トランプ大統領、最後の1年(10) イスラエル、聖地エルサレムの「壁」まで、占領地に地下鉄道を延長、駅名を「ドナルド・トランプ」に決める

 イスラエル政府のカッツ運輸相は2月17日、ユダヤ教とイスラム教の聖地エルサレム旧市街の「嘆きの壁」(西壁)まで、エルサレムとテルアビブ間の高速鉄道を地下に延長し、「壁」から数十メートルの場所に地下駅を建設、駅名を「ドナルド・トランプ」と名付けると発表した。
イスラエル紙の報道によると、カッツ運輸相は、「トランプ米大統領がイスラエル建国70周年の2018年5月14日にエルサレムをイスラエルの首都として、初めて公認し、米大使館をテルアビブからエルサレムに移転させた勇気ある歴史的な功績をたたえて、この駅名を命名した」と述べた。
 この高速鉄道は、イスラエルの“玄関口”、テルアビブのベングリオン空港と、イスラエル政府・議会が置かれている西エルサレムを28分で結ぶ現行計画を延長。地下鉄道3キロをイスラエル占領下の東エルサレム旧市街の真下に通し、終点駅を「嘆きの壁」(西壁)に接する広場に建設する計画。カッツ運輸相は、地下鉄での延長計画と駅名をともに公式発表したのだ。 
 いうまでもなく「嘆きの壁」はユダヤ教徒の信仰の象徴。「壁」の上の丘もイスラエル占領地だが、イスラム教徒がサウジアラビアにあるメッカ、メディナとともに、最も大切にする信仰の場所「神殿の丘」だ。教祖ムハンマドが昇天したとされる「岩」を収めたドームとアル・アクサ・モスクがある。エルサレムを訪れるそれぞれの信仰者と一般の観光客は、年間1千万人を超える。
 今回の連載(5)でも触れたが、イスラエルの建国の歴史は、1947年11月、国連総会が採択した、パレスチナ分割決議にさかのぼる。同決議で国連は、英国の委任統治下にあったパレスチナを、ユダヤ人とアラブ人の2国家に分け、エルサレムを国際管理下に置くことを決定した。48年5月、ユダヤ人はイスラエル建国を宣言、それを受け入れないヨルダンはじめアラブ諸国が攻撃を開始して第1次中東戦争となり、西エルサレムをイスラエル、旧市街を含む東エルサレムをヨルダンが占領して支配。その後、67年の第3次中東戦争でイスラエルが、ヨルダン支配下の東エルサレムとヨルダン川西岸地区も占領した。しかし、米国を含め国連を構成する各国は、イスラエルが占領地を領土化することも、エルサレムを首都としても容認せず、大使館もテルアビブに置いたままだった。
 その国際ルールを破り、トランプ政権下の米国は、イスラエル建国70周年の2018年5月14日、エルサレムをイスラエルの首都として正式に承認、テルアビブにあった米国大使館を、エルサレムに移転した。他国は追随せず大使館をテルアビブに置いたままだ。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

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〔opinion9495:200229〕