グローガー理恵さんのコメントにお答えします

まず、山下俊一氏の下記報告を参照して下さい。
チェルノブイリ原発事故後の健康問題
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm

表2にベラルーシ・ゴメリでの小児甲状腺がん登録数推移が掲載されていますが、これは手術実施数です。

一方いわゆる笹川プロジェクトでベラルーシ・ウクライナ・ロシア三国にわたる1991~1995年にかけて12万人を対象に超音波を用いた甲状腺検診が行われ、計64名の小児甲状腺がん発症者が発見されています。(表1)

ところでこの三国の総人口はベラルーシ 960万人、ウクライナ 4,500万人、ロシア1億4300万人、合計 約2億人。そのうち0-19歳層はおよそ4分の1の5,000万人と大まかな推測が出来ます。それからすると笹川プロジェクトがカバーできたのはほんの一部でしかない。

そこで少し話の焦点を絞れば、ベラルーシ・ゴメリで超音波検診を実施したのは、約2万人で35名発見されています。(表1)
ところで同じ期間でゴメリ・ガン登録者数(手術数)は246名(表2)ですから全体の8%位が超音波を使って発見できたものと推測します。(発見された患者が全員即座に手術受けたとして)

 ですから、1991年以降の発症者急増の8%は超音波によって発見されたが、残りは従前の外観および触診による発見・手術数の増加と見立てるのが自然ではないでしょうか。

 グローガー理恵さんのおっしゃりたいのは、超音波検診をチェルノブイリ事故直後から導入したら、発症者数は1991年以前においても増加が発見できたのではないか、という点だと思いますが、1991年-1995年と同じレベルで検診を行えば、8%かさ上げされるでしょうが、それで急増ということが言い切れるとは、ちょっと考えにくいのではないでしょうか。

見方を変えると、別に福島県の肩を持つつもりは一切ございませんが、今回の健康調査の規模は、対象年齢層全員38万人に対して来年3月までに一次検査は済ませようという、確かに前例のない規模と精度のものと言えるでしょう。ただし県側のこれまでの所の見解も疑問なしとせずという点については、私の前掲文章で指摘した通りです。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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