トランプ米大統領の命令によって米国は2018年5月、オバマ前政権の尽力で実現したイランと主要6ヵ国(米、ロシア、中国、英国、フランス、ドイツ)との核合意(2015年10月発効)から一方的に脱退し、イランに対する厳しい経済制裁を復活した。核合意の実施を監視する国際原子力機関(IAEA)が、翌16年1月以来、イランが核合意を実行していることを確認してきたにもかかわらずだ。米ドルで支払われてきたイランの石油輸出代金の決済が困難になり、イラン経済が大きな打撃を受けることになった。以後、トランプ政権下の米国はさまざまな軍事的、経済的圧力を加えてきた。そして今年早々、国民の人気が最も高い軍事指導者、ソレイマニ革命防衛隊司令官を殺害した。イランに対する敵意が、なぜこれほど深く、執拗なのか。
その源は、1978-79年のイラン・イスラム革命にさかのぼる、イランから脱出した独裁者パーレビ国王は、強い親米王政で、米国の中東政策の有力な支持基盤だった。故ホメイニ師を最高指導者とする革命政権は、米国の支援で脱出し、保護下に入ったパーレビ国王の送還を米国に求めたがカーター米大統領は拒否。テヘランでは激高した学生たちが米大使館を占拠して館員ら52人を人質にして、パーレビの送還を米国に要求した。米軍の人質解放作戦は失敗。81年にアルジェリアの仲介で事件は解決したが、この事件を忘れずに、イランへの敵意を持ち続けている米国人の中でも、トランプはその筆頭格だ。
トランプの反イランを大歓迎している中東の国の筆頭はイスラエル。イランのイスラム政権は革命で発足以来、パレスチナ解放運動、その中核のパレスチナ解放機構(PLO)を一貫して支持、支援し続けてきたためだ。イスラエルのネタニヤフ政権は、トランプ政権に反イラン行動を求め続けてきた。
石油の宝庫、ペルシャ湾岸地域での反イランの巨頭は、湾岸アラブ諸国の盟主を自認する巨大産油国サウジアラビア王国。イスラム教の発祥の地。毎年聖地メッカ、メディナを世界中のイスラム教徒が礼拝する。
イスラム教徒は大別してスンニ派90%とシーア派10%に分かれる。サウジアラビアも3千4百万人口の9割がスンニ派で、王族の中心サウド家はもちろんスンニ派。一方イランは8千2百万人口の9割以上がシーア派だ。サウジアラビアでは、少数のシーア派への差別、圧迫がある。両国はイスラム国家としての協力以上に、湾岸地域での覇権争いを繰り広げた、現在もイエメンで政権勢力と反政府勢力に分かれて支援、悲惨な内戦が続いている。
トランプは、発足以来サウジアラビアとの関係を重視、2017年5月、就任以来初の外遊先としてサウジアラビアを選んだ。リヤドでのサルマン国王との首脳会談で戦略的パートナーシップ強化を宣言。米国からの巨額の兵器輸出を取り決めた。(続く)
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