ハンガリーでは明日(12月15日)から、5歳~11歳の子供に対するワクチン接種が開始されます。現在の感染拡大は児童を中心に増えており、子供へのワクチン接種が優先課題となっています。児童・生徒の感染が拡大していますが、学校単位での休校はありません。学級閉鎖か部分的なオンライン授業が中心になっています。インフルエンザの場合と同様の措置です。
他方、学校関係者(教員、事務員、用務員等)でワクチン未接種者は来月中旬までに接種を終えない場合には、1年間の無給休職扱いとなります。健康上の理由で接種を受けられない場合には、医師の証明書が必要です。ただし、これは公立学校での措置で、私立学校には適用されず、その学校の判断に任されます。
一時は連日1万人を超える新規感染者が出てきましたが、ここ数日は4000名前後の新規感染者数に落ち着いています。しかし、死者の数は減少していません。1日当たり、160-180名前後の幅で推移しています。年齢に関係なく、基礎疾患のある人々が犠牲になっています。病院で治療を受けている人の数はおよそ6500名、人工呼吸器での治療を受けている人は560名前後です。後者の数はほとんど増減していません。新規の重篤者が出ても、人工呼吸器治療の重篤者が次々と死亡するので、治療者数は増えないという関係になっています。
2000年五輪の体操(吊り輪)金メダリストのチョラーニィ・スィルヴェスター(51歳)が11月中旬ににコロナ感染し、現在、人工呼吸器による治療を受ける重篤状態にあると報道されています。ワクチン接種は受けておらず、ECMOによる治療が必要だと報道されています。基礎疾患があったかどうかの報道はありません。ハンガリーには20数台のECMOしかありませんが、この治療を受けた場合は回復しても、かなりの後遺症が残るとされています。
ところでハンガリー政府がイスラエルのスパイウェア「ペガサス」(Pegasus)を購入し、政権批判のメディア関係者の盗聴に使用していた問題で、動きがありました。11月4日の国会の防衛委員会終了後、委員長のコーシャ・ライヨシュ(FIDESZ・キリスト教民主国民党)幹部で、デブレツェン市長)が、国会内で新聞記者の質問に答えて、「内務省がペガサスを購入した」と言明したことにたいし、国家機密漏洩で告訴を求める訴状が検察に届きました。これは内務大臣のピンテルが、「国家機密事項を質問すること自体が罪に問われる」と言明したことに反応したものですが、11月末にハンガリー検察は訴状を却下しました。却下の理由として、検察は「内務省はペガサスを購入していないから、国家機密の漏洩ではない」と判断したとされています。それでは、政府のどの部署がペガサスを購入したのかという問題が、依然として残ることになります。
この間、アメリカでもこのスパイウェアが問題となり、イスラエル企業はジャーナリストを盗聴した国との契約を打ち切ったようですが、それにハンガリーが含まれているのかどうかは不明です。FIDESZ政治家は知らぬ存ぜぬで突っ張っていますが、盗聴には法務大臣の決裁が必要であり、法務大臣や内務大臣が関係していることは自明のことです。
FIDESZ政権は来年の選挙を見据えて、なりふり構わぬ「ばら撒き」政策を展開しています。11月に年金プレミアム(平均で8万Ft・1フォリント=0.38円))を配っただけでなく、来年2月に年金ボーナスとして、1か月分の年金を支払うだけでなく、年初より年金支払額を物価上昇に合わせて5%引き上げることも決めました。地方在住の有権者と年金生活者をターゲットにしたFIDESZ政権の選挙戦略です。ただし、このばら撒き政策のために、国家予算の赤字額は計画の2倍を上回ることになりました。たとえ総選挙実負けても、財政赤字の補填はFIDESZの仕事ではなく、今の野党の責任に任せるということでしょう。
他方、復旦大学ブダペストキャンパス開校をめぐる国民投票についてその可否が審査され、「可」という判断が示されたため、カラチョニィ・ブダペスト市長は国民投票実施のための有権者の署名(20万人)活動を始めることを宣言しました。
来年の総選挙をめぐって、熱い戦いが始まっています。
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