を完全封鎖、ガザには燃料、食料、医薬品が搬入できなくなった。エジプトとの出入り口であるラファ検問所も、一年前のクーデターで権力を握ったシーシ大統領の政権が人と物資の出入りを厳しく制限。さらに住民に打撃を与えたのは、国境の壁と鉄条網の下にガザ住民が掘った多数の地下トンネルを埋めてしまったため、エジプト側からの燃料搬入ができなくなってしまったことだ。
燃料枯渇のため、唯一の火力発電所の稼働時間が一日4時間に縮小、唯一の水源である地下水のくみ上げがほとんどできなくなり、トイレの汚水が流せず、衛生状態が極度に悪化した。ガザ住民が本当に餓死、渇水死寸前の事態になったのを現地の国連救援チームが世界に訴え、ようやくイスラエルも、ハマスも26日に12時間だけの停戦を実施した。ガザは猛暑の真っ盛り、日中40度を超す。国連チームが必死に運び込んだ食料、燃料、医薬品が何日持つだろうか。
国連人権理事会は23日、イスラエルの軍事作戦を「もっとも強い言葉で非難する」とし、国際人道法や国際人権法の違反を調査することを決めた決議を採択した。賛成は29か国、米国1国が反対、日本やEU加盟国など17か国が棄権した。日本政府はここでも、米国に追随した。棄権国は、ハマスがロケット攻撃したことなどを非難しているが、イスラエルの圧倒的に非対称的な軍事力による攻撃で、子供や女性が多数死傷し、大規模な市街地破壊をしている緊急事態が、この決議へと理事会を動かした。多数の国は“ケンカ両成敗”の立場をとらず、イスラエル・ロビーに逆らえないオバマ政権の米国に追随しなかったのだ。

▽ハマスのロケット
ハマスは87年からガザで始まった反イスラエル武装抵抗の中で生まれた、イスラム主義政治組織。06年のパレスチナ評議会選挙で圧勝、自治政府を単独で組閣した。その後対イスラエル政策を巡り主流派のファタハとの対立が深まり、07年にはガザではファタハを制圧して支配権を握り、ヨルダン川西岸地区のラマラの自治政府から事実上離脱した。
ガザは地中海に面した細長い地域で、大部分をイスラエル領とイスラエル軍が支配している海、そして西側のごく一部14キロほどの境界がエジプトと接している。
長年パレスチナ人の解放闘争を率いた故アラファトも、ハマスの最高指導者で現在カタールに在住しているメシャールも、ガザを「天井のない監獄」を表現しているが、壁と鉄条網で完全に囲い込まれ、わずかな出入り口はイスラエルとエジプトの厳重な管理下にあるので、自由な出入りができず、まさにその通りだ。2001年以来、ハマスや他の武装組織はガザから、しばしばイスラエル領内に向けロケット弾を発射してきた。イスラエルによると、過去もっとも多かったのは2006年の946発で、2009年までにイスラエル市民22人が死亡しているという。現在使用されているカッサム・ロケットは最も大型で全長2.44メートル、重さ10~20キロほど。鉄製の手作りロケットで、誘導装置がなく、最大射程4.5キロ程度。移動して発射できる。
兵器としてはごく初歩的で、たまに被害を与えるが、大部分は農地や林に着弾している。今回のようにテルアビブ空港近くに1発着弾したため、欧米の航空会社が一時離着陸を止めたようなことはなかったと思う。もちろん、イスラエルの世界最先端級の軍備と比べれば、石器時代級だが、ガザのハマスにとっては、「天井のない監獄」からの精いっぱいの抵抗であり、ガザ近くに住むイスラエル市民にとっては、恐怖の的となる。大規模なガザ侵攻が多数のパレスチナ住民を虐殺しても、イスラエルでは作戦を支持する世論が根強いという。
イスラエルは今回の作戦で、ハマスのロケット製造所をほとんど破壊出来るかもしれない。しかし「天井のない監獄」が解放されない限り、ハマスは、いずれまたロケットを製造・発射するだろう。そしてまた、イスラエル軍の大規模な侵攻、大虐殺が繰り返される。ハマスのロケット攻撃を止めさせて、周辺のイスラエル市民が安心して暮らせるためには、ハマスの指導者メシャールが停戦の条件とする「ガザ封鎖の解除」しかない。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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