トランプはこの3年、米国が最も重要な責任を担っているパレスチナ・イスラエル紛争で、イスラエルの利益、パレスチナに打撃を与えるために、その権限を駆使してきた。28日発表のトランプの和平案は、最後の1年に入り、イスラエルびいきが多い最有力選挙票田の福音派を固めるために、いま発表したのだ。なぜこれほど親イスラエルなのか、愛娘の夫がユダヤ教徒であることだけでは説明できない。
トランプがこの3年間、大統領権限で実行した、主な行動を振り返ろう。
トランプ政権は18年1月16日、国連難民救済機関(UNRWA)への拠出金半額超を凍結、8月31日、UNRWA年間予算の3分の1を占める米国の拠出金3億6千万ドルの全額の拠出停止を発表した。この件については、次回に譲る。
トランプ政権は、イスラエル建国70周年の18年5月14日、エルサレムをイスラエルの首都として正式に承認、テルアビブにあった米大使館をエルサレムに移転した。イスラエル建国を決定した1948年の国連パレスチナ分割決議では、エルサレムをどの国の主権下にも属さない国際管理都市と定めている。その直後、アラブ側の攻撃から始まった第1次中東戦争でイスラエルが圧勝、ヨルダン領の東エルサレムを除き、エルサレムを占領。1950年以降、政府も議会もエルサレムに置いて首都とした。しかし世界 各国はそれを承認せず、米国を含め、大使館をテルアビブに置いてきた。
米大使館のエルサレム移転に、東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置付けているパレスチナ自治政府は猛反発、パレスチナ人の激しい抗議デモが広がった。これに対してトランプ政権は同年9月10日、ワシントンのパレスチナ代表部の閉鎖を発表した。
1967年の第3次中東戦争で、イスラエル軍は隣接するシリア領のゴラン高原(約1,800平方キロ)の約7割を占領。残りの3割に国連平和維持軍が駐留している。停戦後、国連安全保障理事会は占領を続けるイ軍の撤退を要求したが、イ軍は駐留を続け、占領地での入植地建設を進めた。そしてトランプ大統領は昨年3月、イスラエルに対しゴラン高原占領地の主権を認めることを正式に発表した。
さらに昨年11月18日、ポンペイオ米国務長官は、イスラエルが第3次戦争で占領したヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地を「国際法に違反しない」と米国が容認する公式発言をした。
ヨルダン川西岸地区は、東エルサレムと同様、ヨルダン領だったが、第3次中東戦争でイスラエル軍が占領した。88年7月、ヨルダンが、将来のパレスチナ人国家の領土と想定して統治権を放棄。11月、パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長が、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区とガザ地区を領土とするパレスチナ国家の樹立を宣言した。
その後、米国の調停工作もあり、94年、アラファトPLO議長とラビン・イスラエル首相がパレスチナ暫定自治宣言に調印。両地区でのパレスチナ暫定自治が拡大し始めた。しかし、2009年2月のイスラエル選挙で右派のネタニヤフが政権を支配して以来、ヨルダン川西岸地区での不法なイスラエル入植地が拡大、パレスチナ自治区とイスラエル、占領地をへだてる壁の建設、東エルサレムの支配強化が進んだ、そして2017年1月、米国でトランプ政権が発足。トランプは政権発足後直ちにイスラエルのネタニヤフ政権への支持・支援の旗印を鮮明にしたのだ。(続く)
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〔opinion9416:200204〕