ドイツの反人種差別大コンサートを報じたBBCと報じなかった朝日新聞

主に中東から必死に逃れてきた移民の受け入れをめぐり、国内の対立が深刻化しているドイツや東欧、イタリア。ドイツでは人道・人権主義のメルケル政権と多数の市民が移民たちを寛大に受け入れたのに対して、極右勢力の過激な反移民デモや暴力が続発している。移民問題について人道・人権主義の立場からの報道が根強い現場欧州にくらべ、日本での欧州報道では、反移民の動きが強い懸念をもって報道されてはいるが、多数の市民たちの同情、移民受け入れの努力、人道主義、旧ナチス・極右勢力復活と戦う行動がごく控えめにしか伝えられていないのではないかと思う。
 移民をめぐる対立が深まるドイツ東部ケムニッツでの大規模な反人種差別のコンサートの報道を、英公共放送BBCの電子版は世界に向けて熱く報道したが、朝日新聞は全く報道していない。(他の日本の新聞・テレビをチェックしてはいない)

 BBC電子版は9月3日夜、ドイツ東部のケムニッツで開催された「人種差別に反対する」コンサートに6万5千人が参加したと、トップ・ニュースで次のように世界に伝えたー
“”ドイツ東部のケムニッツで開催された「人種差別に反対するコンサート」におよそ6万5千人が参加しました。
同市では先月、35歳のドイツ人男性が刺されて重傷を負い、二人の移民が容疑者とされて以来、極右勢力の集会とデモが行われてきました。
パンクとヒップホップのバンドは、3日夜、“私たち以上に多数の人がいる”のスローガンを掲げてコンサートを開きました。それは、極右が掲げたスローガン“我々が国民だ”に対する
答えでした。
多くの人々が「ナチス・アウト(ナチスは出ていけ)」と叫びました。
3日午前には、アフガニスタン人とみられる移民が裁判で、ドイツ人の元ガールフレンドを殺害したとして8年以上の刑を宣告されました。
この事件は全国的な怒りを引き起こし、極右グループは反移民キャンペーンに利用しました。
3日夜のコンサートは、刺殺された犠牲者への1分間の黙とうで始まりました。それが終わると楽団クラフトクラブの歌手が挨拶し、「私たちはナイーヴではありません。」「コンサートを開いたので、世界が救われると幻想を持っているわけではありません。」「でも、ときには、わたしたちは一人ではないと示すことが大切です。」と語りました。
コンサートが開かれているとき、地元警察は1日行われた極右グループのデモの際、ジャーナリストを攻撃した容疑者の男を逮捕しました““

 朝日新聞は、5日朝刊でケムニッツの極右勢力のデモ写真付きの記事「ドイツ反移民デモ続発 受け入れ3年 高まる不満」を国際面左肩3段で掲載した。しかし、6万5千人の市民が参加した人種差別反対のコンサートについては、翌日も翌々日も全く触れなかった。この朝日の報道は一例だが、日本のメディアが、ドイツはじめ欧州諸国での主に右翼勢力の反移民行動の広がりを、深い懸念をもって報道していることはよくわかる。しかしそれ以上に、移民たちに対する市民たちの温かい思いやりと支援行動、反移民感情を利用するナチス、極右勢力の復活、拡大に強い危機感を持ち、対抗する多数の市民たちの行動を、ここに紹介したBBCのように積極的に報道してほしい。

▼写真(1)

ドイツ東部ケムニッツで3日、開かれた「人種差別に反対する」コンサートには6万5千人の市民が参加した。日本時間4日に英公共放送BBCの報道した会場の写真。

  ▼写真(2)

9月5日の朝日新聞国際面が報道した、「極右勢力の反移民デモ続発」8月27日の写真
  (備考:当記事をお読みになる場合、当画像をマウスの左クリックして頂くと、当画像のみの画面が出ます。)

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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