ガザ紛争で犠牲になった子供たち BBCが異例の特集でその死を伝える

 11日間に及んだ今回のイスラエル軍のガザ爆撃、パレスチナの武装勢力ハマスのイスラエルに対するロケット弾攻撃で、前稿でも書いたように、パレスチナの子供65人以上が死亡、イスラエルの子供2人が死亡した。連日、この武力紛争を全力投入して報道してきた英BBCは20日、異例の特集「イスラエルーガザ暴虐 紛争で死んだ子供たち」で、紛争で死亡した子供たちのことを、写真とともに一人一人報道した。
 この残酷な紛争に対する、BBCの怒りと悲しみが解る。以下にその要点を紹介したいー

▼イスラエル軍がガザ市中心部のウイフダ通りを爆撃したとき、パレスチナ人のアルカワレク一家の住居も破壊され、家族の13人が死亡した。犠牲者の多くが子供で、最年少は6か月だった。生存した男性の一人は、「私の抱いていた子が見えなくなった。」と叫んだ。
 イスラエル軍(IDF)は、爆撃は“異常”で市民の死傷者は意図していなかった、と語った。爆撃でトンネルができ、家屋が崩壊した、とも語った。
 死者の中には、女の子のヤラ(9歳)とルラ(5歳)もいた。二人ともノルウェー難民協会(NRC)の医療チームからトラウマの治療を受けていた。
 アルカワレク一家の女の子たちは礼儀正しく、いつも宿題をきちんとやってきた、と学校の先生はBBCに語った。一家でただ一人生き残った10歳のアジズは、母親の遺体のそばに座ったままだった。

▼イスラエル人のイド・アヴィガル(5歳)。
 イスラエル南部のスデロットで、屋外で爆発したパレスチナ側のロケット弾で、室内で傷つき、死亡した。イドの部屋は、厳重に防護されていて、イスラエル軍は「信じられないほど稀なケースだ」と言っている。ロケット警報のサイレンが鳴り渡る中、傷ついた母親がこの防護された部屋から、傷ついたイドを抱えて出てきた。イスラエル軍は、屋外で爆発したロケットの金属破片が防護された窓を突き破って、部屋にいたイドと7歳の女の子と母親を傷つけたと説明している。数時間後、イドは死んだ。
 イドの葬儀の場で、父親のアヴィガルは、「わたしは、破片がお前のいる場所を襲うのを防げなかった。数日前、お前は「ダディ、もし僕たちが外にいるときにサイレンが鳴ったら、どうすればいいの」と尋ねた。わたしは、「お前が私と一緒にいる限り、お前は守られているんだ」と答えた、と話した。
 数か月前、アヴィガル夫妻は、イドが特別に素晴らしい子供で、体は5歳なのに、50歳ほどに聡明だと話し合った。イドはしばしば父親に、「コンピュータから離れて、僕の相手をしてよ」と願った。イドの母親は、病院に入ったきりだ。

▼ナディーン・アワド(16) イスラエルのテルアビブに近いロッドに住むアラブ人女子学生(16歳)
 朝早く、両親と一緒に家に駐車していた自動車内で、ロケット弾が着弾して父親と二人が死亡、母親が重傷を負った。
 ナディーンは高校1年生で、医者志望の特別にできる子だったと、級友らはいう。「彼女は世界を変えることを望んでいた」とハイスクールの校長は語った。

▼ガザ市郊外のシャティ難民キャンプの住民、アル・ハディディ家の子供たち4人=ヒスヒャブ(13)、ヤヒャ(11)、アブデルラハマン(8)、オサマ(6)は、イード(ラマダン=断食月の終わりの祭り)のためのとっておきの服を着て、近くに住むいとこの家を訪問した。「子供たちは、彼らのイード用の服を着て、おもちゃを持って、祭りを祝うために、キャンプの外の叔父さんの家に向かっていた。父親のハディディ(37)は「子供たちは,おじさん宅に泊まるつもりで、私はOKと言いました」と語った。
 翌日、彼らが一泊した叔父宅のビルはイスラエル軍に爆撃され、破壊された。訪ねてきた4人は全員死亡。いとこ宅にいた生後5か月の弟のオマールは無事で、死亡した母親に寄り添っていた。
 ハディディは「死んだ子供たちは、自分たちの家にいたら無事だった。彼らは武器を持ってないし、ロケットも発射しなかった。彼らが、何をしたというのだ。私たちは一般市民なのだ」といった。
 破壊された家の残骸の中から、子供たちが遊んでいた、モノポリィゲームが出てきた。そこは食堂で、カウンターがあり、イードを祝っていた食べ物が残っていた。
 ハディディは「子供たちは、寝るときには、何事もなく朝になりますように、と願っていました。でも、彼らは行ってしまった。私には、家の中での彼らの光景しか残っていません」と語った。

 このほか、このBBC電子版での特集では、イスラエル軍の爆撃による、ガザ市のアル・シーファ病院の内科医長でコロナ感染症対策部長のアイマン・アブ・アルオウフと隣人の13歳と17歳の兄弟の死亡についても、詳報している。
 さらにBBCは、ガザ住民イブラヒム・アル・マスリ(14)、ガザ住民ハムザ・ナッサール(12)のイスラエル軍の攻撃による死亡についても、カタールの国際的衛星テレビ・アルジャジーラの報道などを紹介して、きちんと報道している。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

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