パロディ タケシの独談:日本のスポーツ界は零細企業だっての

 それにしても何だね、次から次に日本のスポーツ界の不祥事が暴露されるよな。オイラが見るところ、これらの事件には共通している問題があるね。偉そうに聞こえるかもしれないけどさ、問題の核心は「組織マネージメントの致命的な欠陥」だっての。
芸人には付き人がいりゃ十分だから、マネージメントなんてスケジュールを決めるぐらいなもんさ。零細企業もそうだよな。小難しい「経営マネージメント」なんか振り回す必要なんてないね。「オヤジの一存」で何でも決めることができるからさ、「経営」なんて大げさだよな。零細企業なんて、自分で全部背負うしか方法がないわけでさ。
 プロアマ問わず、ほとんどのスポーツ組織も芸人のマネージメントと大差ない零細組織だね。国内だけの組織なら、内輪の話で済むからね。ボスや親分がいてさ、鶴の一声で何でも決まる組織は多いよ。ところがさ、一昔前と違って、日本のプロスポーツ組織は国際化も進んでさ、興業規模が大きくなっているのに、組織運営は零細企業のまんまなんでさ。国際的企業になっても、経営組織は大企業に成りきれなくてさ、零細企業のまんまか、中小企業止まりなんでね、国際化された組織をマネージする人材や仕組みがないんだよな。この矛盾が「組織マネージメント問題」だっての。こう考えると、スポーツ組織のすべての不祥事問題がよく見えてくるね。

 その一番の例が大相撲の組織でさ、これなんか典型的な零細企業だね。大相撲の組織経営はお相撲さんたちがやっているわけでさ。まあ、長年積み重ねた興業ノウハウがあるし、それほど頭を使うこともないから、外部から経営者を迎える必要もないかもしれないけどね、ほとんどのお相撲さんはちゃんと学校教育を受けてないんでね。大学出の相撲取りと言ったって、別に経営学を勉強するために大学に入ったわけじゃないしさ。もちろん、学校出ていなくても賢い人はたくさんいるし、大学出でも馬鹿な人もたくさんいるから、教育を絶対視するわけじゃないけどね。中学出や高校出のお相撲さんに、大相撲の組織改革や経営刷新なんて、所詮無理だってんの。まあ、大相撲が近代的な組織にならなくても、歌舞伎のようなスポーツ芸術の世界と割り切って、その世界に生きる人たちの自由に任せておいて、社会的問題があるわけでもないけどね。
 だからと言って、弟子を奴隷みたいに扱って、暴力まがいの「しごき」で弟子を死なせたら終わりだね。いくらその世界に固有のしきたりがあるたって、人様を死なせるような稽古や「仕置き」があっちゃ駄目だね。軍隊の「いじめ」と変わらないからね。だから組織改革も必要になるんだけど、相撲界の中からはそういう発想は出てこないね。今のままだと、百年経っても、「相撲部屋制を廃止し、親方の地位も廃止し、近代的な相撲組織を作り上げる」なんて、絶対無理なんでね。でもさぁ、もうちょっと時代に合わせて、せめて零細企業から中小企業レベル程度へ組織が変わるように、相撲界の外から組織と経営刷新のプロを迎えないとね。もっともさ、外の人を据えりゃ、それで済む話でもないけどね。だってさ、日本のプロ野球の零細経営組織にさ、人ひとり入れてもまったく役に立たないもんな。

 プロ野球組織も、社会への影響に比べて、球界全体のマネージメント能力はゼロに近いね。オーナー会議が全権を握っているわけでさ。知名度は全国的だけど、オーナー会議の実体なんて零細企業そのものだってんの。自分の球団の人気や利益だけしか考えていないようなオーナーたちが、無い知恵を絞って、「ああでもないこうでもない」って言ってるだけでさ。実際には、「大鵬・卵焼き」の人気のある金持ち球団の事実上のオーナーが実権を握っている組織だね。零細企業のオジサン達の集まりだけじゃ体裁が悪いから、アメリカに習って、野球組織を統括する経営体を作ろうとしたんだけどさ、コミッショナーなんて飾りを置くだけじゃ、マネージメントにならないさ。プロ野球全体の発展や利益を考えてくれるマネージメント能力を発揮してくれるコミッショナーなんて、最初から要らないわけさ。だから、肩書だけは立派で、オーナー会議の意思を忠実に実行してくれるだけのコミッショナーが選ばれてきたってこと。それも「大鵬・卵焼き」の実力者の意見をよく聞いてくれる人をね。
週1で月額200万円、交際費が年額1000万円なんて、信じられないね。週1でいいなら、オイラだって時間を割けるってんの。野球の知識で加藤さんに負けるはずないし、加藤さんよりは野球界にましな貢献ができると思うがね。それに、大リーグの真似をしてまで、公式球に「たけし」なんてサインする悪趣味なんかないしさ。

 芸人には「恥」なんてないけどね、アメリカ大使を異例の6年もやったエリート外交官なら、「恥の精神」があると考えるのは買いかぶり過ぎかね。いくら「ごっつぁん仕事」でも、WBC参加という重大な経営問題にまったく主導権を発揮できないってのは、理解不能だってんの。だってアメリカ人脈があるというのが、売り文句だったんじゃないの。組織経営能力がなくても、大リーグの経営者と英語で飯を食えるから大丈夫と思ったのかね。交渉する中身がなければ、語学力も人脈も宝の持ち腐れだね。これじゃ日本の対米外交と変わんないね。そして今度は、自分が提唱して始めたという中途半端な「統一球」問題さ。費やした労力に比して不釣り合いな報酬をもらってんだからさ、少しは自分の不始末を反省しないのかね。これでコミッショナーが勤まるなら、ヴォランティアならもっとましな仕事をすると思うがね。まぁ、「恥の精神」をもっているほどの高潔な人なら、ナベツネさんに頭を下げてまでコミッショナーの役を受けるはずはないけどね。

 それにしても、WBC参加問題ほど、日本プロ野球経営の後進性を見せつけられた問題はないね。日本政府の対米基地交渉と好い勝負だよ。大リーグ側は特別会社(WBCI)を作って経営のプロが工程表を固めているのに、日本側は選手会の不参加決議に押されて、おっとり刀で、対外関係担当オーナーが手ぶらでアメリカにでかけ、1日だけの面談で「好い返事はもらえませんでした」って戻って来るんだもんな。信じられないね。子供の使いじゃあるまいし。「考えれば考えるほど、WBCIの言っていることが正しいことが分かりました」なんてね。しかも、大した協議もしてないのに、協議内容を秘密にしてさ。あまりの無内容に恥ずかしくて言えなかったんじゃないのかね。それとも、「いずれ選手会は折れますから、心配要りません。任せてください」なんてさ、選手会を裏切るような耳打ちをしてきたんじゃないだろうね。選手会の反対決議から1年経っても、事態の進展はゼロという醜態だったんだからさ、オイラの見立てがまったくの予断とも言えないさ。こんな体たらくじゃ、大リーグに足許を見られるのは当然だね。どうしてこんなに無能な経営者がオーナーになってんのかね。本家本元の会社経営からはじき出された無能な役員が、球団オーナーに横滑りしてるんじゃないかって、疑いたくなるんでさ。まだ日本じゃ球団経営は無能な経営者の道楽の域を出ていないのかね。そう考えりゃ、すべてのことが納得できるけどね。この程度の零細企業のオヤジさん集団や「ごっつあん」コミッショナーを、ナベツネさんが操るのはお茶の子さいさいよ。
 だから、外から人を迎え入れるだけでは駄目ってこと。既成組織に巣くっている人たちは、外から来る人間を組織に取り込んでさ、骨抜きにして自分たちの利益が通るようにしたいと思っているからね。権限や組織が与えられ、それを実行できる有能な人を入れない限り、本当の組織刷新ができないんでさ。

 今の日本に、加藤さんみたいな「ごっつあん仕事」をしている人はどれほどいるんだろうね。かなりいると思うがね。この種の無駄金が世の中にいっぱい流れてるんだろうな。こんなあぶく銭も、アベノミックス相場を動かしてるんでさ。人様の財布の中身を見たいわけじゃないんだけどさ、気になるね。それ相応の退職金をもらってさ、コミッショナー報酬に、某社の社外取締役だよ。70過ぎて、どうしてこんなに金が要るんだろうね。まぁ、オイラにこんなあぶく銭が入れば、こっそりマンションを買って、誰かを住まわせてさ。でも、そうなると、ますますあぶく銭が必要になるね。月々のお手当ても必要だからね。昔から、「飲む、打つ、買う」って言うけどさ、「飲む」には限度があっても、「打つ」と「買う」には切りがないからね。株も女も同じでさ、いったん手を出すと、いくら金があっても足りないってわけ。人の欲に限りがないってことさ。
 芸人なんて、人気がなくなりゃ終わりだからね。「天下り先」なんてないさ。売り込むわけじゃないけど、オイラが日本プロ野球コミッショナーになったら、プロ野球は面白くなると思うね。オイラなら、加藤さんと同じ待遇でなくても引き受けるね。英語ができない分を差し引いてもらっても構わないけどね。オイラだって立場を弁えるくらいのことは分かっているからさ、交際費で「ふーぞく」なんて思ってもいないから、心配無用だね。

 もう一つ、醜態を見せているのは柔道界だよ。内柴問題なんて論外だけどさ、それも含めて柔道界は相撲界とプロ野球を足して二で割ったような組織だね。派閥や人脈を支えるために公的補助金を架空支出してさ。加藤さんの報酬に比べれば、月々10万円なんかたいした金じゃないと思うかも知れないけど、何にもしなくてもらえるんなら、「せめて口利きしてくれた先輩や同僚にお礼だけは」ってことになるさ。こうやって、親分子分の関係を再生産してさ、自分たちの人脈を支えて、柔道界を取り仕切ろうってのが、これまでの体制なんでさ。明大閥とか東海大閥なんて言っている限り、この組織に未来はないね。こんな組織でいる限り、世界の柔道界を引っ張ることなんてできるはずないさ。アンシャンレジームだね。選手を責める前に、組織と人心の刷新を図ることだよ。まぁ、手にした権力を手放したくない気持ちは分かるけどね、そういう人たちが退場しないと、日本の柔道界は国際化の流れからますます遅れていくってこと。

 相撲と違って、柔道はオリンピック種目にもなって、国際化しているからね。もう日本意思だけで決められることなど、一つもないさ。前近代的組織の代表がのこのこ国際柔道連盟の会議に行ったってさ、相手にされないね。言葉ができない問題じゃないってんの。話が通じないってんの。外国語ができなくたって、通訳を連れて行けば好いんだから。問題は中身。中身が空っぽな連中が国際会議に行っても、日本のプレゼントを配ってさ、「よろしく」なんて言うのが関の山だね。封建的人間関係と国際化・近代化の狭間で藻掻いている組織が今の日本柔道連盟さ。外から有能な人材を注入しないと、この組織は持たないね。知的能力の高い選手や理事もいるけど、まだまだ少数派だよ。改革を叫んでいる柔道家を積極的に登用してさ、それとセットで外部の有能な組織経営者を迎えることだね。日本の柔道連盟が零細企業組織で留まって好いわけないさ。世界に門戸を開いたときから、封建的な零細組織で世界を主導できないことは分かっていたはずなんでね。まぁ、それが分かるほど、知力がなかったということなんでさ。とにかく、組織「革命」ができなければ、世界からますます取り残されるだけだね。ジャン、ジャン!

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1349:130627〕