3月12日に、ブダペストでオペラハウスの改装記念ガラコンサートが開かれました。アーデル大統領、オルバン首相、ノヴァーク次期大統領が列席する中、オペラハウス支配人のオーコオヴァチ・スィルヴェスターが発した挨拶話題になっています。
「閣下、私がオペラハウスにかかわって12年になりました。これだけの長い時間、職に携わってきた後は、皆、職を離れるべきです」と切り出したのです。オルバン首相の連続任期はこの4月の総選挙で12年になることを意識したものです。これまで、首相からの熱い信任を受けて、2期(2期5年の支配人とそれ以前の役職を含めて)にわたってオペラハウスの支配人を務めたオーコヴァチが、首相に引退をほのめかすような発言を行ったのです。
TV画面はすぐにバルコニー席のオルバン首相夫妻を映し出し、夫人がオルバン首相に顔を向ける仕草が写っています。しかし、この画面はすでに国営TVのHPから削除されています。まるでロシアや中国のようなメディア規制です。
この出来事の直後の3月16日、EUの非公式代表として、ポーランド、チェコ、スロヴェニアの首脳がキエフを列車で訪問し、ウクライナへの連帯を伝ました。これはEU大統領とEU委員長からの要請で実現したもので、当初はフランス、ドイツのほかにハンガリーにも打診があったようですが、この3ヵ国は種々の理由で断ったと報道されています。
オルバン首相はウクライナのハンガリー人少数民族を危険に晒したくないという理由で断ったようです。3月15日のハンガリー革命記念日に、4月の総選挙に向けた「平和大行進」が予定されていたことや、2月にプーチンを訪問して間もないことから、ロシアに忖度した結果だと考えられています。
この時期、「ロシアの侵略反対」を叫ばない平和大行進は、ただの政権政党支援のためのデモンストレーションでしかありません。オルバン首相は、「我々の戦い、反対派への戦いの手を緩めてはならない」と野党結集への敵意をむき出しにしながら、ロシアの侵略は批判していません。地方からバスを仕立ててまで集めた示威的な「平和大行進」は、公金を使った政府支援のデモンストレーションでした。
戦う相手を間違っていると言われても仕方がありません。総選挙活動を差し置きキエフに出向いていたなら、EU内での政治家としての評価を高めたでしょう。しかし、プーチンに忖度し、国内野党との「戦争」を選ぶオルバン首相には、破綻した東方外交の失点をなんとしても取り返したいという権力への執着心が見え隠れします。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11881:220324〕