1. 感染状況
4月1日の政府発表によれば、過去24時間の新規感染者数は9,288名で、死者は258名(累計死者は20,995名)、病院での治療者は12,062名、うち人工呼吸器装着患者は1,512名となっている。感染者、死者、重症者の数の増加傾向が止まっていない。ハンガリーの人工呼吸器総数は2,300台前後と言われており、重症者の増加を止めることが緊急の課題になっている。
2. 新規感染者の構成
これまで感染した人はおよそ66万人で、回復者(死者)を除く現在の実効感染者は23万人になっている。
新規感染者の年齢構成は以下の通り。
(1) 新規感染者の平均年齢は、45.7歳。
(2) 30-39歳が15%
(3) 40-49歳が23%
(4) 50-59歳が17%
3. 学校再開の条件
最近の特徴は英国変異株による感染がほとんどで、若い年齢層の感染者が増えている。若い感染者から家族構成への感染が多く見られる。学校や大学が休校となる中、若い人々は個別に集まり、感染を増やしていると考えられる。政府は4月19日の学校再開を目指しており、その後に店舗の再開を予定している。
学校再開のために、4月1日から教職員への特別接種を開始した。
4. ワクチン接種の現状
これまで1回目のワクチン接種を終えた人は200万人を超え、うち80万人弱が2回目の接種を終えている。接種率は20%とEU内では最も高くなっている。ハンガリーではEUの薬事局が許可したワクチンだけでなく、Sputnikと中国製ワクチンが接種されている。ただし、中国製ワクチンの評判(イメージ)は良くないので、希望すればいつでも地区の診療所で中国製ワクチンを受けられる状況になっている。
4月19日の学校再開に向けて、4月1日より学校・幼稚園・保育園の教職員への特別接種が開始された。これまで50名の学校教職員が死亡したと公表されており、教職員へのワクチン接種によって児童・生徒・学生を介した感染を防ぐために、Pfizer製のワクチンが接種される。今週一杯で教職員の接種が終わる予定。この接種も希望者のみへの接種になるが、全教職員の4分の3が接種を希望している。接種を希望しない教職員は構内への立ち入りが禁止になる可能性があるが、実際にどうするのか、現在まで政府の方針は決められていない。ワクチンへの疑念がある人だけでなく、リモート授業の方が楽だという教員が、接種を受けないというケースも見受けられる(別荘地からリモート授業している教員のケース)。
先週末には、緊急措置として、妊娠中期以降の妊婦への接種(希望者)が行われた。Pfizer製とモデルナ製のワクチンが使用された。2回目のワクチン接種は出産後、6週間を経過した後となる。
ワクチン接種は接種希望者で、政府のHPでの登録を終えた人々だけが対象になる。希望者で接種を受けていない人の数はおよそ100万人で、4月中には希望者全員の接種が終わると考えられる。
ちなみに、筆者はやや遅れて、2月中旬に接種登録を行った。3月中旬になってSputnik接種ができるという連絡(メールおよびSMS)を受けたがこれを断った。かなり後回しにされるかと思ったが、10日ほどして、地区の診療所医師からPfizerの接種が予定されていると連絡があり、その後、メールと電話で接種場所と時間の指定を受けた。
ハンガリーでは健康保険証番号を通して、すべてのデータ追跡が行われている。既往症も病院の診断歴もすべて、医師が保険証番号にアクセスすれば開示される。保険掛け金の滞りがあれば、診療や薬剤の提供が自動的に停止されるようになっている(コロナの接種だけは被保険資格を失っても可能)。また、薬剤の購入は保険証番号を薬局で示すだけで可能になる。医師はクラウドに処方箋をアップロードするだけである。病院現場での患者サーヴィスは良くないが、データの電子化とそれを使ったサーヴィスはかなり進んでいる。
筆者の接種場所は、センメルワイス医科大学心臓病病院(ブダペスト12区)で、接種指定時間付近には常に10-15名ほどの行列ができていたが、医科大学生などの学生が次々と人々を案内し、10分程度の待ち時間で接種を受けた。当日は妊婦への臨時接種が開始されたこともあって、若い女性が多数接種を待っていた。接種後にはとくに指示はなく、すぐに帰途についた。
1回目の接種を受けた人々に順次プラスティック製の接種証明カードが送られているが、ワクチンのタイプは記されていない。とりあえず、ハンガリー政府が発行するものだが、EU基準が導入されれば、新たなカードの発行が必要となろう。
5. 周辺国の状況
先週末、セルビアは予約なしで、無料で接種が受けられることを宣言した。しかも、外国人も受けられるというので、周辺諸国からの外国人がセルビアの接種ポイントに行列する光景がテレビで放映された。Pfizer製のワクチンが接種されていた。
チェコ政府はロシア製のワクチン導入を検討しているが、いまのところ、EU薬事局の許可のないワクチン接種を行わないと宣言している。
スロヴァキア政府はSputnikを輸入したが、閣内不一致で首相が辞任することになり、事態は混迷している。スロヴァキアでは昨年、2度にわたって、国民の半数を動員した大規模なPCR検査と抗体検査が行われ高く評価されたが、感染拡大が止まらず、いったいあの検査は何だったのかという問題が発生している。治療薬がない状況で、検査を行うだけでは何の解決にもならないことが明確になった。
オーストリア首相はEUのワクチン輸入が遅れていることを批判しており、Sputnik輸入の検討を始めた。
以上のように、欧州では感染拡大が止まらず、経済活動の停止による損失が大きいので、ワクチン接種の拡大によって、経済活動再開を速めるという方向が追求されている。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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