イスラエルのネタニヤフ政権は、事実上イスラエルの軍事支配下にあるパレスチナ・ヨルダン川西岸地区の領土併合作業を、7月1日以降から開始しようとしている。実際の作業は、領土化宣言、国民投票、入植地の周辺を拡大して防護壁の強化、現在もイスラエル軍の支配下にある主要幹線道路の領土化作業など。これに対し、世界各国で非難、抗議が広がり、24日までに25ヵ国の立法議員1,080人が抗議声明に署名。各国政府、議会に送られたと英BBC放送は伝えている。英国では「影の内閣」の主要閣僚と国会議員240人以上が署名している。
この作業開始は、トランプ米大統領がネタニヤフ政権に提案した、ヨルダン川西岸地区の約30%をイスラエルの領土とし、約70%をパレスチナの領土として残す案が手掛かりになった。ネタニヤフ政権は、パレスチナ全土の領土化を目指していながらも、トランプ提案に好意を表明。一方パレスチナ自治政府と住民は、トランプ政権への非難をさらに強めた。
パレスチナ自治政府領としてイスラエルを除く国際社会が認めている地域は、東エルサレム、ヨルダン川西岸地区、ガザ。総面積は日本の茨木県と同じくらいの6、020平方キロ(うち365平方キロがガザ)。人口は497万6千人(うち西岸地区は298万人)。
国際社会とイスラエル政府、パレスチナ自治政府代表が調印した、もっとも最近の協定は、93年にワシントンで調印されたパレスチナ暫定自治宣言。それに基づきパレスチナ暫定自治が始まったが、イスラエルは東エルサレムの支配と、ヨルダン川西岸地区での、入植地と幹線道路のイ軍による支配をつづけたため、パレスチナ人の抵抗が続いてきた。
イスラエルが暫定自治宣言に調印した労働党政権の期間は、暫定自治は一応尊重されたが、2001年の総選挙で極右政党のリクードが勝利して以来、パレスチナ自治政府と関係が悪化、入植地の建設が拡大。特に09年の総選挙でリクードのネタニヤフ政権が勝利して、現在に至るまで、パレスチナ自治政府との関係は悪化したまま、入植地の強行建設が続いている。
さらに、2017年に発足した米国のトランプ政権は、国連はじめ国際社会の取り決め、意志を踏みにじって、ネタニヤフ政権が大歓迎する行動を開始。イスラエルの建国以来の熱望通り、米大使館をテルアビブからエルサレムに移転。ヨルダン川西岸地区での入植地拡大を黙認、イスラエルが67年の第3次中東戦争で占領したままの、シリア領ゴラン高原のイスラエル領土化を承認した。そして今回、ヨルダン川西岸での不法入植地のイスラエル領土併合を黙認したのだ。
▼日本でも、パレスチナ人民の支援活動に長年取り組んできた、奈良者英佑さんを代表とする人たちが、次のような「イスラエルによるヨルダン川西岸地区の併合に反対する実行委員会声明」(和文と英文)を緊急に発表。集まった署名とともに、イスラエル政府、駐日イスラエル大使館、日本政府の官邸と外務省に、今日30日に送付した。以下にその全文を添付します。
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イスラエルによるヨルダン川西岸地区の併合計画に強く反対する(和文)
イスラエル政府は、西岸地区のうち広大な部分を自国領として併合することを早ければ7月1日にも公式発表する計画だと伝えられる。これは、パレスチナ人にとって当然の自決と独立の権利を真っ向から否定するばかりではなく、国際法と国際秩序を全くないがしろにするものである。この計画が実行されればイスラエル/パレスチナ紛争の平和的解決への道は完全に閉ざされ、中東地域の紛争は一層激化し、それは世界の平和を脅かすだろう。私たちは、この無責任な政策を深く憂慮する。
占領地を併合することは、国連憲章とジュネーヴ議定書に対する重大な侵害である。ジュネーヴ第4議定書は、西岸地区でのイスラエル人入植地建設のような、自国民の移住を禁止している。また、国連安全保障理事会決議242号は、イスラエルが1967年の戦争で占領した領土からの撤退を要求している。さらに、1993年のオスロ合意は、領土、入植地、難民などの重要な諸問題を平和的な交渉で解決すること、諸当事者が、一方的な措置をとらないことを求めている。
アメリカのトランプ政権は今年1月「中東和平案」を発表した。その中で、イスラエルが西岸地区の入植地ブロックとヨルダン渓谷を併合することを提案した。当然ながら、パレスチナ人はこれを断固拒絶した。イスラエルもこの理不尽な提案を断るべきであった。
わたしたちは、ここに、イスラエル政府がこの無責任な西岸地区併合計画を撤回するよう強く求める。
同時に私たちは日本政府に対して以下の3点を要求する。
1.日本・イスラエル間の武器取引禁止と両国間の軍事・安全保障協力の停止
2.日本・イスラエル間の貿易など経済関係に対する厳しい規制
3.西岸地区の入植地やその他のイスラエル占領地で生産された物品の輸入禁止
2020年6月30日
イスラエルによるヨルダン川西岸地区の併合に反対する実行委員会(東京)
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〔opinion9891:200630〕