アフガニスタンの内戦、タリバンンが勝利(1)
大統領が国外脱出、国家再建への期待も
2001年9月、国際テロ組織「アルカイダ」の米国同時多発テロ事件が口火となった米国と同盟国のアフガニスタンのタリバン政権に対する戦争は、20年間を経た2021年8月15日、米軍と同盟国軍の全面撤退がほぼ完了、7月上旬以来、反政府イスラム武装勢力タリバンの攻勢が急拡大する中、政府を率いてきたガニ大統領が国外に脱出した。イスラム武装勢力タリバンは、この日、首都カブールに“無血入城”、全国の主要都市をすべて支配することになった。
18年から本格的に始まった、カタールのドーハで始まった米国とタリバンの直接協議は、アフガニスタン政府が参加拒否をするなか、トランプ政権からバイデン政権に引き継がれ、21年4月、9月11日までの完全撤退に合意。着々と米軍撤退を進めてきた。NATO諸国も米国に歩調をあわせて撤退した。
アフガニスタンの政府軍は、陸軍17万3600人、空軍7300人の計18万900人。米国と同盟国の支援で、航空機はじめ装備は高レベルだった、ほかに国家警察隊9万1600人。2019年の国防予算19万1千万ドル。この部隊の維持費は国際社会が負担していた。
これに対し、タリバンの勢力は、戦闘武装勢力の実数は数4万5千~6万5千人程度。年間収入は3億~5億ドルでうち約2億ドルが麻薬による収入とされる(共同通信社世界年鑑)
支配地域の行政担当者はそれよりもかなり少数。
これらの数字で見る限り、政府軍がタリバンに敗北するはずがないのだが、8月15日現在、全国398行政区のうち、タリバンの支配地区は345,政府軍支配地区が12,競合地区が41地区。7月9日には、それぞれ90、141、167地区だった。
このような軍事情勢をみて、2014年に選挙で選ばれ、就任したガニ大統領は、後継者を決めることなく国外に脱出したのだ。
首都カブールには、戦闘激化とタリバン支配を逃れて、数万人の避難民が逃げこんできている。悲惨な路上生活をしているが、首都の支配者となったタリバンは、まず、避難民の保護と生活維持が任務であるはずだ。
すでに、タリバンはほかの政治勢力に、アフガニスタン再建への協議を呼びかけているという。この20年間、3千9百万アフガニスタン国民は世界の超大国が大規模に介入した戦争に苦しみ、大きな犠牲を払ってきた。米国はじめ日本を含む国々は、アフガニスタンの再建に暖かく協力しよう。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11210:210818〕