トランプ主義は現代のファシズムか 現代の人民戦線で闘えるか (1)

ひとつの「2025年の展望論」がある(ルネサンス研究所2月定例研究会の報告)。表題の2大論点に分けてコメントしたい。
 「世界システムは大転換の時」、「それを自ら表現しているのがトランプの登場」、「多極ないし無極の時代」への「大転換」、こう現代世界認識を提起している。「深まる格差と分断」、「分断の中での排外主義と強権政治」、こうアメリカ・トランプ政権を特徴づけ、それは「ヨーロッパでも…拡大している」と認識している。
 米国のトランプ主義と欧州の極右をこう結論づけている。「かつてのファシズムが同じように危機の中での没落する中間層や下層労働者を基盤としたことは…周知のことである。現在の権威主義的政権はファシズムではないが同様の基盤と傾向性を持っている。」
否! むしろ積極的に、現代のファシズムと規定したい。これが第1論点である。

(1)トランプ主義と極右の社会的基礎 労働者階級の没落と移民・難民の流入
 米国・西欧・日本、「北」の先発資本主義は、工業化⇒金融化・情報化と進んできて、現在、工業の空洞化で労働者階級が没落している。ケインズ主義は(~1970年代)、増大する労働者階級を資本主義に「包摂」したが(ブルジョア民主主義)、新自由主義は(1980年代~)、「差別・分断」で労働者階級を大分裂させた(経済的には「上下」で政治的には「左右」だが対応も転倒もある)。格差を拡大し貧困を蓄積した。
 そこに「南」から移民と難民が流入している。原因は、「南」、アジア・アフリカ・中南米に対する「北」の帝国主義的支配にある。それは資源の収奪⇒資本輸出と資本主義の移植による搾取と進んできた。これに対して、「南」には、開発独裁の国家資本主義で、内在的な工業化と後発資本主義としての成長・発展を達成し、新植民地主義的支配から脱却する国々がある(アジアが中心)。しかし、国家(官僚制と統合力)が弱体で、脱却できない国々もある(中南米と中東とアフリカに多い)。移民化・難民化は主にそこで起きている。
 こうして、「北」では、労働者階級の相当部分が没落に憤激しブルジョア民主主義に絶望し、とりわけ「南」からの移民・難民に対する民族的人種的な排外主義に動員されている。トランプ主義と極右の基礎には、「北」のこういう社会状況がある。

(2)トランプ主義は現代のファシズム 「北」の先発資本主義の体制的危機の反映
 1920~30年代には、ロシア革命を経て共産党が労働者階級を組織していた。ムッソリーニもヒトラーも、ファシズムは予防反革命であり、主に小ブルジョア階級の没落を動員していた。対して現在は、マルクス・レーニン主義が破綻し、共産主義運動は崩壊している。トランプ主義と極右は労働者階級の没落を動員している。ここが大きく異なる。
 しかし、トランプ主義と極右は現代のファシズムである。トランプ政権は、民族的人種的な排外主義と同時に、「DEI」=「多様性・公平性・包括性」の否定など、民主主義を社会の全ての面で攻撃し、国家の暴力性と独裁性を強める。ナチス・ドイツ的な体制へ突き進む。「北」の先発資本主義の現状は、「寄生的な腐朽しつつある」、「死滅しつつある」(レーニン「帝国主義論」)、そういう資本主義と言える。長いスパンで社会主義革命の「前夜」(同)と言える。それに対する、これも長いスパンの危機感から、早くも予防反革命が登場したと言える。
 権威主義は違うのではないか。開発独裁を言う場合が多い。植民地の民族解放闘争をブルジョア階級が主導し、「上からの革命」で原始蓄積から資本主義を育成する、国家をテコにし国家資本主義を推進する。20世紀のアジアが典型、韓国・台湾やASEANなどである。ソ連や中国・ベトナムなどの官僚制国家資本主義=全体主義(一党独裁)とは双生児である。
 トランプ主義と極右は、「北」の先発資本主義の体制的危機と結びつけ、現代のファシズムと規定する。そうして人民闘争を社会主義革命の展望の中に位置づける。これが重要である。「南」の後発資本主義の開発独裁と一括に権威主義とすれば、そこがあいまいになる。

(3)「北」は「旧世界」で「南」は「新世界」 真に「帝国主義から社会主義への過渡期」
 「2025年の展望論」は、ウエストファリア体制⇒ウイーン体制⇒パクス・ブリタニカ⇒パクス・アメリカーナに続く「大転換」としている。しかし、「起点としての2008年―リーマンショック」では話が小さいのではないか。大転換はもっと広く深いのではないか。
 ロシア革命を起点に「帝国主義から社会主義への過渡期」、マルクス・レーニン主義は、こう考えた(ブンドは「過渡期世界論」でこの国際水準に到達)。しかし、破綻した。ロシア革命も中国革命も、プロレタリア階級のヘゲモニーで社会主義革命へ前進しようとしたが挫折し、ブルジョア革命に終わり資本主義化した。植民地・民族解放闘争も、ブルジョア階級のヘゲモニーの場合はもちろん、プロレタリア階級のヘゲモニーの場合も資本主義化した。
 それが現在の「大転換」の起点となった。決定的なのは中国の変質と資本主義化である(1970年代の文化大革命の破綻と80年代の「改革開放」と1989年の天安門事件)。官僚制国家資本主義と開発独裁の国家資本主義、この「南」の後発資本主義が、「北」の先発資本主義に対して不均等発展し、資本主義が世界化し世界が資本主義化した(グローバリズム)。その上に、先発帝国主義の米国・西欧・日本と後発帝国主義の中国・ロシアによる、覇権護持と覇権奪取の闘争がある(ロシアは「南」ではなく「北」の最後尾だが)。
 17~18世紀に(ブルジョア革命と産業革命)イギリスから始まった資本主義の、3~4世紀にわたる歴史の結果である。「北」は衰退し没落する「旧世界」、「南」は勃興する「新世界」(「グローバル・サウス」)、「南北」逆転、これが現在の大転換の第1である。
 第2に、「北」の先発資本主義の体制的危機があり、予防反革命の現代ファシズムがある。前途遼遠だが必ず現代の社会主義革命も起こる。かってはブルジョア革命からの二段階連続革命・永続革命(トロツキーではなくマルクスの)であったが、今度は直接の社会主義革命である。真に「帝国主義から社会主義への過渡期」になる。それが現在の大転換である。
 こう広く深く構えて、人民闘争と社会主義革命を考えたい。(1)おわり⇒(2)へ続く

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