みなぎる怒り、危惧、緊張感―今年の年賀状から

著者: 坂井定雄 さかいさだお : 龍谷大学名誉教授
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ことしも200通近い年賀状をいただいた。例年通りの新春を喜ぶ言葉と、数行の近況を書いてくださっているだけのものも多いが、安倍政権の軍国主義国家への復活政策強行への怒り、危惧がほとばしるような賀状も少なくなかった。
友人たちがおそらく年賀状を投函した後の12月26日には、安倍首相が靖国神社を参拝。同じ日には政府系の国際協力銀行(JBIC)に元財務官僚の渡辺博史氏が昇任。重要な政府系金融機関の商工組合中央金庫には経産官僚、合併した農林漁業金融金庫には財務官僚がすでに就任しており、国民の批判で民主党政権が中断した高級官僚の天下りを、安倍政権が続々復活させることが明らかになった。そして12月27日、米軍普天間飛行場の県外移設を主張、県内移設のための辺野古の埋め立てに抵抗してきた仲井真・沖縄県知事が方針を逆転、埋め立てを承認した。安倍政権が直接そして自民党県連を通じて政治的圧力をかけ、毎年3千億円もの予算を投入する沖縄振興策を提示して、ついに知事を屈服させたのだ。年賀状を投函した後で、友人たちは、どれほど怒りを重ねただろうか。
もちろん私自身も怒り続きの年末だった。私の年賀状は近況報告一言と写真だけだったが、やはり、怒りを、戦う決意を短くとも書くべきだったと後悔した。友人たちからの年賀状の一部を転載したい。

▽Y(ジャーナリスト)(全文)
新年のご挨拶を申し上げます。
第二次安倍政権に対する危惧が現実になってきました。「積極的平和主義」とは、憲法で禁じている自衛隊を国防軍にして海外に派遣し、アメリカの完全な下請け機関となって戦争ができる日本にすることでした。その手始めが特定秘密保護法です。次は集団的自衛権の拡大解釈です。そのために内閣法制局長官を更迭し、国家安全保障会議(日本版NSC)を発足させ、さらに「安全保障防衛力懇談会」では「愛国心」を強要する「国家安全保障戦略」を打ち出しました。共産党をつぶしたいのです。戦争に反対すると「非国民だ」と批判されかねません。
「軍国主義」に対する批判を封じるため、NHK経営委員に安倍首相の「お友達」を四人も送り込み、情報管理を徹底しようとしています。麻生副総理は「憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わってナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうかね」と発言しました。ナチスを真似て、憲法改正せずに自衛隊を海外派兵できる戦前の大国・日本に逆戻りさせる。それが時代錯誤もはなはだしい安倍首相の野望のようです。

▽F(ジャーナリスト)
官僚の恣意的な秘密指定をもたらす恐れの多い特定秘密保護法が、与党により強引に成立しました。国際的に合意したツワネ原則を無視し、罪刑法定主義を否定した非民主的な内容でもあります。公聴会で全員が異議を示した翌日に強行採決するという政府・自民党のやりかたは、憲法が保障する民主主義を否定するものです。さらに年末には自らが定めてきた武器輸出三原則を破って弾薬を韓国軍に供与するなど、戦後の自民党政権が採ってきた政策すら次々に壊しています。圧倒的多数を得た政党がどうなるか、ことしはそれを見続けたいと思います。日本社会が急速に右傾化に向かっていることに底知れない危惧を感じる新年となりました。(後略)

▽T(大学教授)
お元気ですか。偏狭なナショナリズムが大手を振って跋扈する時代になりましたね。
秘密保護法、改憲案、靖国参拝、集団的自衛権、原発再稼働と増税など、戦後民主主義と平和の基盤が崩されつつあります。声を上げることの大切さを痛感しています。

▽M(築城プランナー)
正月に喜寿を迎えました。東京五輪にはボランティアとして協力したいと考えています。(中略)“決める政治”はよいが、歴史を学ばぬ政治はいずれ崩壊する。

▽O(ジャーナリスト)
軍国主義の亡霊(秘密保護法)がさまよい出たり、庶民泣かせの消費税アップが近づいたり、日本の空に怪しげな雲がただよっているようです。まあ、それはともかく、今年も元気にお過ごしください。

▽T(演劇愛好家)
ますますイヤな世の中ですが、負けないよう、“芝居の力”をエネルギーに続けていきたいと思います。

▽K(ジャーナリスト)
世も末か、と思うようなことばかりですね。今がどん底と楽観します。

▽M(放送評論家)
憲法を堅持!本年もどうぞよろしく。危険な政治を変えないとー
安倍ファッショ政権、絶対、退陣させましょう!

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