ウクライナで、ガザで、日々こどもの命が奪われている!

著者: 加藤哲郎 かとうてつろう : 一橋大学名誉教授
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2023. 11.10   ●  10月末から11月にかけて、二つのトラブルがあって、更新が遅れました。一つは体調の問題。突如高熱で倒れ、ようやく病院に行って急性肺炎との診断。レントゲンによると、食事が気管支に入っての誤嚥性肺炎ではなく、もともと弱い肺の炎症によるものだったようです。抗生物質と熱冷ましで、なんとか回復。昨年来のリハビリのメニューを、マイナー・チェンジです。もう一つは、IT環境のトラブル。書斎の基本パソコンMacのOSを、最新のSonoma14.0にバージョンアップしてしまったのが、災いのもと。ウェブ上でも世界中で騒がれていますが、旧来のソフトやアプリとの相性がよくありません。私の場合は基本メーラーのThunderbirdとバッティングで、送受信がうまくいかず、一部のメールが消えたり、友人との約束が届いていなかったり。研究の仕事に不可欠なPDF作成・編集ソフト Adobe Acrobat Pro とも不具合で、史資料のデジタル化の作業がストップ。日本の一部の大学では、Mac使用者に「Sonomaにヴァージョンアップしないでください」と呼びかけているそうですが、当分この混乱は続きそうです。

●  そんな個人的事情で療養・リハビリしている間も、世界は大きく動きました。ウクライナ戦争の越年・長期化に加え、中東の火薬庫パレスチナ問題の再燃です。長くイスラエルにより植民地化されてきたパレスチナのなかでも、最も厳しく抑圧されてきたガザ地区は、イスラム原理主義のハマスが捨て身のイスラエル攻撃に出て人質を拘束、これに対して軍事力で圧倒的なイスラエルは、ハマス絶滅を唱えて無差別爆撃、病院も学校も破壊、ガザ市内に兵力を侵攻して地下連絡網を含め陸海空の全面攻撃です。最大の犠牲者はこどもと女性、老人たち。フェイクニュースではないと見分けられるむごい虐殺の様子が、テレビや新聞、インターネット上にあふれています。ハマスの抵抗をナチスの「ホロコースト」になぞらえてパレスチナ人殲滅を正当化するイスラエルの狂気は、日本軍のパールハーバー奇襲を「リメンバー・パールハーバー」として開戦の契機とし、ついには広島・長崎への原爆投下をも「ジャップへの復讐」として正当化するメンタリティを想起させます。実際、イスラエルは、核兵器の使用さえ「選択肢」と示唆しています。

● 日本はパレスチナを支持する中東諸国の石油に依存し、他方、イスラエルとは同じ米国の同盟国だから等距離で、平和を働きかけることができる、といった言説は、こどもたちに対するジェノサイトの前に、通用しません。ウクライナ戦争もそうですが、パレスチナへの態度も、日本政府にとっての非力の証明になりそうです。G7議長国とはいいますが、当初のイスラエル支持の声明は日本抜きのG6声明、なんとか東京にG7外相を迎えて共同声明は出されましたが「ウクライナ支援疲れ」といわれる、かつての盟約の立場の再確認のみ、世界の民衆にとって切実な、停戦のイニシアティヴなど握るべくもありません。東アジアの中国・台湾問題ならと、軍事力増強等対中包囲網形成の先頭に立とうとしますが、総司令官のアメリカや盟邦のはずのオーストラリアが経済優先の対中融和をはじめ、水産物を売れないままの日本は、ここでも負け犬です。国際社会の激動、世界的な戦争の危機は深まっていますが、日本という国の凋落は、止まりません。

● GDPは、今年ドイツに抜かれ、世界第4位になります。26年にはインドにも抜かれ第5位とか。かつての学校教科書に書かれた経済学の第一歩、エンゲル係数をご存じでしょうか。消費支出に占める食料費の割合を占めるもので、高いほど貧しく、低いほど生活に余裕があるとされます。日本の高度経済成長は、エンゲル係数が低くなる、食べるのがやっとの生活から「レジャー」もある余裕の生活へと描かれました。それが、2000年代の25%で「食費は4分の1」の暮らしから、15年頃から上がりはじめ、ついに29%、「食費が3分の1」の貧困国になろうとしています。ちなみにエンゲル係数は、米国15%、ドイツ18%、英国20%などとされており、日本の最近の物価高による生活苦は、「先進国よさようなら」の象徴です。1ドル=150円という円安で、国際統計が次々と書き換えられています。コロナ禍が一段落し、外国人観光客が戻ってきた事態そのものが、「安い日本」の証しなのです。

● 9月・10月の本サイト・トップで扱った、関東軍軍馬防疫廠100部隊の新情報については、11月26日(日)、東京・湯島の全日本民医連会議室での戦争と医学・医療研究会(戦医研)第51回総会で、次のような報告をすることになりました。主報告は小河孝教授が行い、私が補足します。要旨はすでに出ています。こちらもオンライン参加可です。

日時:2023年11月26日(日)午前10時~午後3時
会場:全日本民医連会議室(東京都文京区湯島2-4-4、平和と労働センター内)
方式:ハイブリッド 現地参加(30人まで)とZoomによるオンライン
参加費:会場参加 1000円。オンライン参加

午後 一般論題1.100部隊の真相にせまる旧隊員からの匿名情報―「100の会」名簿と「紫陽」探索
○小河 孝(元・農林水産省家畜衛生試験場)、加藤 哲郎(一橋大学名誉教授)

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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