昨年1月の米大統領就任以来トランプは、オバマ前政権が努力を傾けて推進してきた、多くの国際条約や協定ー環太平洋連携協定(TPP)、北米自由貿易協定(NAFTA)、気候変動枠組み条約、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などから脱退、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の負担金大幅削減などを一方的に強行してきた。この4月24日、米国を公式訪問したマクロン仏大統領との会談で、2015年に米英仏ロ中独6か国とイランが結んだ、イランの核開発を規制する核合意を修正強化しない限り、5月14日までに同合意から脱退する意向を表明した。
この動きをみて、国際原油市場は、1バレル75.47ドルと、2014年11月以来の高値を記録した。
この合意は6か国と国際原子力機関(IAEA)が、イランとの厳しい交渉の上で合意した、イランの核開発の軍事利用を不可能にする国際的な取り決め(JCPOA)。イランが進めるウラン濃縮と保有する濃縮ウランを発電用の濃縮度3,67%以下に制限(核兵器への利用は90%以上)、保有量を98%削減して300kgとする、濃縮ウラン製造用の遠心分離器を5060台に縮小(現在は2万台稼働)などを実行し、15年間継続(その後については再交渉)するなど詳細な内容。
イランは翌16年1月までに、合意を実行し、削減した濃縮ウランはすべてロシアに移送した。IAEAがそれを確認、国連安保理も同月、それを認める決議をした。以後、IAEAと各国はイランの合意実行を確認し続けてきた。
しかし、昨年1月に就任したトランプ大統領は10月、イランとの核合意には弾道ミサイルの開発を規制しないなど「深刻な欠陥」があると主張し、核合意の実効性を認めない方針を発表。これに対してイランのロウハニ大統領が激しく反発。6か国とイランは12月、合同委員会を開き、米国以外は核合意存続の重要性を再確認した。
トランプは最近、安全保障担当大統領補佐官をボルトン元国連大使、国務長官をポンペオCIA長官に替えた。どちらも、トランプと同様、「アメリカ第一主義」の好戦的右派。イラン嫌いでも知られている。トランプはポンペオを秘密裏に北朝鮮に派遣、米朝首脳会談の準備工作に当たらせた。しかし、トランプがボルトンとポンペオを使う最大の狙いは、イスラエルが最も敵視するイラン対策だともいえる。ワシントンではトランプのイラン・シフト人事といわれている。トランプの背後にはイスラエルが動いていることも確かだ。トランプは、エルサレムをイスラエルの首都として認めず大使館を第2の都市テルアビブから動かさない各国を裏切り、米大使館を5月中にエルサレムに動かす。好戦的右派で固めたトランプ政権が中東で何をやらかすか、朝鮮半島とともに、目を離せない。
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