トランプが攪乱する世界、無為無策の日本、人権が危ない!

2025.4.1● 4月1日はエープリル・フールで、かつては公共放送や老舗の大新聞が、ウィットの効いた笑いをとる機会でした。しかし、21世紀にメディア環境が激変し、フェイクニュースが日常的に流れるようになって、年に一度の「罪のない嘘」の許される日の意味が失われました。三谷幸喜の表現では「毎日がエープリルフール」になったのです。かつてはイギリスの公共放送が「スパゲッティのなる木」を放映したり、フランスの高級紙「ル・モンド」が「贋ル・モンド」をつくったりといったウィットがありました。しかしドイツののフランクフルター・アルゲマイネ紙のエイプリルフールのジョークを、日本の朝日新聞が真面目に報じて撤回に追い込まれた1995年あたりから、様相が変わりました。ジョークや警句の世界も、情報戦の一環になってきました。

● 中国政府は、2016年にエイプリルフールを「社会主義の核心的価値に合わない」として警告しましたが、インターネット上では「国営放送は毎日が嘘情報」「中国では年中エープリルフール」といった書込が現れました。ロシア、アメリカ、それに日本も、最近はSNSにのって「年中エープリフール」風にフェイクニュース陰謀論が流通・跋扈し、確かに4月1日の意味は薄れました。今年なら、Fox News あたりがAI映像も使って「苦難の大阪万博に救世主! イーロン・マスクが、グリーンランドにならって大阪夢洲を買収、米国領にしてカジノ・リゾートと「空飛ぶクルマ」のモータープールに!」と報じるあたりが上品なジョークですが、大阪万博開催二週間前の悲惨な日本では、あまりに迫真過ぎて、またしても訂正記事が出そうです。

● もっとも「毎日がMAGA(Make America Great Again)」のトランプは、エープリルフールを無視しているわけではありません。大統領選挙公約の核心であった「関税による取引」の目玉である自動車の25%関税・相互関税を4月2日に発効させ、3日から課税します。はじめは4月からと言ってきましたが、冗談と思われないように、1日ではなく2日からにした、と言います。 

カナダやメキシコ、欧州や日本にとっては、深刻な経済的打撃で、すでに株価が暴落しているように、「トランプ不況」の入口です。ウクライナ戦争でのプーチンゼレンスキーとの取引、パレスチナでのガザ買収リゾート化提案にとどまらず、中国やBRICS諸国との関係もありますから、世界秩序の再編です。すでに地球温暖化のパリ協定からはじめて、世界保健機関(WHO)国連人権理事会から離脱し、米国際開発局(USAID)の対外援助停止で、地震のあったミャンマーや内戦の続くアフリカは、大打撃です。WTOの拠出金も停止しましたから、世界銀行IMFにも、影響は及ぶでしょう。国際連合そのものがどうなるか、1920年に国際連盟が発足して以来、二つの世界大戦とグローバル化で増殖してきた国際機関と協調的世界秩序の、深刻で重大な危機です。

● そんな世界を尻目に、同盟国日本だけは関税衝撃を和らげてくれるのでは、と脳天気な楽観論で臨んできた石破政権も、正念場です。それでなくても落ち目の自民党は、米国では20ドルの「こしひかり」5キロが日本で4000円以上に高騰する米騒動、低賃金・物価高の中で生活苦にあえぐ庶民を尻目に、企業献金と税金を原資とした10万円商品券土産付き宴会政治を続け、いまや、世論調査でも地方選挙でも負け続け、東京都議会選挙・参院選挙でも、再起の気配はありません。野党の分裂とふがいなさだけが頼りという弱い政権には、トランプに対等で台湾の香港化の危険を訴えたり、習近平に東アジアの安定を説いたりする、自覚も余裕もありません。

● これは、エープリルフールではありません。官民共同の非営利シンクタンク日本経済研究センター(JCER)の長期予測が、3月27日に発表されました。曰く、「2075年 BRICS経済圏が米国の1.4倍に拡大。―日本は11位転落、1人あたりGDPは45位、―出生率・移民とAIで成長率に差」「日本のGDPはTOP10から脱落。2024年の4位から2075年には11位まで低下する。一方で、インドネシアはBIG5入りし、メキシコやブラジルなども順位を上げる。一人当たりGDPでみると、日本は45位へ低下し、相対的な所得水準は「中位グループ」へと転落する」と(写真)。だからこそ、こどもたちの保護と将来への投資が必要なのですが、こどもたちの自殺が増えて、「ベビーカーがけられる社会」の現実があります。しかも、このJCER長期予測の段階では、トランプVer.2の狂気はまだ本格的に作動しておらず、ミャンマーの200年ぶり地震以上の、日本列島の10人に一人が被災し30万人死亡という必ずおこる南海トラフ巨大地震最悪のシナリオも、織り込まれていないのです。この見通しを、冷静に受け止めた、若者の奮起が必要です。

● フジテレビ第3者委員会報告書が出されました。公表版要約版は、PDFですぐ読めます。巨大メディア企業組織内部での、驚くべき性暴力、セクシャルハラスメント・パワハラの横行、そして、それを容認し温存する経営陣と企業体質、内部告発者を犯罪視する絶望的閉鎖性、その頂点に41年間(シュタージ国家東独の存続と同じ!)居座った日枝久という独裁者ーー日本の人権感覚、ジェンダー平等の遅れを、改めて端的に示して、愕然としました。翻って、報告書も示唆するように、それは「日本のメディア・エンターテインメント業界」全体にも多かれ少なかれ見られる問題で、さらにいえば、日本社会と経営組織に宿痾のようにつきまとい、20世紀後半の一時期「先進国」といわれたこの国が、停滞し、衰退して、世界45位程度の「中位国」へとフェイドアウトする道を辿らざるをえない、予兆です。そんな人権感覚喪失の組織が、経済界・企業にも、政界・政党、官僚・公務員組織にも、医療・福祉や教育や社会運動の現場にさえ、まだまだあるのではないでしょうか。可能な限り客観的な、第三者による厳しい点検が求められます。

●  心臓病からの快復の見通しが立った年末から、少しづつですが、研究生活への復帰を始めました。そのとっかかりとして、蔵書・資料整理を4年ぶりで再開し、可能なものはPDFにして残し、雑誌そのものは廃棄する作戦です。まだ内容的に整理するには至っていませんが、本サイト「研究室」のページに、数多くの論文の他、対談・座談会・エッセイ等を新規に収録することができました。特に1990−94年に、80年代『現代と思想』(青木書店)の名編集者であった故西山俊一さんが興した窓社の雑誌『季刊 窓』に、自分でも忘れていた多くの論文が、掲載されていました。「総目次」と共に、「日本はポストフォード主義か」の国際論争や、「民主集中制」をめぐる藤井一行・橋本剛・平田清明さんとの密度の濃い座談会討論など、現在でも生々しい意味のある論稿が、見つかりました。ちょうど、本サイトの入っているXdomain/serverの再編で、7月までに新たなサーバーに移転しなければならなくなりました。今回、倉沢愛子・松村高夫共著『ワクチン開発と戦争犯罪ーーインドネシア破傷風事件の真相』岩波書店、2023年)書評、2022年5月に亡くなった私の政治学の恩師・田口富久治教授の追悼集(私家版『追想・田口富久治』1923年11月)への私の寄稿文「戦後日本政治学史と田口富久治先生」を新たに追加しました。これら新規収録論文を組み込んだ、カリキュラムの再編・再構築も一緒に取り組みたいと考えています。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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