オルバン首相は16日(先週金曜日)、3回目の接種を8月1日から始めることをラジオのインタビューで発表しました。これまで政府は一貫して3回目の接種に消極的な姿勢を示していましたが、ブダペスト市とセンメルワイス大学の検査結果を踏まえ、第4波を阻止するためには3回目の接種が必要と判断したようです。
しかし、オルバン首相は誰が対象になるかは明確にせず、希望者・年齢を問わず、3回目の接種を受けられるようにするという曖昧な表現に留めています。「シノファーム製の効果が低いために、3度目の接種、しかも別の種類のワクチン接種が必要」とは言わず、どのワクチンを接種するかは医師が決定するというきわめて不可解な表明を行い、他方で「3回目の接種を決定するのは世界で最初のことだ」と胸を張っています。あくまで中国製の効能が低いことを認めたくないという態度が明々白々です。
他方、カラチョニィ・ブダペスト市長は「実際の価格と販売収益の関係がきわめて不透明なシノファーム製ワクチンは、現在300万回分が在庫として積み上げられている。これは300億フォリント(およそ1億円強)になり、これを中国に買い取ってもらい、その返金を医療関係者の予算に回すべきだ」と主張しています。
アカデミー会員で免疫学者のサルカディ氏は、「450名の検査結果の統計的推測によれば、とくに70歳以上の高齢者のシノファーム・ワクチンの効果は50%程度である」と述べている。また、グヤーシュ官房長官が記者会見で、「抗体が生成されていないから免疫がないというわけではない。抗体検査結果をベースに中国製ワクチンを批判するのは政治的言動」と述べたことにたいし、免疫学者のファルシュ氏は、「抗体が生成されていないのに、免疫細胞であるT細胞が存在することはない。きわめて無知は発言だ」と明確に批判しています。
ということで、ハンガリー政府は3回目の接種の開始を予告しました。素早く判断を下すオルバン首相の政治的感覚は素晴らしいですが、他方でその理由を明確にすることなく、「3回目の接種を決断するのは世界で最初の英断だ」と自画自賛しています。これもこれまでのFidesz(「フィデス」キリスト教民主国民党)政権の対応に特徴的な政治行動です。自らの間違いを認めることなく、逆に手柄にするという政治的芸当です。なかなかしたたかな政治家です。日本の誰かさんが見習ったら良い事例です。
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