トランプは第二次大戦後の世界の平和と協力、発展に米国が担ってきた大きな役割りを次々と一方的に放棄した。イランと主要6ヵ国の核合意脱退、イランへの経済制裁の復活は、トランプが就任早々から強行した国際的取り決め破棄の一部にしか過ぎない。
トランプは17年1月20日の就任直後、環太平洋連携協定(TPP)離脱の大統領令に署名。メキシコ、カナダ両国には北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを要求した。いずれも、関税の引き下げ、自由貿易の拡大を目指した協定で、米国にとっても大きな利益になるはずの多国間協定だったが、トランプは米国にとってより有利な2国間協定に変えようとしたのである。トランプは11月のベトナム訪問の際の演説で、「米国を束縛する多国間の枠組みを拒否する」と宣言、“新たなパートナーシップ”を各国と結びたいと呼びかけた。
結局、TPPは日本を含め11か国が参加、条約名をCPTPPと変えて18年3月に発効した。合計人口5億人の11か国の国内総生産合計は約10兆米ドルで、世界経済の13%となった。
トランプはTPP脱退とともに、メキシコ、カナダ両国にも北米自由貿易協定の見直しを要求した。
▼経済戦争の主敵は中国
だが,就任直後から保護主義的な通商政策を掲げてきたトランプの主敵は、貿易赤字の最大の相手中国。2017年の主な対外赤字額はー
中国 3,750(億ドル)
メキシコ 760
日本 700
ドイツ 640
イタリア 310
▼巨額の追加関税
2018年3月22日 トランプは中国製品に追加関税を課す制裁措置の大統領令に署名。
6月15日 米国、同年中に年500億ドル相当の中国製品に25%の制裁関税を課す制裁措置の大統領令に署名。
6月16日 中国、年500億ドル相当の米国製品に報復関税を課すと発表
7月6日 両国が制裁対象500億ドルのうち340億ドル分を発動
8月23日 両国が残りの160奥ドル分を発動
9月24日 米国、2千億ドル分中国製品に10%の追加関税を、中国は600億ドル分の米国製品に5%か10%の追加関税を発動
トランプ政権は、このように懲罰的な中国製品に対する追加関税を実施、中国も正面から対抗したが、トランプの任期が一年を残すだけになったのをにらんで、両国は水面下の交渉を急ぎ、2020年1月15日、第一段階の合意に達した。
その内容は(1)昨年9月に発動した追加関税「第4弾」(輸入品約1,200億ドル分)を15%から7、5%に半減。それ以前の「第1弾」「第2弾」「第3弾」(計2、500億ドル分)は現行の25%のまま。それでもトランプは、ホワイトハウスに中国の劉鶴副首相を招いて署名式を行い、米中の貿易摩擦が一時休戦になった。(続く)
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〔opinion9380:200124〕