トランプ米大統領の任期はあと1年。もちろんトランプは11月の大統領選挙での再選を目指しているが、少なくとも第2次大戦後、これほど世界に損害を与えた米国の最高指導者はいなかった。トランプを再選させてはならない。決して他人、他国のことではないのだ。現時点では、民主党の候補者が未決定だが、トランプ再選の可能性は45%程度。だから、トランプは、再選に役立つことすべてだけでなく、自分が米大統領の権限を行使しなければできないことを、やり続けてきた。
そのトランプが米軍に命令し、新年早々の3日朝、実行させたのは。イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)の殺害だった。殺害場所は、協力関係にある隣国イラクの首都バグダッドの空港近く。イラク駐留米軍基地から操縦されたドローン(無人機)による攻撃で、おそらく迎えに同行していたイラクのシーア派武装組織の副司令官も殺害された。米大統領の命令による最悪の国際テロ。ソレイマニはイラン国民の信頼と人気が最も高い軍事指導者だった。3日から3日間、国の最高指導者ハメネイ師の呼びかけで首都テヘランをはじめ、全国で追悼集会が開催されたが、その圧倒的な参加者たちの数と怒りの姿は、1978年から79年1月にかけてのイラン革命の際の、全国で2千万人を超える集会とデモに匹敵した。
イラン革命防衛隊は、陸海空三軍とは別組織で、総数は陸軍の3分の1の12万5千人余。1979年に創設され、国境警備、対テロ任務を主としているが、その中の精鋭とされるコッズ部隊は対外工作や情報活動を主任務とし、ソレイマニが最高指揮官を務めた。革命防衛隊は国内の民主化運動への情報収集はじめデモなどの弾圧に出動することもあるが、民主化運動の活動家たちも、トランプの命令によるソレイマニ殺害への巨大な抗議デモには参加している。デモでは米国への報復を求める声が圧倒的だ。
ハメネイ師もラバン国連大使も、米国への報復を公言している。
それに対しトランプは「彼らが米国人や米国の資産に報復をすれば、我々は標的にしているイランの52か所をとても素早く、とても激しく攻撃する」と応酬した。52か所とはイラン革命の際にイランの学生たちがテヘランの米大使館を占拠、館内にいた米国人を人質にした数だ。トランプは、その際の怒りの報復をしようとしているのだ。
11月の米国大統領選でのトランプの再選の可能性は残っているが、世界各国の大多数の人々と政府が、トランプ大統領の敗北を望んでいる、と思う。トランプに最もゴマをすり、トランプの横暴な要求をはねつけることができず、米国製兵器の購入に巨額な国民の税金を浪費する安倍政権。沖縄県民の意思を踏みにじり、米海兵隊基地の辺野古移設に長い年月と巨額の移転・建設費を投入し続ける安倍政権。その安倍首相でさえ、トランプとの親密さ誇示する姿勢が、控えめになってきたのではないか。(続く)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9338:200110〕