トランプ政権、最後の1年(24) イスラエルとアラブ2中小国が国交署名・・・

イスラエルとアラブ2中小国が国交署名
       トランプの数少ない“外交成果”を、大騒ぎしたNHKと各紙

 イスラエルとアラブの中小産油国アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンが15日、国交樹立に合意する文書に署名した。署名式は、トランプ米大統領の参加の下、米ホワイトハウスで行われた。仲介したトランプ大統領は「新たな中東の夜明け」と礼賛し、他のアラブ諸国も追随するだろう、と強調したが、隣接するアラブの大国サウジアラビア当局者は、「適切な時期に加わるだろう」と外交辞令発言の一方、「パレスチナ問題の包括的な解決が必要」と従来の立場を崩さなかった。これまでイスラエルと国交があるアラブ連盟加盟22ヵ国中2か国だけ。4回にわたるアラブ・イスラエル戦争の直接交戦国エジプト、ヨルダン2国で、シリアは国交がない。
 就任後、外交では失敗ばかりで、目立った成果が何もないトランプ政権。歴代米政権が、4回の中東戦争の和平調停に大きな役割を果たしてきたこととは異なり、就任直後にサウジアラビアに訪問して大量の武器売り込みに成功した。大統領選挙が近ずく最近では、サウジに隣接するアラブ国家UAEとバーレーンに、イスラエルとの国交を樹立させようと努力を注いできた。
 どちらも、アラビア半島の東端、ペルシャ湾に面した中小国で、UAEは人口977万人、バーレーンは人口164万人。接する巨大産油国、サウジアラビアは人口3126万人、対岸のイランは1億38万人の大国だ。
 国の大小だけのことだけではない。UAEもバーレーンも、イスラエルとアラブ諸国の紛争、パレスチナ問題にかかわったことは全く、あるいはほとんどない。UAEは最近豊富な石油収入を投入して、人工衛星の打ち上げ計画まで持つようになっていて、両国ともトランプ政権が、いわば”抱き込み“にかかっていた。
 トランプは政権発足後、世界2位の産油国で、アラブ諸国に大きな影響力を持つサウジアラビア”の抱き込み“に全力を挙げ、武器の売り込みの増強とパレスチナ問題を中心とするアラブ・イスラエル紛争でのイスラエル支援に力を注いできた。サウジアラビアは巨額の兵器購入には応じたが、アラブ・イスラエル紛争に関しては、”アラブの盟主“と自認する立場を崩さなかった。
トランプ政権は、発足以来、世界各国との関係が悪化、あるいは疎遠になるばかり。アラブ諸国とイスラエル間の4回の戦争調停に大きな役割を果たしてきた、歴代米政権にならってトランプ政権も積極的に乗り出したが、歴代米政権と比べ、あまりに親イスラエルに偏っていた。まずイスラエルを訪問して、パレスチナのイスラエル占領地のひとつヨルダン川西岸地区に入り込んだユダヤ人入植地をイスラエル領土として残すことを約束。東エルサレムのイスラエル占領支配、ガザ地区の封鎖を黙認した。このため、アラブ連盟加盟国は、停戦協定で国交回復が明記された当事国のエジプト、ヨルダン以外はイスラエルと国交を結ばなかった。
こうして結局、イスラエルの支援となるアラブ諸国との国交樹立は、ペルシャ湾岸の2国だけが、トランプ政権の強い要請に応じることになった。これが、アラブ諸国に広がることはあり得ないだろう。

 ▼なぜNHKや朝日が、大騒ぎしたのか。トランプ政権の外交が失敗ばかりなので、成功もあると宣伝に手を貸したいのか。
NHK ニュースもひどかった。まるで、トランプの成功、「中東情勢に大きな影響を与える可能性があります」などと3日続けて朝のトップ・ニュースを含め、流していた。
 朝日新聞にもあきれた。これが朝日かよ!と繰り返し思った。少し抜けるかもしれないが、朝日がどんな報道をしたか、途中から記録しておくー
 9月13日:「バーレーンとも正常化」1面3段。
 9月13日:外信面トップ「パレスチナ 進む孤立化」
 ―「バーレーン、イスラエルと国交正常化」「UAEからの支援期待、追従か」
 9月15日:米、UAEにF35売却検討―イスラエルと和平 見返りか
 9月16日:モサド アラブとの秘密外交 元長官が明かす舞台裏 暗闇の中、ヨットでヨルダン国王の元へ
 9月16日:イスラエル国交調印へ UAE・バーレーンと 
 9月17日:「歴史的和平」パレスチナ抜き
      イスラエル国交署名 反発招く 併合停止・F35売却 認識にズレ

〈了〉

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10132:200923〕